「真夜中のドア」が世界中を席巻!まだまだある女性シンガーが歌う名曲シティポップ

「真夜中のドア」が世界中を席巻!まだまだある女性シンガーが歌う名曲シティポップ
山本雅美
山本雅美

70年代~80年代の日本のシティポップが海外で話題になり始めているのを知ったのは、5、6年ぐらい前。いつも行くクラフトビール店の若いスタッフが、吉田美奈子や竹内まりやを好んで店内で流していたのがきっかけでした。「吉田美奈子、知ってるの?」と聞くと、「知らないんですけど、めちゃいいっすよね、この「時よ」って曲」と教えてくれたのが、海外のDJが公開していたSoundCloudのプレイリストでした。


出典元:YouTube(Warner Music Japan)

「いまの若い子たちもそんな曲聴くのか」と思っていたら、2017年には Google Trendで「Mariya Takeuchi」の検索が急上昇し、海外からのリスナーによってネットの世界では竹内まりやの「Plastic Love」が大きなトレンドとなりました。こうした状況は原盤を保有するワーナーミュージックも動かし、2019年に「Plastic Love」の新たなミュージックビデオが作られ公開されました。


出典元:YouTube(Rainych)

その後もシティポップのムーブメントはアジアや欧米の音楽ファンにも拡大。2020年10月にインドネシアのキュートな歌姫・ Rainych(レイニッチ) が歌う、約40年前にリリースされた松原みきの「真夜中のドア~stay with me」のカバーソングが配信されると、 某ストリーミングサイトのJ-POPランキングでは合計92カ国でTOP10入りするグローバルサイズのバズが生まれています。ちなみにRainychは様々なシティポップをカバーしていますが、日本語がほとんど喋れないというから驚きです。


出典元:YouTube(ponycanyon)

そして、オリジナルの「真夜中のドア~stay with me」も「グローバルバイラルトップ50」で18日間連続で世界1位を記録するというサプライズを起こし、改めてポニーキャニオンからミュージックビデオが発表されました。残念なことに、松原みきは2004年に44歳の若さで亡くなっています。しかし40年の時を経て彼女の歌声が世界中で、そして若い世代にも聴き継がれていることに新たな音楽の可能性を感じます。今回は「真夜中のドア」以外にもまだだチェックしておきたい1970年代&80年代の女性シンガーが歌う名曲シティポップを紹介していきます。


真夜中のドア~stay with me / 松原みき

「真夜中のドア~stay with me」に出会ったのは、高校生の頃によく行っていた中古レコードショップ。「真夜中のドア」というなんとも詩的なタイトルに惹かれ、ジャケ買いならぬ、タイトル買いでした。レコードの針を落とすと、部屋の空気を一変させてしまうようなイントロと、囁くような松原みきの歌声。濃厚な〈夜の情景〉を想像させる歌詞とメロディに夢中になったのを記憶しています。



「真夜中のドア」に登場する女性は、まるで昨日のことのように大好きな彼のことを語っていますが、この歌を聴き解くと、すでに二人の関係は終焉しているという事実に気がつきます。「昨夜(ゆうべ)」と「あの季節」が交互に描かれる世界。恋愛を重ねた大人でないと感じることができない深い世界です。作曲は林哲司。この「真夜中のドア」と同じ頃に手がけたのが、まったくタイプの違う竹内まりやの「September」というのも興味深い点です。



ポニーキャニオンでは「パッケージ・オーダー・プロジェクト〈POP〉がスタート。第1弾のデビューシングル「真夜中のドア/Stay With Me」と1stアルバム「POCKET PARK」の復刻盤の商品化に続き、2ndシングル「愛はエネルギー」と2ndアルバム「Who are you?」の復刻盤の予約注文がスタートしているので、こちらもチェックです。

詳細:https://pop.ponycanyon.co.jp/


中央フリーウェイ/松任谷由実(荒井由実)

そもそもシティポップの定義って何?と言われれば厳密な定義はありません。1970年代〜80年代の日本で流行したポップスの一形態で、詞やサウンドに〈都会的な雰囲気〉を含んでいることが特徴ですが、人それぞれが持つ〈都会的な雰囲気〉は当然違うので、とても感覚的な定義でしかありません。どこか曖昧なジャンルのシティポップですが、その中でわかりやすい教科書的な楽曲をあげるなら、ユーミンの「中央フリーウェイ」でしょう。



中央高速道路を「中央フリーウェイ」と言い換えるだけでなぜかワクワクしてくるこの感じ。歌詞に出てくる「調布基地(現在の調布飛行場)」や「競馬場」「ビール工場」などオシャレさからは程遠い場所をキラキラしたイメージに仕立てあげることに成功しているのは、洋楽的なグルーブを取り入れたメロディとサウンドです。この時代、東京に住んでいる若者が自動車免許をとったら「中央フリーウェイ」をカセットテープで聴きながら中央高速デビュー!!という人がたくさんいました。まさに、シティポップの本質を証明している曲と言えます。


DOWN TOWN / EPO、シュガー・ベイブ

シティポップのお手本と言えるもう1曲が「DOWN TOWN」です。1975年に発表されたこの曲は、山下達郎や大貫妙子らが結成した日本のポップスシーンにおける重要なグループ、シュガー・ベイブによるもので、いまなお色褪せないメロディやサウンドが魅力です。そこに「土曜日の夜はにぎやか」「それでも陽気なこの街」という歌詞が乗り、本当に街に繰り出したくなる気持ちの高まりを感じさせてくれます。ちなみに音楽プロデュースに大滝詠一が参加しているのもポイントです。



その後、1980年にスタートした伝説的な国民的お笑いバラエティ番組「オレたちひょうきん族」のエンディングテーマとしてEPOが歌う「DOWN TOWN」のカバーバージョンが起用。多くのお茶の間で「DOWN TOWN」を耳にすることになったのです。


夏に恋する女たち / 大貫妙子

シュガー・ベイブ解散後、ソロ活動をスタートさせた大貫妙子は、ブラック・コンテンポラリーやAORといったサウンド感を取り入れた「都会」や「サマー・コネクション」など洗練された作品を発表していきます。シティポップの歴史を理解する上でどの曲も絶対に聴いて欲しいのですが、今回紹介するのは「夏に恋する女たち」です。



この曲は同名のドラマ「夏に恋する女たち」の主題歌として起用されたのが1983年。ドラマの内容は六本木のマンションを舞台にアーバンな生活を送る訳ありシングル男女6人が繰り広げる、ひと夏のナウな物語。バブル景気前夜の空気感も漂っていたのかもしれません。そんなドラマのオープニングを飾ったのが美しいピアノの音色と、透明感のある甘やかで伸びやかな大貫妙子の歌声でした。この頃の大貫妙子の作品のテイストはヨーロッパ風のモチーフを取り入れた、シティポップさえも超えた洗練された作品になっています。この曲のファンも多く、のちに中谷美紀や原田知世がカバー曲として発表しています。


時よ / 吉田美奈子

沢田研二の「勝手にしやがれ」や、山口百恵の「プレイバックPart2」など歌謡ポップスが台頭していた1970年代後半、新しい時代の音楽を提示したひとりが山下達郎でした。アルバム『SPACY』は、メジャーヒットこそしなかったものの、聴いたことのないようなメロディや言葉のフレーズの衝撃は忘れることができません。その山下達郎の作品で常にクレジットされていたアーティストが吉田美奈子でした。『IT'S A POPPIN' TIME』に収録されている「時よ」を聴いた時に一瞬で心を持っていかれたのですが、その曲が吉田美奈子の作詞・作曲によるものだったのです。



「時よ」はかなり重めの大人の恋の歌であり、歌詞だけ読むとまるで演歌のような情念を持っています。しかし 3拍子のワルツと美しいファルセット、上品で丁寧なアレンジで、都会的な世界観を見事に作り出しています。一般的にはあまり知られていない「時よ」ですが、ぜひこの機会に聴いてみてください。

いかがでしたか?このほかにも大橋純子&美乃家セントラル・ステイションの「シンプルラブ」や、尾崎亜美の「冥想」など素晴らしい曲がたくさんあります。紹介できなかった曲もプレイリストにしてるので、是非聴いてみてください。



オススメプレイリスト



山本雅美
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