ビッケブランカにとっての「至福なオフ」ーーオフに聴く音楽と、ファッション&休みの過ごし方

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矢島由佳子

ミュージシャンの「オン」と「オフ」を覗く、連載『至福なオフ』。「オン」のモードで作り上げた作品についてはもちろん、休みの日に聴いている音楽や私服のこだわりなど、「オフ」のことも伺います。今月のゲストは、ビッケブランカさんです。新垣結衣×松田龍平主演ドラマ『獣になれない私たち』の挿入歌「まっしろ」が、ドラマ放送終了後の現在もロングヒット中。ネット上でも話題になっている、楽曲の「謎」の部分についても、ご本人に直接聞いてみました。



オフの日、なにしてる?

ビッケブランカさんは、休みの日をどのように過ごしていますか?

ビッケ:しっかり休息をとりたいので、いかに体の筋肉の力を入れずに過ごすかを考えますね(笑)。基本、家にずっといます。最近ソファーを買ったんですよ。革だと高すぎるし、寝転がったときの頬っぺたの感覚がよくないし、でも合皮だとちょっと安っぽい感じになるなと思っていたら、そのあいだがあることを知って。革の触り心地なんですけど、革ほどごわごわしてなくて、でも合皮ほど安っぽくないっていう、革製と合皮のいいとこ取りをしたソファーがめちゃめちゃ気持ちいいんです。そこでずっと横になって、Amazonで買い物したり、オンラインゲームをしたりしていますね。

ゲームは、最近は「フォートナイト」をやっています。1人でやるのではなく、僕のバックバンドのメンバーとかと4人組を組んで世界と戦うわけですよ。みんなとしゃべりながらゲームをしているので、人とコミュニケーションしつつ、ゆったりもできる、という感じがいいですね。


もし、「明日丸一日なにもしなくていいです。お金も自由に使っていいです。ビッケさんにとっての一番贅沢な過ごし方をしてください」って言われたら、なにしますか?

ビッケ:ほしいものをAmazonで全部買う!(即答) どれだけお金も時間もあっても、なかなか外出しようという気持ちになれないんですよね。

どういうファッションが好き?

ビッケさんというと帽子のイメージがありますが、オフのときもかぶってますか?

ビッケ:かぶります。「帽子と靴でふたをする」みたいな感覚があるんですよ。靴を履かずに外出しないじゃないですか? 靴が下を守ってくれるように、帽子が上を守ってくれて、かぶることで落ち着く感じがあるんです。帽子は家に15個くらいありますね。かぶらなくなったらすぐ捨てちゃう。これは「Enka」のキャップです。


帽子を常にかぶるようになったのは、いつ頃からですか?

ビッケ:中学生の頃からですね。RIP SLYMEが好きだったんですけど、PESさんが、頭にピタッとなるニット帽をかぶってたんですよ。それを見て自分もそういうのをかぶってました。当時、周りはPIKOとかのキャップをかぶっていて、誰もそんなものはかぶってなかったんですけど。みんなと同じは嫌だっていう感覚があったのかもしれないです。

帽子以外で、今日の服装のポイントはいかがですか?

ビッケ:靴はNew Balanceです。ずっとCONVERSEのハイカットだったんですよ。でも偶然New Balanceを履いてみたら、見た目もいいし、歩きやすいし、これは靴として格が高いなと。それからNew Balanceばっかり買ってます。正直、服はあんまり買わないんですけど、帽子と靴は買いますね。

今日のコートは、オニツカタイガー。最近また迷彩が好きで。これは札幌のアウトレットでライブをしたときに、本番前のギリギリまで買い物していて、そのときに買いました。なかに着ている服は、ファンの方にいただいたんですよ。


ビッケさんは、ステージ上の衣装もいつもこだわっていますよね。Tシャツとジーパンで出てくるロックスターもいるけれど、ビッケさんは、マイケル・ジャクソンのように「服もショーの一部」という考えが強いのでしょうか?

ビッケ:そうですね。着飾って出るべきである、それしか選択肢がないくらいに思っています。服は演出の一環で、ステージ上の飾り付けと同じだし、しかも服は一番動くものだからより目につく。なので服は、はっきりと世界観を持たなきゃいけないと思っていますね。

1月から始まるツアーはどんな衣装になりそうですか?

ビッケ:前々回のツアーは海賊という設定で燕尾服のセーラーみたいなものを着て、前回のツアーは航空整備士になって真っピンクのつなぎを着たんですけど、今回はノルウェーの少数民族(サーミ人)という設定ですね。『wizard』が「冬」のアルバムだったので、「寒いけど、ここだけは温かい」というライブ演出を作りたくて、そういったアイデアが生まれました。衣装の背中には蜘蛛の巣が刺繍してあって、左下には蜘蛛がいるという、そういう遊び心も入ってます。あれは相当かわいいです!

オフの日に聴きたい10曲

KKBOXのプレイリストを作るにあたって、「オフの日に聴きたい曲」をテーマに10曲選んでいただきました。マイケル・ジャクソンのアルバム『Bad』から、1曲目「Bad」を除いた10曲ですね。


The Way You Make Me Feel

Speed Demon

Liberian Girl

Just Good Friends

Another Part Of Me

Man In The Mirror

I Just Can't Stop Loving You

Dirty Diana

Smooth Criminal

Leave Me Alone


ビッケ:オフのときに音楽をほぼ聴かないんですよ。でも聴くとしたら、いろんなものを聴くよりも、1人のアーティストに信頼をおいて、任せられるような流れで聴きたいなと思って、これを提案してみました。

なぜ『Bad』を? このアルバムは、ビッケさんが生まれた1987年にリリースされたものですよね。

ビッケ:そう、僕と同い歳です。このアルバムの最後の曲「Leave Me Alone」が、マイケルのなかで一番好きで。母親の影響で小学校1、2年生の頃にこのアルバムを初めて聴いたんですけど、僕が初めて好きになったアルバムですね。この頃が、マイケルの一番いい時期だと俺は思っているんですよ。

どういう意味で「いい時期」だと捉えていらっしゃいますか?

ビッケ:もともとはファンク、ブルース、ソウルとかがこてこてで、サックスが鳴ってグルーヴが強いような、「黒いマイケル時代」があるわけですよね。そこから徐々に色が抜けていって、「カフェオレ」くらいになってるときがこの時代なんですよ。グルーヴもありつつ、いろんな音を多様に使いだして、枠を抜け始める時期。このあと「真っ白い時代」になったら、今度は打ち込みの音楽にどんどん走っていって、「パパラッチに追われるのが嫌だ」みたいな歌しかなくなっちゃう。この時期が一番色とりどりなことをやっていて、一番いいなと思うんですよね。

このプレイリストに「Bad」を省いたのはなぜですか?

ビッケ:休みの日に「Bad」はちょっと強いかな、休息感がないかなって。イントロからパンチが強すぎる(笑)。筋肉の力が入っちゃいます(笑)。


「まっしろ」について

ドラマ『獣になれない私たち』の挿入歌「まっしろ」は、今までビッケさんのことを知らなかった人たちにもたくさん届いた楽曲となったのではないかと思いますが、ご自身の感覚としてはいかがですか?

ビッケ:年末、各地でロックフェスに出てきたんですけど、たくさんの人が集まってくれたし、「まっしろ」をやる前に「ドラマの曲を」と言ったらすごく沸いてくれて。この曲を知ったうえで、聴きたいとまで思ってくれているんだなとわかって、すごく嬉しかったです。変化は大きく感じました。

出典元:YouTube(avex)

ドラマでは、「挿入歌」なのに冒頭で流れることがあったり、かなり異例の使われ方をしていましたよね。

ビッケ:そうなんですよ、「挿入歌」なのに「挿入」されてないんです(笑)。この曲は、ドラマの監督としっかりコミュニケーションをとって書き下ろしさせてもらったんですよね。せっかく作るなら、自分のアーティスト性が滲み出ることよりも、「ドラマと一個になるんだ」くらいの気持ちで、作品との親和性を一番高めるべきだと思って。「自分のメッセージなんて別に入れなくてもいい」くらいに振り切って考えていて、それがいいふうに転がったなと思います。そうやって作っても滲み出るものが、本物の「自分らしさ」だと思いますしね。

Aメロ→サビ、という構成の発想はどこから?

ビッケ:ああ〜、僕の曲ってBメロがないことはよくあって。すぐにサビを聴きたいんですよね、僕自身が。聴いていて一瞬も退屈したくない。イントロや間奏が異常に長かったりすると、もうその曲を好きになれないんですよ。だから自分の曲はなるべく無駄な部分を削いで、どこを切り取ってもなにかがあるように作りたいんです。間奏になって歌が抜けても、たとえばサックスが主役として入ってきたり、ちゃんと常に聴きどころがあるようにしていて。それのひとつの方法が、サビまでスーンと勢いよくいききってしまうという作り方ですね。

2サビと最後のサビの終わり、<はしっていこう>という歌詞のあとって、なんて歌われていますか? YouTubeのコメント欄とかでも、リスナーたちが「なんて言ってるか?」と議論していますよね。

ビッケ:なんて言ってるんですかね、あれは?(笑) まあ、これは全部ですね。「GO」もそうだし、獣になって「ガウ」って言ってるのもあるし。どれでもあるし、答えはないです、本当に。初めからそういうつもりで書いていました。でも「GO」と「ガウ」か、どっちかかなと思っていたら、「GIRL」と聴く人が出てきたりして、面白いですね。

話を聞いていても、楽曲を聴いても、やはりビッケさんは「楽曲至上主義」な方なんだなと思います。万人に届くいい歌を作ろう、音楽家として面白くて新しい音楽を作ろう、という気持ちだけを貫いていて、そこに自分のメッセージとかアイデンティティーは色濃く出なくていい、っていう。

ビッケ:まさにその通りです。そのまま、ずーっとその気持ちでいれたらいいなと思いますね。

「ビッケブランカ」として表に出るときは、別人を演じてる感覚もありますか?

ビッケ:すごくあります。切り替わる感じはありますね。「ビッケブランカ」という冠をかぶったところで、別に世界観やキャラを作ってるわけではないんですけど、なんていうんですかね……「山池純矢」という曲を作る自分と、「ビッケブランカ」という音楽を披露する立場の存在がいて、責任を分け合ってる感じがあるんです。だからビッケブランカが、気負いのない状態で出ていけるというか。もともとは自分の本名で活動していたんですけど、名前を2つに分けたことで楽になった感じもあるし、いい意味でなにも考えず、自然体でいられるようになりました。

パーソナリティーが変わる感覚もありますか? 普段の自分はあまのじゃくだったり斜に構えたりしてしまっても、「ビッケブランカ」としては素直に感情表現ができたりナルシストになれたり、とか。

ビッケ:そのへんは、日々変わっていくんだと思いますね。もともとは、「山池純矢」として作ったときは毒々しくても、「ビッケブランカ」として人に伝えるときには綺麗に洗浄した状態にする、という意識があったんですけど、今はもうなくなってきた気がする。うん、今こうやって話していて気づきました。

もう、ほぼ一緒になりつつありますね。どっちがどっちに影響したのかはわからないですけど……作るものが洗われた状態で出てくるようになったのか、それとも、毒を持ったまま披露するというスタイルになったのか。今は、僕にとっての「カフェオレ」タイムなのかもしれないですね(笑)。この先は何色になるんですかね? これからも変わっていくんだと思います。



(写真/にしゆきみ)


ビッケブランカプロフィール

幼少期、読めない楽譜を横目に、妹のピアノに触れてみる。両親の影響で、日本のフォークと洋楽にも慣れ親しみ、小学校高学年で作曲を開始。中高時代は、黙々と楽曲づくりに励み、音楽活動を目標に大学進学のため上京。バンド活動でギター&ヴォーカルを経験した後、突如思い立ってピアノに転向。携帯電話を捨て、1年間ピアノに没頭した結果、持ち前の集中力と天性の才能で、楽曲制作能力が爆発的に開花し、ソロ活動をスタート。美麗なファルセットヴォイスと抜群のコーラスワークを、独創性に富んだ楽曲に昇華させ、ジャンルレスにPOPとROCKを自在に行き来する、新しいタイプのシンガーソングライター。人柄がにじみ出る、楽しく激しく盛り上がるライブパフォーマンスも注目度が高い。
https://vickeblanka.com/

矢島由佳子

編集者・ライター。主に音楽・エンタメ関係に携わる。大学卒業後、大手芸能事務所にてアーティストマネージャーを務める。現在、カルチャーサイト「CINRA.NET」編集部に所属しながら、フリーランスとしても活動中。 https://twitter.com/yukako210

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