アーティストたちが100年後に残したい音楽 総集編〜897Selectors#120~

アーティストたちが100年後に残したい音楽 総集編〜897Selectors#120~
KKBOX編集室
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アーティストたちが影響を受けてきた音楽や、100年後も誰かの心に残っていて欲しい曲をテーマにしたFMプログラム「KKBOX presents 897Selectors」。2016年1月に放送をスタートして以来、たくさんのアーティストをミュージックセレクターとしてお迎えしてきましたが、今回で最終回となります。そこでこれまでの総集編として、アーティストたちが選んだ「100年後も誰かの心に残っていて欲しい曲」や、複数のアーティストが取り上げた曲を中心にご紹介していきます。そして番組DJの野村雅夫さんが選ぶ「100年後も誰かの心に残っていて欲しい曲」もお届けします。3年3ヶ月本当にありがとうございました。

アーティストたちの音楽の原点

10代の吉田凜音さん、RIRIさんから、佐野元春さん、高橋幸宏さん、八代亜紀さんまで総勢120組以上のアーティストが語ってくれた「音楽の原点」。どの選曲とお話しも、現在のアーティストのみなさんと繋がっているのだと思うと、とても愛おしい気持ちになった至福の音楽の時間でした。

The Entertainer/Scott Joplin (くるり / 岸田繁)

親父が日曜日になるとドボルザークとかチャイコスフキーを大音量でかけてて。自分にとってクラシックは爆音で鳴らす特殊な音楽という感じでした。でもその中で「The Entertainer」という曲がめちゃ好きで、あのベースが下がっていく部分とかもすごく気になっていました。自分が「音楽、好きやなあ」と思ったのも、この曲を聴いた頃からです。

PINK SPIDER / hide with Spread Beaver (ONE OK ROCK / TAKA)

小さい頃、家族で訪れた箱根のレンタルビデオ店の中にあったCD自動販売機でチョコレート模様のジャケ買いしたシングルです。X JAPANやhideという意識のないまま聴きました。最初に受けた印象は「とにかく派手」。でもスーパーヒーローのように思えました。

Live Forever / Oasis (ASIAN KUNG-FU GENERATION / Gotch)

浪人時代に聴いたリアム・ギャラガーの「♪Maybe—」で、雷に打たれたような感覚を覚えました。この曲を聴いていなかったら音楽やっていたか自信がないです。自分がギターで歌ってみてもこの感じが出ない。これはリアムじゃないと歌えないし、どんな曲もリアムの魔法にかかっちゃう感じがスゴイ。

Fly Me To The Moon / Julie London (八代亜紀)

12歳の時に出会った運命の曲。それまで自分のハスキー・ヴォイスにコンプレックスを持っていたんだけど、父が “ジャケ買い” してきたジュリー・ロンドンのレコードを聴いてハマって歌手を志すようになったの。この頃からスイング・ジャズやボサノヴァがカッコいいと思い、歩きながらリズムをとったりしていたわ。

満月の夕 / ソウル・フラワー・ユニオン(あいみょん)

私は阪神淡路大震災の2ヶ月後に西宮で生まれたんですが、1.17の時は毎年聴いてます。私の父親が音響の仕事をしていて、ギターとか三線でよく歌を歌っていたんです。その中で「満月の夕」をいつも歌っていて“これ、お父さんの曲なんや”って思っていたぐらいです(笑)。父が音楽やっていなかったら、私は音楽をやっていなかったと思います。そういう意味でもこの曲には思い入れが深いですね。

Cherub Rock / Smashing Pumpkins (RIZE / JESSE)

中学生の頃、スマパンの来日公演を観に行って興奮のあまり2階席からフロアに転落しました(笑)。場外に追い出されたけど再び会場に忍び込んで。最初に耳コピしたギターリフもこの曲だったな。

Lonestar / Norah Jones (藤原さくら)

高校一年生の時にオーディションで歌った曲です。自分の声にコンプレックスを持っていて、まだ自分のやりたい音楽を模索中でした。その頃にヴォーカル・スクールの先生から「あなたの声はノラ・ジョーンズが合うから、このアルバムを全曲コピーしなさい。」と言われて聴いたのがアルバム『Come Away With Me』。その素晴らしさに感動し歌ってみると、自分のキーに合っていて歌いやすく大好きになりました。この曲に出会ったおかげで自分の声に自信を持つことが出来ました。

ユーミンは100年後も誰かの心に残っていて欲しいアーティスト

出演してもらったアーティストが「100年後も誰かの心に残っていて欲しい曲」として、最も多く選曲したのがユーミンの作品です。荒井由実時代の曲も含め6人のアーティストが選曲しています。

やさしさに包まれたなら (原田知世、Shiggy Jr. / 池田智子)

中央フリーウェイ (土岐麻子)

ノーサイド(清水翔太)

春よ、来い(松室政哉)

卒業写真 (androp / 内澤崇仁)

そんなユーミンは“日本人の新たな心象風景を作り上げた功績”を称えられ、昨年「第66回菊池寛賞」を受賞しています。2年前に土岐麻子さんが“心模様だけではなく、ユーミンが歌ってきた日本の風景が印象に残っています”と語っていたのが印象に残ります。

アーティストたちに影響を与えたGreen Day

音楽体験の原点、あるいは音楽を始めてから影響を受けた曲として最も多く登場したのが、Green Dayの「Basket Case」。90年代に多感な時期を過ごしたアーティストたちに影響を与えた音楽のひとつと言えます。

・初めて聴いた時に「なんだ、このキャッチーでカッコよくてエネルギッシュな音楽は!」と感じ、それから音楽を掘り下げて聴くようになりました。(イトヲカシ / 宮田“レフティ”リョウ)

・中学生の頃にこの曲に出会い、パンキッシュなロックに目覚めました。(STRAIGHTENER / ホリエアツシ)

・コード進行やメロディは綺麗なのにドラムやギターが激しいというギャップに、自分の感性を持っていかれました。(androp / 内澤崇仁)

また楽曲は違いますが、リーガルリリーのたかはしほのかさんは「音楽体験の原点」の曲として、Green Dayの「21 Guns」を挙げています。

多くのアーティストが選曲するBjork「Hyperballad」の魅力

幾つかのテーマで多く選曲されたのがBjorkの「Hyperballad」。ある種のカルト性や、音楽性を超えた芸術性や精神性にもその魅力があるようです。

・自分はどういう音楽が好きなのか?どういう音楽をやったら満足できるのか?と考え始めて、改めてBjorkを聴き始めました。(水曜日のカンパネラ / コムアイ)

・ステージに上がる前、一人きりでこの曲を爆音で20回ぐらい聴くと、まるで草や木と会話できるような感覚になり雑念が取り払われ、ステージに穏やかな気持ちで立つことができました。(細美武士)

・アイスランドを訪れた時、全てが鮮やかで美しく見えました。その感覚がいまも強く残っていて、音楽に対する向き合い方を考えさせられるんです。(Aimer)

100年後も誰かの心に残っていて欲しいこの2曲

番組のテーマである「100年後も誰かの心に残っていて欲しい曲」。大きなテーマにアーティストを悩ませてしまうこともありましたが、その人となりが伝わる選曲やその想いを知ることができる貴重な時間でした。その中で複数のアーティストからセレクトされた曲は・・。

Imagine / John Lennon

・外国の詞で初めて感動した楽曲。いつかこんな曲や言葉を書けるようになりたいという気持ちも込めて選曲しました。(さかいゆう)

・100年後も確実に残っているだろうという観点で選びました。メロディはもちろん、歌詞の内容も含めてこういう曲は日本では生まれない気がします。(藤井フミヤ)

・この曲ってメッセージがダイレクトで「いろんなことを想像してごらん」と語りかけてくれます。世の中の人がエンターテインメントとして音楽を楽しむ中でも、受けとるだけじゃなくて想像して欲しいと思います。(和楽器バンド / いぶくろ聖志)

上を向いて歩こう / 坂本 九

そしてこれまで最も多くのアーティストの方々が選んだ曲が坂本九の「上を向いて歩こう」でした。しかも選曲したみなさん全員、この曲が大ヒットした1961年以降の生まれです。

・日本のポップスの完成形です。(ゆず / 北川悠仁)

・日本の温かな部分とか憂いの部分が曲や歌声に詰まっている。現在の自分にも感じるものがあります。(Mrs. GREEN APPLE / 大森元貴)

・たまに口ずさんでしまいたくなる時があります。主人公は泣いているんだけど、坂本九さんのちょっとニカっとしたような笑顔があいまって心にグサッとくる。いつの時代でも歌詞がグッとくる曲だと思います。(BRADIO / 真行寺貴秋)

・日本の魂を歌い、その魂をダイレクトに感じます。(SANABAGUN. / 高岩遼)

・世界中で歌われている名曲。「100年後も誰かの心に残っていて欲しい曲」というテーマだったので、子供の頃に好きで、そして今も好きな曲という観点で選曲させてもらいました。(KYONO)

野村雅夫が選ぶ100年後も誰かの心に残っていて欲しい曲

There is (always light) / くるり

様々な実験的な曲が収録されているアルバム『THE PIER』の最後を飾るのが、このくるり王道の曲「There is (always light)」。

あなたが残した 音楽も台詞も全然

普段使い

新しい景色にも

困難多き時代にも響く

歌詞に出てくるそういう音楽を岸田繁さんは作りたいのだろうし、そういう音楽こそ100年後に残るものなんだろうと思います。

いつも誰かの心に 雲の裏に その音楽を聴いた瞬間に 光が差してくるような音楽。僕はそういうメッセージを感じ、このアルバムのラストを飾るこの曲を聴くと、いつも目頭が熱くなってしまいます。

The Last Resort / Eagles

イーグルスは保守的なアメリカ南部のテキサス出身で、しかもアメリカを象徴する鳥の「鷲」をバンド名にしているので、いかにもアメリカなイメージがありますよね。でもこの曲が収録されている『ホテル・カルフォルニア』には、アメリカを批判する曲がかなりあって、そのフィナーレを飾るこの曲は7分もあるんです。自国への批判や風刺みたいなものを最後にどーんと入れるという、ある意味の風通しの良さを感じます。100年後がどういう世の中になっているかわからないけれど、自分たちを批判できるロック・スピリッツみたいなものは失われないでいて欲しい、そんな思いを込めて選曲しました。

総勢120組のアーティストやクリエイターが選曲した「897 Selectors」は、選曲解説テキスト付きでKKBOXのプレイリストにアーカイブされています。貴重なアーティストたちの音楽体験や100年後に残したい音楽に触れてみてください。新しい音楽との出会いがあるはずです。

897Selectorsアーカイブページ

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