タイのポップスターSTAMPとchelmicoとの深いイイ関係

タイのポップスターSTAMPとchelmicoとの深いイイ関係
山麓園太郎
山麓園太郎

STAMPはエイベックスと契約して日本にも活動の場を広げているタイのポップ・スターだ。多数のヒット曲を持ち、人懐こい笑顔と人柄で好感度はNo.1。タイではCMや街角の広告でその顔を見かけない日は無い。妥協の無い、自由な音楽制作環境を求めて自身のレーベルを主宰し、音楽プロデューサーとしても腕をふるう。



そんなSTAMPの、日本のアーティストとのコラボ作品が今とても面白い。昨年9月にリリースされたSKY-HIとのコラボシングル「ジェイルハウス feat.SKY-HI」は、オリジナルのタイ版とはミックスが全く異なり、SKY-HIのラップに呼応するように細かく刻まれるビートと図太い低音によって、よりスリリングな印象に仕上がっている。STAMPの「音楽プロデューサーとしての視点」が強く反映されていると感じた。


出典元:YouTube(AVEX)


新曲はchelmicoとのコラボ作品だ。STAMPがこれほどの情熱を持って日本のアーティストに注目し、コラボを熱望するのは「親日家」という理由だけでは説明がつかないように思う。タイの音楽プロデューサーとしての彼の目には、日本の音楽はどう映っているのだろう?インタビューの他に、大好きな日本の曲のプレイリストも考えてもらった。


日本とタイではレコーディングもずいぶん違う

ーSTAMPさんはこれまで数多くの日本のアーティストとコラボしていますが、「ジェイルハウス」がひとつのターニングポイントになったと思います。単なる共演ではなく、SKY-HIのラップに合わせてバッキングトラックを大きく作り変えていますね。この曲の制作過程では、音楽プロデューサーとしての作業にも時間がかかったのでは?

STAMP:はい。オリジナルのタイ版ではラッパーのYOUNGOHMが参加していましたが、SKY-HIのラップはそれとはまた違うアグレッシヴなスタイルだったので、その凄さがリスナーにちゃんと伝わるように彼のパートはいちから作り直しました。

ータイの曲と比べて、日本の曲はトラックの置き方や音のミックスが全然違うそうですね。具体的に説明してもらえますか?

STAMP:日本のレコーディング現場では、後から修正やミックスの変更がしやすいように、「Aメロ」や「サビ」といった曲のパートごとにブロック単位で各トラックが管理されています。タイでは1つの楽器が1曲通して1つのトラックで録音されていたりするんですが、逆にタイの現場ではこの方が作業がしやすいんです。


出典元:YouTube(123Recoreds)


「合理的だ」と感じるスタイルは国によって大きく違うようだ。ミックスについても、日本では歌が目立つようにバッキングトラックが一歩引いてミックスされる事が多いので、「ジェイルハウス」日本版並みの低音の迫力をJ-POPで見つけるのは案外難しい。


chelmicoにはラップとメロディーのどちらもある

出典元:YouTube(STAMP)

ー新曲「HIDE YOU feat.chelmico」はchelmicoとのコラボですが、彼女達を知ったきっかけは何でしたか?そしてコラボをオファーする決め手になったのは?

STAMP:日本に行った時にCDショップでCDを見て名前は知っていましたが、TVアニメ「映像研には手を出すな!」の主題歌「Easy Breezy」を聴いてから気になるようになりました。今回の曲には明るい感じのラップと、メロディーも新たに加えたかったので、その2つを兼ね備えたアーティストを探していてchelmicoが候補に挙がって来たんです。

ーSTAMPさんから見たchelmicoの魅力は?

STAMP:ルックスや音楽も良いですけど、歌ったりラップしている姿、とにかく見ていると明るくて楽しいイメージがどんどん湧き出てくるのが彼女達の面白さかな、と思っています。



と、chelmicoを大絶賛のSTAMP。一方chelmicoもタイが大好きで、STAMPの音源を聴き「めっちゃ素敵」(Rachel)「うん。美声でね」(Mamiko) と、コラボを快諾したという。お互いにハッピーしかない、素晴らしい出会いだったに違いない。


高校生の頃、J-ROCKに夢中になった

STAMPが少年時代を過ごした90年代のタイではジャパンカルチャーが大ブームで、TVアニメなら「ドラゴンボールZ」や「美少女戦士セーラームーン」、ゲームなら「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」シリーズが日本とのタイムラグ無しで楽しまれていたという。それを入口として、彼は日本の音楽に出会った。

ー今回は「STAMPが選ぶ日本の好きな曲10曲」のプレイリストも作ってもらいましたが、影響を受けた日本のアーティストを3組挙げるとしたら?

STAMP:まずL'Arc〜en〜Cielですね。「winter fall」が大好きです。



ー1998年の曲ですね。STAMPさんはこの時16才、ギターを始めて1年目か。音楽に熱中し始めたばかりの頃じゃないですか!

STAMP:その頃がタイでJ-POP/J-ROCKが一番流行っていた時期なんです。高校の友人とコピーバンドを組みました。楽譜は売ってなかったので耳コピで。

ー憧れのバンドだったんですね。L'Arc〜en〜Cielのどんな所が好きですか?

STAMP:当時は高校生ですから、ロックの攻撃的な部分を「かっこいい」と感じましたが、僕は美しいメロディーの曲も好きでした。欧米のバンドは、攻撃的でかっこいいか優しいバラードか、曲によってスタイルがはっきり分かれているように感じましたが、L'Arc〜en〜Cielは美しいメロディーをロックのサウンドに乗せて「かっこいい」と「優しい」をブレンドしていたんです。


共感と尊敬。THE CHARM PARK

出典元:YouTube(AVEX)


ーでは、影響を受けた日本のアーティスト2組目は?

STAMP:THE CHARM PARKです。

ー昨年11月にリリースした「It takes two」はTHE CHARM PARKさんプロデュースということで、既にコラボも実現していますね。2人ともセルフプロデュースをするし、歌い方や曲のメロディーにも共通点を感じるんですが、STAMPさんは彼をどう思っていますか?



STAMP : お互い興味のある事や趣味が似ているので話も合うし、共感しているんですが、音楽のスキルは彼の方がずっと凄いので僕も頑張っているところです(笑)。

ーSTAMPさんだって凄いですよ!(笑)音楽面での彼の魅力は?

STAMP:美しいメロディーを書けて、ギタリストとしても凄いテクニックを持っています。ロックではギターの速弾きの事を「シュレッド」と言いますが、彼はポップのフィールドでそのテクニックを生かしているので、会った時に彼の事を「ポップ・シュレッダー」と呼びました(笑)。


乃木坂46が勇気をくれる

ー影響を受けた日本のアーティスト3組目は?

STAMP:乃木坂46です。

ー誰推しなんですか?(笑)

STAMP:齋藤飛鳥さんです!

ー最初に好きになった日本のアイドルが乃木坂46なんですか?

STAMP:最初は欅坂46です。今は坂道グループ全般が好きですけど。


乃木坂46公演でのSTAMPのワンショット

ーでも、乃木坂46に関してはファン目線で好きなだけではなく「影響を受けた」と感じるんですね。STAMPさんの音楽に影響を与えた部分というのは?

STAMP:アーティストとしてのスタンスです。曲も美しいメロディーが多くて耳に残るし、歌詞からは前向きな明るいメッセージが伝わってきて勇気づけられるんです。僕も音楽を通じて聴く人を明るい気持ちにしたり、勇気づけたいという思いが常にあるので、そこは曲を書く上で影響を受けた部分ですね。もうひとつ、これは乃木坂46に限りませんが、J-POPにはストリングスが入った曲が多いですね。タイではストリングスを使った編曲は少ないんです。これはJ-POPの特徴のひとつだと思います。これには特に影響を受けて、自分の曲にもストリングスを入れるようになりました。


音楽からも感じる日本人の「繊細さ」

ー音楽以外に、例えば日本のアニメやゲームからは影響を受けましたか?

STAMP:アニメはジャパンカルチャー体験の入口ですが、まだ子供でしたから、特に影響は無いですね。ゲームでは「ファイナルファンタジー」のBGMにも綺麗なストリングスが使われていたりして、そこは少し影響されたかもしれないです。

ー新しい日本の音楽は普段どのように探しているんですか?

STAMP:日本に行く度にタワレコ等のCDショップに行って、試聴機でチェックして買って帰るんです。今はコロナで日本へ行けないのでYouTubeで探していますが。

ー現代のポップミュージックに使われる楽器やDAWソフトは世界共通でも、曲や演奏にはそれぞれの国のカルチャーや日常の風景、国民性が必ず表れます。STAMPさんにとって、日本の音楽を特別なものにしている「ジャパンカルチャー」や「日本人の国民性」はどんな風に見えているのでしょう?

STAMP : 日本人はとても繊細ですね。街を歩いていても歩道の舗装やビルのタイルの仕上げがとても綺麗です。音楽も細かい部分にまで注意を払って作られています。使われる和音、転調の仕方、美しいメロディーとメリハリの効いたストリングスの編曲・・・。歌詞も1番と2番のサビで内容を変えていたり、そういった繊細さにジャパンカルチャーを感じますね。

ータイではサビの歌詞がずっと同じ曲が多いですよね。何故なんでしょう?

STAMP:早く覚えてもらうためです。だから新曲でもコンサートでお客さんが一緒に歌って盛り上がれるんですよ。


STAMPさんの所有している日本のポップカルチャーの一部

ここまで話を聞いていると、日本の音楽を語る時に彼は必ず「美しいメロディー」について触れている。美しいバラード曲「クワーム・キット」の大ヒットでスターとなった彼は、更なる成功を追い求め続けた結果、曲が全く書けなくなる程のスランプに陥り、休養に訪れた日本で「大切なのは成功ではなく成長だ」と気付いてスランプから脱出できた、と以前筆者に話してくれた事がある。

ギターを始めたばかりの頃に聴いたJ-POP/J-ROCKの美しいメロディーは彼の心を掴み、進む道を指し示すものとなったのだ。STAMPにとって日本の音楽は、音楽人生の地図であり、アーティストとして自分が成長し続けるために欠かせないインスピレーションの源なのだろう。

ーSTAMPさんはこれからも日本のアーティストとコラボを続けてゆくと思いますが、今「この人と一緒に演りたい」と思っているアーティストはいますか?

STAMP : THE CHARM PARKとはもっと他にも色々と曲を作りたいと思っています。それからBiSHのアイナ・ジ・エンドさん。彼女の声が大好きで、僕の声とブレンドしたら何か新しい発見ができるんじゃないかと思うんです。もうひとり、中田ヤスタカさん。彼の音楽も大好きなので、いつか一緒に仕事ができたらいいなと思います。

ーSTAMPさんのコラボ・プロジェクトによって、タイと日本のカルチャーがブレンドされた新しい音楽が沢山生まれる事を楽しみにしています!

STAMP:ありがとうございます!新曲もぜひ聴いてみてください!



【プロフィール】

タイ/バンコク出身のシンガーソングライター。

音楽プロデューサーとしての顔も持つ、タイのトップアーティスト。

タイの陽気を感じられるような、心温まるシティポップサウンドと優しい歌声が特徴。Spotify Thailand トップチャート1位、Apple Music トップチャート1位の常連で、自身のYouTubeチャンネルは、総再生回数1億2000万回を突破。

3万人規模の音楽フェス「Cat Expo」のヘッドライナー出場を果たし、

世界的大手企業のCMにも多数出演するなど、まさに国民的な存在。

自らのレーベル「123records」を主宰し、自身の活動に留まらず、音楽プロデューサーとしても活躍。

大の親日家を公言しており、独学で日本語を学習。日本の地上波テレビ(スッキリ!)に出演した際には、日本語でトークを行った。SUMMER SONIC2019に出演し、2020年1月にはSKY-HIとのコラボ曲「Don't Worry Baby Be Happy feat.STAMP」をリリース。2020年夏からは、本格的に日本での活動を開始。「日本語歌唱/日本人アーティストとのコラボ」をテーマに、既に2作品配信リリース。  タイと日本の架け橋となる、唯一無二の存在である。


■STAMP Twitter 

https://twitter.com/StampApiwat

■STAMP YouTube

https://www.youtube.com/channel/UCX8CoPcorL-apWj2JfKPwfA  


山麓園太郎
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