小田和正がJ-POP最強と言われる魅力を紐解く

小田和正がJ-POP最強と言われる魅力を紐解く
栗本斉
栗本斉

小田和正の全シングル、全アルバムの音源が、ついにサブスクリプションで解禁されました。オフコースのメンバーとして1970年にデビューし、1986年からソロ活動を開始。1991年にはドラマ主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」が270万枚を超える大ヒットとなりました。2016年にはベスト・アルバム『あの日 あの時』がアルバム1位獲得最年長記録となり、70歳を超えた現在も精力的にツアーを行っています。また、ドラマや映画などのタイアップも数知れず、とりわけ明治安田生命の「泣ける」企業CMも話題のひとつです。

出典元:YouTube(公式チャンネル明治安田生命)

今回はオフコースのセルフ・カヴァーから、ソロとしてのヒット曲に至るまで、音楽的な観点を中心に、小田和正の魅力を紐解いてみましょう。


生まれ来る子供たちのために

オフコースは1989年に解散しましたが、小田和正は1990年代以降のソロ・シングルのカップリングでセルフ・カヴァーを発表し始め、後に『LOOKING BACK』及び『LOOKING BACK 2』にまとめられます。今の自分で自作曲を表現したいという思いで始まった作品で、アレンジやテンポ、歌いまわしなどががらりと変わったものもあれば、ほとんど原曲のイメージが変わらないものまで様々。この曲は、完全に後者。最小限に抑えられた楽器のアレンジや美しいコーラスワークはもちろんですが、この楽曲が持つ普遍的なメッセージは、いつの時代にも響くということに驚かされます。常に「今の時代」に聴きたい一曲だと思います。


恋は大騒ぎ

しっとりしたイメージが強い小田和正の楽曲ですが、中にはゴキゲンなサウンドも。その代表的な一曲がこの曲です。1990年にシングルとして発表され、CMソングに使用されてヒットしました。小田和正の楽曲は、アーティストの色が強いためそれほどルーツを意識させることはありませんが、この曲は例外的にいわゆる王道のモータウン・ビートをわかりやすく引用しています。カルロス・ヴェガ(ドラムス)、ネイザン・イースト(ベース)、ディーン・パークス(ギター)といった米国西海岸の凄腕ミュージシャンによる豪華なバッキングも見事。コーラスにはEPOが参加し、華やかなイメージを作り上げています。


ラブ・ストーリーは突然に

なんといってもこの曲を外す訳にはいかないでしょう。言わずと知れた大ヒット・ドラマ『東京ラブストーリー』の主題歌です。タイアップに加え、タイトルや歌詞のキャッチーさ、イントロの印象的なギター・フレーズなどヒットの要因は様々ですが、楽曲全体の「グルーヴ感」もそのひとつではないでしょうか。小田和正の楽曲は、前述の通りしっとりしたイメージですし、オフコース時代にあったアップテンポの楽曲もロック色が強い。そのため、マーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドなどに通じるストリングスの入ったニューソウル的なアレンジは、歌の世界観と絶妙にマッチし、発表当時は非常に斬新だったのではないでしょうか。このテイストのアレンジはその後も定番となり、「真夏の恋」や「伝えたいことがあるんだ」といった楽曲にも継承されています。


the flag

さらにアレンジにフォーカスして聴いてみると、この曲も非常に特徴的で小田和正らしいといえます。イントロこそピアノのみなので一瞬弾き語りなのかと思わせますが、その後リズム・セクションとアグレッシヴなエレキ・ギターが加わり、ストレートな小田和正流のロックンロールに仕上がっています。エルトン・ジョンやビリー・ジョエルにも通じるものがありますし、さらにいえばベン・フォールズやダニエル・パウターといったピアノ・ロックとも共通するものを感じられるかも。この曲はライヴで盛り上がるので、アクティヴな小田和正のイメージともぴったりと重なります。


風のようにうたが流れていた

あくまでも統計を取ったわけでなくただの印象ではありますが、小田和正の歌詞に最も多く登場する言葉のひとつが「風」ではないでしょうか。彼の歌詞には特定の時代や場所を表す言葉が少なく普遍的な世界観が多いのですが、その一方で空を見上げたり坂道を駆け上ったりと「どこにでもあるけれど特別な風景」が登場します。そしてそこには必ずといっていいほど「風が吹いている」のです。このバラード曲の「風」はあくまでも比喩として表現ですが、自身のルーツを辿るテレビ番組のタイアップに使われたということは、やはり彼の原風景にはいつも「風」が吹いているのでしょう。


この道を

現時点での最新シングルがこの曲です。テレビ・ドラマの主題歌として使用されましたが、清涼感に溢れながらも、その歌詞に描かれた意志の強さに圧倒されます。難しい言葉は使っていないですし、描かれた内容も非常にストレート。にもかかわらずここまでずっしりと聴き手の心に響くのは、まさに年輪の賜物といえるでしょう。ピアノとストリングスを主体にしたシンプルなアレンジが、さらに楽曲のメッセージを浮き上がらせます。なお、バック・コーラスには、松たか子、JUJU、光田健一という3人が参加しているのも聴きどころ。小田和正の楽曲にはこういったアーティストたちが参加しているのも楽しみのひとつです。これまでにも上江洌清作(MONGOL800)、大橋卓弥(スキマスイッチ)、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)、鈴木雅之、根本要(スターダスト・レビュー)、矢井田瞳、山本潤子他多くのアーティストが参加しているので、是非探してみてください。

今回のサブスプリクション解禁により、オフコース時代からソロ最新曲まで、約50年に渡る音楽活動をほぼ網羅して気軽に聴くことができるようになりました。良質なJ-POPの歴史そのものともいえる小田和正の世界を、ぜひ堪能してみてください。


オススメプレイリスト

 

栗本斉
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