あなたの聴覚は耐えらえるか?? 背筋が凍る!! Jホラー映画音楽。

あなたの聴覚は耐えらえるか?? 背筋が凍る!! Jホラー映画音楽。
山本雅美
山本雅美

KKBOXでも定番人気の「怖い童謡」や「試聴注意!ホラー&ミステリー特集」など怖い系プレイリスト。今回はジャパニーズホラー映画とその音楽をご紹介します。ジャパニーズホラーは、海外のホラー映画のような派手なアクションや絶叫シーンが少なく、沈黙や静寂さなど、目に見えない恐怖が薄気味悪さを引き立てています。日本画にもある「余白の美学」といったところでしょうか。そして欠かせないのがその音楽。こちらも海外ホラーによくある金属音や派手なメロディではなく、真綿で首を締められていくような独特な音楽になっています。音から色んなことを想像できるのが日本人の特徴なのかもしれません。それでは、ジャパニーズホラー映画音楽の魅力をご案内しましょう。

呪怨:呪いの家(2020年)

出典元:YouTube(Netflix Japan)

Netflixで全世界配信が開始された「呪怨:呪いの家」。予告のテレビスポットが恐怖過ぎて「絶対に観ないでおこ」と思いながらも、「怖いものみたさ」の気持ちが増幅しイッキ観してしまいました。先に言っておくと泣きたくなるほど怖過ぎます。これまでの「呪怨」シリーズ、いやこれまでのジャパニーズホラー作品を凌駕する超S級の怖さです。皆さん、覚悟して観て下さい。

今回の「呪怨:呪いの家」はオリジナルとは全く違う新しいシリーズになるので、これまで「呪怨」シリーズを観たことがない人も楽しめます(怖がれます)。一方でオリジナルへのリスペクトもちゃんとあります。白黒の過去の映像と繋がっていくという演出や、オリジナルでの登場人物のセリフや重要シーンのインサートなどは「呪怨」ファンには堪らないポイントです。そして時代設定となる1988年から1997年に実際に起きた「東電OL殺人事件」や「妊婦切り裂き殺人事件」「女子高生コンクリート詰め殺人事件」「埼玉連続幼女誘拐殺人事件」など、当時の狂気的な事件を題材にしているという点もオリジナル版へのオマージュ愛を感じます。

出典元:YouTube(Netflix Japan)

Nefflixだからこそ映像化できる目を覆いたくなるシーンもある「呪怨:呪いの家」ですが、本当の怖さは「学校での虐め」「子供への虐待」「DV」「不倫」など、現実社会の倫理観の崩壊もストーリーに折り込まれていることです。それが空想ではない恐怖へと引きずり込まれていく重要な要素になっています。そして何と言っても舞台が「日本の普通の家」なので、自宅の台所や寝室、階段や玄関の灯りが恐怖を増幅させる絶好な空間として迫ってきます。ただし「呪怨:呪いの家」はただ怖いだけでなく、光と影の緩急の演出による映像の奥行きの深さを感じることのできる映像美も素晴らしいです。ちなみに監督の三宅唱さんは 星野源の最新シングル「折り合い」でも、光と影を巧みに使ったミュージックビデオを手掛けているのでチェックしてみてください。

出典元:YouTube(星野源)

そして「呪怨:呪いの家」の後味の悪さを増幅させているのが、エンディングで流れるMAREWREW(マレウレウ)の「sonkayno」。MAREWREWは、アイヌの伝統歌「ウポポ」の再生と伝承をテーマに活動する女性ヴォーカルグループです。様々な事件の連続が重なりあい新たな恐怖を生み出すストーリーと同様に、不思議なリズムパターンと輪唱が幾重にも構成され、異界空間へと誘い後味の悪さを増幅させています。「sonkayno」は親子ネズミが罠の中にある沢山のお菓子を引っかからないように取る遊び歌で、いまでも旭川や道東では、お正月や多くの人が集まった時に歌われているそうです。「かごめかごめ」「とおりゃんせ」など、昔から伝わるわらべ歌に少し怖い意味があるように、この「sonkayno」にも、まだ知られざる秘密があるのかもしれません。


シライサン(2020年)

出典元:YouTube(松竹チャンネル/SHOCHIKUch)

“その名を知ると現れて、視線を逸らすと、殺される”という新たなホラーキャラクターがシライサン。シライサンが現れると目を逸らすことが出来ないんです。そう、目を逸らしてしまうと眼球が破裂し死んでしまいます。こんな恐怖と見つめ合ってしまったらどうなるのでしょう?その時間はもうとてもじゃないけど耐えられないはずです。そんな究極なことをしちゃうのがシライサン。「口裂け女」や「メリーさんの電話」などのオーソドックスな都市伝説の現代版ホラーという味付けです。シライサン自体、現代のネット社会の闇を象徴するような承認欲求モンスターのようであり、ソーシャルメディアから本当に生まれてきそうな恐怖を感じます。

シライサンの名前を知ってしまった時に流れてくる音楽がこちらです。鈴の音自体はとても可愛らしですが、不穏なメロディと合わさると「嫌な感じ」の象徴になってしまいます。普段は癒される音なのに、精神状態の変化で恐怖に転化していくことを実感できます。


犬鳴村(2020年)

出典元:YouTube(東映映画チャンネル)

日本屈指の心霊スポットとして知られるのが福岡県の「旧犬鳴トンネル」。そしてトンネルの先には、地図に載っていない集落「犬鳴村」があるのだと言われています。「トンネル内で幽霊を見た」「遊び半分で行った友達が帰り道に事故死した」「全ての携帯電話が圏外になる」などのトンネル系スポットでは欠かすことのできない話も盛り沢山です。そんな最恐スポットを舞台にしたのが「犬鳴村」です。「犬鳴村」は実在せず、かつて犬鳴川上流にあった「犬鳴谷村」がモチーフになっていて、犬鳴ダム建設にあたり、今ではダム底に沈んでいます。住民は1986年に別の土地に集団移転、使われなくなった旧道やトンネルの通行者はほぼ途絶えてしまいました。そして廃トンネルの運命であるかのように心霊スポット扱いされていくことになります。ただ、1988年には「旧犬鳴トンネル」で少年グループによる拉致監禁殺人事件、2000年には犬鳴ダムで死体遺棄事件が起きています。架空だったはずの場所が、現実の事件現場になっていることを考えるとやはり怖いですね。くれぐれも興味本位で行かないようにしましょう。

「犬鳴村」はオープニングから目が離せない恐怖が迫ってきます。特に「旧犬山トンネル」に掲げられた「コノ先日本国憲法通用せず」という古ぼけた看板が登場するシーンで流れてくる音楽は恐怖感のギアを上げてくれます。


こどもつかい(2017年)

出典元:YouTube(松竹チャンネル/SHOCHIKUch)

「こどもつかい」は、「呪怨」オリジナル版や「犬鳴村」を手掛けた清水崇監督の隠れたホラー作品です。郊外で起こった連続不審死事件には奇妙な共通点がありました。それは被害者となった大人が、子どもに虐待や酷いことをした3日後に死に至っているのです。大局的には児童虐待をテーマにした作品で、子どもたちの恨みが肥大し、化け物に変わっていくストーリー。無邪気な子どもたちが異形化して迫ってくるのはホラーの王道でもありますが、独特な怖さがあります。内容は本気のホラー好きには物足りないところもありますが、ホラー初心者にとっては免疫をつけることができると思います。

虐待を受けていた子どもが事件の直前に口ずさんでいた「こどもうた」は悲しげで、そしてとても不気味です。しばらくこの意味不明な歌詞がリフレインし、気分が落ち込むこと間違いありません。その一方で、ユーモラスなバージョンもあります。でも、これはこれで妙な怖さがあります。

出典元:YouTube(松竹チャンネル/SHOCHIKUch)


クロユリ団地(2013年)

出典元:YouTube(シネマトゥデイ)

「リング」「仄暗い水の底から」の中田秀夫監督が手掛けたのが「クロユリ団地」。13年前から謎の死が続いているクロユリ団地に、何も知らずに家族と一緒に引っ越してきた明日香。その日から隣の部屋から響く不気味な音に悩まされます。明日香は公園で出会った少年から、本当のおじいちゃんじゃない人と一緒に暮らしていると聞かされ・・。設定が定番過ぎたのもあったのか、中田秀夫作品に大きな期待があったのか、公開当時はかなり酷評されている作品ですが、深夜の独りっきりの部屋で見ると怖さが増幅します。なにより団地というどこにでもある風景の中で感じる怖さってヤバいです。「クロユリ団地」を見てからは、「事故物件」サイトで自分の住んでいる部屋が大丈夫かなとか、引っ越するのであれば新築にしよう、いや新築と言ってもその前に何か起きてなかったのかな?とか少し神経質になってしまいました。ちなみに舞台になった団地は東京都・京王線仙川駅から徒歩10分の場所に昭和30年代後半に建てられた「緑ヶ丘団地都営仙川アパート」です。

音楽は「リング」「仄暗い水の底から」のほか「劇場霊」や「貞子3D」「ひぐらしのなく頃に」を手掛けた川井憲次。ホラー系音楽の第一人者です。ひょっとしたら映像より、音楽の方が不気味かもしれません。



いかがでしたか?映画を見なくても恐怖感を感じるホラー映画音楽の世界。このプレイリストを一日中聴いていると、かなりヤラれます。今回、この記事を書いている最中にKKBOXの聴いている曲が急に止まったり、パソコンがフリーズするなどの現象が起きました。偶然だとは思いますが、みなさんも試聴する時は気をつけて下さい。


山本雅美
山本雅美

最新の記事

    share to facebook share to facebook share to facebook share

    Ctrl + C でコピー