ラストアルバム『WEAVER』は、未来に続く永遠のアーカイブ

ラストアルバム『WEAVER』は、未来に続く永遠のアーカイブ
邦楽
総合
インタビュー

森朋之

2022-11-08

WEAVERからラストアルバム『WEAVER』が届けられた。

デビュー記念日の10月21日にリリースされた本作には、先行配信曲「On Your Side」「33番線」などを収録。ジャンルを超え、独創的で質の高いポップスを追求してきた3人の集大成と呼ぶべき作品に仕上がっている。

12月から1月にかけて宮城、広島、福岡、愛知でツアー「The Songs Are On Your Side」。そして2023年2月には、東京・LINE CUBE SHIBUYA(2月11日(土・祝))、兵庫・神戸国際会館こくさいホール(2月26日(日))で最後のライブを行うWEAVER。アルバム『WEAVER』の制作とライブ、そして、バンドへの思いについてメンバーの杉本雄治(Piano&Vocal)、奥野翔太(Bass&Chorus)、河邉徹(Drum&Chorus)に聞いた。

―ラストアルバム『WEAVER』、バンドの魅力とファンへの思いがしっかり刻まれた素晴らしい作品だと思います。制作がスタートした時点から、「これが最後のアルバムだ」と決めていたんですか?

杉本:そういうわけではなくて、アルバム自体は3年くらい前に作りはじめたんです。アルバムには収録してないんですが、配信限定でリリースした「CARRY ON」(2020年10月)からは、「3人が作りたい音楽をさらに突き詰めていこう」をテーマに掲げて制作を進めていきました。

―その過程のなかで、解散を決めたと。

杉本:はい。WEAVERというバンドは僕たちだけのものではなくて。これまで応援してくれたファンの方々、もちろんスタッフの方も含めて、関わってくれたすべての人に新しい音楽を届けて、ツアーもやって、感謝の気持ちを伝えたかったんですよね。これまで以上に3人の気持ちを込めたアルバムだし、後悔のない作品になったと思っていて。最後だからこそ、そういう向き合い方ができたんだと思います。

河邉:「タペストリー」「LIVE GAGA」「33番線」と新曲をリリースするごとに、自分たちが届けたいメッセージやバンドの文脈が内包されて。僕自身も、バンドとオーバーラップするような歌詞を書くようになってきたんですよ。これまでのWEAVERはどちらかと言うと、物語性が強い曲が多くて。コロナになったことや30代になったこともそうだけど、少しずつ自分たちのことを歌うようになってきたというか。解散を決めたのは制作の途中だったんですけど、バンド名を冠した『WEAVER』というタイトルとも呼応していると思います。

奥野:サウンド面、歌詞の世界観、メッセージもそうですけど、「これをやりたい」というものが詰め込めたんじゃないかなと。WEAVERはピアノトリオとしてデビューして、サポートでギタリストに入ってもらった時期もあったし、(2014年に)ロンドンに留学して、UKカルチャーを吸収したり。いろんな経験を重ねていて、やっと自分たちの発信でやりたいことを具現化できたというか。プロデューサーも入っていないし、楽曲の選考からレコーディングまで、ほとんど自分たち主導だったんですよ。ミックスはほとんど杉本がやっているし、ジャケットのアートワークも河邉がやっていて。

杉本:「タペストリー」くらいから、ミックスを自分でやるようになったんですよ。“餅は餅屋”とも思うんですけど、ミックスしてもらったものを聴いて、「もっとこうしたかったな」と思うこともあって。(自分でミックスすることで)それが100%表現できたとは思わないですけど、後悔のない音を作れたし、自分でやってよかったなと。アレンジや音作りに対する意識も変わりましたからね。

―駅と三輪車をモチーフにしたアートワークも印象的でした。

河邉:これまでほとんどの歌詞を書かせてもらってきて、そこから映像的なイメージが浮かぶこともけっこうあって。アルバムのジャケットに関しては、「33番線」を作ったときにアイデアを思い付いたんですよ。イメージに合う駅を探して、三輪車――3つの車輪がある、WEAVERのアイコンですね――を置いて撮影して。数年前から写真を撮り始めたんですけど、その経験をバンドに還元できたのもうれしかったですね。

杉本:デビューした頃から、「自分たちでやってみたら?」と言われることが多かったんですよ。それぞれができることを探してきて、少しずつスキルを身につけて。それがしっかり活かせたアルバムでもありますね、今回は。奥野もディレクターとして動いてくれて。

奥野:前作の『流星コーリング』から“バンド内ディレクター”みたいな立ち位置でやらせてもらって。メンバーとスタッフの間に立つことも意味があったと思うし、歌のディレクションだったり、スタジオやエンジニアさんの選定なども関わって。もちろんすべてやれたわけじゃないけど、そこでも役割を果たせたかなと思ってます。

―アルバムに収録されている「タペストリー」は、2010年リリースの1stアルバム『Tapestry』とつながっていて。そこはもちろん意識していたんですよね……?


河邉:そうですね。WEAVERには“紡ぐ人、織り手”という意味があって。そこから『Tapestry』(つづれ織り)というタイトルにつながって。あれから10年以上が経って、この曲のメロディを聴いたときに、このタイミングで改めて「タペストリー」という歌を作りたいと思ったんですよね。今回のアルバムは自分のなかで、“思い出”も一つのテーマになっていて。コロナでライブができなくなって、音楽を共有する機会がなくなってしまったじゃないですか。「音楽がなくても生きていける」という雰囲気もあったし……。あのときはそれでよかったかもしれないけど、5年、10年経ったときに、この2年間の空白、思い出を作れなかった時期がよくない影響を及ぼすこともあるかもしれないと思ったんですよね。思い出はすごく重要で、特にモノを作る人は、思い出に突き動かされているところもあって。「タペストリー」という曲を通して、その大切さを改めて示したかったんです。

―なるほど。デビューから10数年のなかで、メンバーのみなさん自身も大きく変化したと思います。いちばん変わったのはどんなところだと思いますか?

奥野:今回のアルバムではかなり作曲させてもらったんですが、そこは大きく変わったところですね。デビューの頃から作曲はやっていたんですよ。「杉本が書かないような曲を作ってみよう」と思っていたんですけど、だんだんと苦しくなってきて。WEAVERの核を担っていた杉本の曲に対するコンプレックスもあって、ある時期に「申し訳ないけど、曲作りから離れる」とメンバーに言ったんです。でも、ここ数年はコロナで時間が出来たこともあって、作曲やアレンジに時間を費やすことができて。「こういう曲はどう?」と具体的に提案できるようになったし、自分の曲が加わることで、バンドに化学反応を起こせたんじゃないかなと。作曲に対するコンプレックスを克服できたことも、個人的にはすごく大きいです。

杉本:いろんなことにチャレンジして少しずつ武器を増やしてきた感じがあるんですよね。さっき話したミックスもそうだし、たくさんの人との出会いの中で、いろんな気づきがあって。亀田誠治さんと一緒に制作した時のサウンドの変化だったり、ロンドン留学で出会ったアーティストからの影響――人生観、価値観が変わるような――だったり。そのたびに自分の音楽性も広がってきたと思います。

河邉:もちろん“バンドを通じて”というところが大きいんですが、好きなことの延長線上に自分の表現があって。写真やアートワークもそうだし、歌詞や小説もそうなんですよ。『流星コーリング』で(同タイトルの)アルバムと小説を同時にリリースさせてもらいましたけど、他のバンドではできないことだし、すごく誇りに思ってます。

―アルバムの終盤に収められている「Don’t look back」「HIKARI」についても聞かせてください。まず「Don’t look back」は作詞が河邉さん、作曲が奥野さん。ライブで盛り上がりそうなアッパーチューンです。

河邉:曲自体は去年の夏くらいに作ったんです。夏フェスに似合うような解放感をイメージしながら、WEAVERらしいサウンドとのバランスを取って。

ーアルバムには切ない雰囲気の曲も多いんですが、「Don’t look back」は前向きな曲になってますね。

河邉:歌詞は解散が決まってから書いたんですよ。僕にとってはWEAVERのために書く最後の歌詞だし、“楽しく”というか(笑)、ニコニコと手を振り合えるような歌にしたくて。

―“前向きな別れ”ですよね。そして「HIKARI」は、杉本さんが作詞・作曲を担当。〈あなたといた日々が明日への光〉という歌詞が心に残りました。

杉本:解散を発表した後、ファンの方からネガティブな声が聞こえてくることも多かったんですよ。こちらも覚悟していたし、(ネガティブな声があっても)当たり前だと思っているんですけど、“あなたたちと音楽が僕たちをここまで連れてきてくれた”ということを伝えたくて。そういう手紙みたいな曲がほしいと思って作ったのが、「HIKARI」なんです。コロナ禍になって、“みんなの光のおかげで僕らは輝いていられたんだな”と改めて思ったし、今まで一緒に過ごした時間が今の自分たちを作ったことはまちがいなくて。バンドが解散しても、その思いはずっと心の中にあるし、「HIKARI」が僕自身、メンバー、みなさんが前に進むきっかけになったらいいな、と。

出典元:YouTube(WEAVER)

奥野:「On Your Side」と「HIKARI」は杉本が作詞をしていて。ちょっと前から歌詞を書いてたんですけど、最初は“WEAVERの杉本”という感じの言葉が多かったんですよ。でも、この2曲は杉本自身の深いところから言葉が出ている感覚があって。違う次元のメッセージが届けられるんじゃないかなって思ってます。

河邉:アルバムの最後を飾るにふさわしい曲だと思います。歌う人自身が歌詞を書く、本人の言葉が歌になるのは、すごく価値があると思っていて。「HIKARI」の歌詞は僕には書けないし、(杉本が歌詞を書くことで)アルバムのバラエティにつながってるんですよね。

―アルバムには2作のライブDVD(Disc1「2020.10.18 WEAVER『CARRY ON』リリース記念オンラインライブ」 Disc2「2021.4.18 WEAVER 16th TOUR 2021『LIVE GAGA』@EX THEATER ROPPONGI」)も。この2本のライブに対しては、どんな思いがありますか?

奥野:いろいろ思い出しますね。オンラインライブに関しては、新しいことに挑戦している楽しさがありつつ、試行錯誤もあって。それを経て、2021年のライブではお客さんが目の前にいてくれるありがたさを実感しました。

杉本:オンラインと生のライブはやっぱり違うんですよね。オンラインは作品を作ってる感覚があって。その面白さもあるんですけど、客席に人がいるとガラッと空気が変わるんですよ。いい曲を書いて、それを思いを込めて届ける――それが原点であり、根本なんだなと改めて実感しましたね。

出典元:YouTube(WEAVER)

河邉:ライブを求めてくれている方がたくさんいることを強く感じましたね。同じ場所で音楽を共有することにはすごい価値があるし、僕らにとっても大きな喜びで。アルバムのツアー(2022年12月から2023年1月にかけて行われる「The Songs Are On Your Side」)も「やっぱりアルバムを生で届けたい」と思い、急遽、機会を作ってもらったんですよ。

―そうなんですね!そして2023年2月には、東京と兵庫でラストライブが行われます。

杉本:これまでのライブは未来の話をする場所でもあったんですけど、ラストライブではそれができない。解散を受け止められない方も多いと思いますが、2月のライブでは、「WEAVERの音楽を聴けてよかった。このバンドに出会えてよかった。」と思ってもらえる演奏をしたいし、最後は笑顔で終わりたいと思ってます。

奥野:解散を発表してから、SNSなどを通して発信してきましたが、言葉だけでは限界があって。“精一杯、音楽を鳴らすことで、自分たちの思いを受け取ってもらえるはずだ”と信じているし、最後のライブではすべての思いを込めて演奏するしかないなと。

河邉:ライブはその瞬間だけものだし、終われば消え去ってしまう。でも、そこで共有した思い出は、5年後、10年後も残っていると思って。感動や思い出を残せるようにしっかり準備して臨みたいです。

―アルバム『WEAVER』を作り上げたこと自体、WEAVERが存在した意義に直結していると思います。ここまでバンドを続けてきて、独創的な音楽を追求できたのはどうしてだと思いますか?

奥野:ちょっとライトな言い方かもしれないけど、優柔不断の極みみたいなバンドだと思うんですよ(笑)。

杉本:ハハハ(笑)。

奥野:(笑)「俺たちはロックしかやらないぜ」みたいな感じはまったくなかったし、「何がやりたいの?」と言われることもあって。「WEAVERらしさって何だろう?」と考えながら、いろいろとチャレンジして、「これは違う」「これはいいね」という感じで少しずつため込んで。その結果、『WEAVER』のようなバラエティに富んだアルバムにつながったんじゃないかなと。

―優柔不断が個性につながったのかも。

杉本:反骨心もあったと思います。いろんな方に「こうしたらいいのに」みたいなことを言われ続けたし、「だったら全部自分たちのモノにしてやる」という姿勢で挑んできて。今回のアルバムもそうですけど、ジャンルに捉われず、自分たちのポップスに変換できるようになったんじゃないかなと。

河邉:“自分たちの作品が好き”というのも、モチベーションにつながっていたと思います。制作中の苦しみはもちろんあるんですけど、出来上がったらすべて忘れるし(笑)、「めちゃいいよ!みんな聴いて!」って思う。それが原動力になっていた気がしますね。

―解散後もWEAVERの音楽は残ります。この先、WEAVERの楽曲に初めて触れる人がいると思うと、ワクワクします。

奥野:そうなってくれたらうれしいですね。音楽性やサウンドは変化してきましたけど、“歌を大事にする”という根本は変わってなくて。WEAVERが紡ぎ出す物語に入ってもらって、日常の苦しさやつらさを乗り越えるきっかけにしてもらえたらなと。今回のアルバムもそうですけど、エバーグリーンというか、いつ聴いても共感してもらえると思います。

河邉:僕自身は言葉の表現の可能性を信じているし、これからWEAVERを知った方は、リアルタイムで聴いてきた方とは違う受け取り方をしてくれるんじゃないかなと。できればバンドの背景、どんな時期に作られたのかを知ったうえで聴いてもらえると、さらにいろんなことを感じられると思います。

杉本:僕らはCDを聴いてきた世代だし、デビューした頃もまだCDが売れていた時期で。アルバム『WEAVER』も、導入のトラック(「on the rail(seeing the scenery)」)と出口のトラック(「on the rail (arriving at the terminal) 」)があって、全体を通してストーリーを描いていて。どの楽曲で出会ってくれるかはわからないけど、ぜひ、アルバムの物語も感じてもらいたいですね。


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