春先のデパートは浮足立っている。暗い色合いの冬服が端に追いやられ、パステルカラーのニットややわらかなシフォンのスカートが並ぶ服屋も楽しいが、ついつい吸い寄せられてしまうのは靴屋だ。フレッシャーズスーツや真新しい制服に似合うピカピカの革靴や、春らしいオープントゥのエナメルのパンプス、軽やかな素材でできたウエッジソールのサンダル、どれを眺めていても心が躍る。まだまだ朝晩の冷え込みは厳しいが、自分の足元を見下ろして冷え対策と防水加工だけで選んだ長靴のようなブーツが目に入り、つい気恥ずかしくなるのがこの季節だ。春は新しい靴、そんなイメージが強く自分の中にある。新しい靴で自分の足で歩いていくというイメージは、門出の春にこそふさわしいと思う。
テレビ東京系列のドラマ『昼のセント酒』の主題歌を書き下ろすなど、話題に事欠かない高橋優の楽曲「靴紐」は、大切な人との決別と前進の決意を歌った名曲だ。「変わり続けてくこの街に 君の思い出はおいていく 僕はただ靴紐を結び 歩いていくことにしたのさ」という歌詞は、せつなくも前へ進んでいく勇気をくれる。 また、靴屋の店頭で脳内に流れる靴ソングと言えば、チャットモンチ―「8cmのピンヒール」と宮脇詩音「お気に入りの靴」だ。あー、新しい靴がほしい。というわけでプレイリストにも春にぴったりのポップな靴ソングを選んだのでぜひ聴いてみてほしい。
