WEAVER、果てなき行方

WEAVER、果てなき行方
内田正樹
内田正樹

デビュー5周年!現在ロンドンに留学中のWEAVERが6月11日にベストアルバム『ID』をリリースする。これまでの代表曲や未発表曲「Hope~果てしない旅路へ~」を含む全16曲には、彼らが音楽に、リスナーに、真摯に向き合ってきたヒストリーが凝縮されている。 ――6月ベストアルバム『ID』をリリースします。10月にデビュー5周年を迎えますが、これまでの活動を振り返ると? 杉本:例えば、いま現在自分が立っている状況を見ると、正直、デビューした頃に描いていた理想に追いつけていない部分もあって。でもそれが音楽の醍醐味であり、バンドの醍醐味なのだと思います。そしてたくさんの人が支えてくれたお蔭で、自分たちだけでは生み出せない音楽を、みんなで一緒に作ってきたんだということにもあらためて気付かされました。 奥野:僕らはこれまでとても恵まれた環境で音楽をやってこられた。その中で守られてきた部分もたくさんあったと思う。でもいまロンドンでは周りにスタッフもいなくて、すべて自分たちでまかなっている。機材の発送やスタジオの予約ひとつでも苦労するし、良い環境とは言い難いスタジオだってある。でもそういう状況でこそ生まれるものや、破れる殻があると僕らは信じていて。 河邉:海外に住んで、少しだけWEAVERや日本の音楽シーンについて客観的になれた自分がいます。ベストアルバムの選曲のために、あらためて自分たちの曲を並べてみると、後悔という言葉は良くないですけど「ああ、ここはこうしたらよかったのかな?」と思うところもたくさんあったんです。でも、そういう想いも含めてバンドの歴史じゃないですか。だからこの『ID』は、そうやって迷って、悩んで、でも皆さんと真剣に音楽を作ってこられたWEAVERの5年間すべてを伝えられる作品になったらいいなと思って作りました。 ――収録されている楽曲はどれも大事な曲だと思います。強いて思い出のある一曲をあげると? 奥野:一曲ってなると難しいですが、強いて選ぶとしたら『66番目の汽車に乗って』ですね。この曲は僕達が高校三年生の時に、はじめてお金を出し合ってレコーディングした自主制作CDで友達に手渡しで売ったり、ライブで披露して喜んでもらったり「音楽って楽しいな」と思えたWEAVERの原点になった曲です。 河邉:思い出の一曲となると『Hard to say I love you〜言い出せなくて〜』ですかね。この曲はドラマのタイアップでもあったのでより多くの人に届ける為のサウンドを亀田誠治さんと一緒に作った事で大きな経験となりました。 杉本:去年リリースした『夢じゃないこの世界』なんですが、デビューしてから初めてといっていいくらい自分達の武器だったり自分達の思っているものを素直に自信をもって出せた曲だと感じています。 ――『ID』には先行シングルとなった新曲「こっちを向いてよ」も収録されていますね。 杉本:映画『百瀬、こっちを向いて』から主題歌のオファーをいただいて書きました。脚本も読んで、撮影現場にも行かせていただいて、そこでインスピレーションを受けました。物語から自分たちが学生時代に抱いていた切なさや、初恋の時に抱いていたもどかしさとリンクするものを感じたので、それを思い返しながら作っていきました。 ――5年間という時間の中で遂げた、具体的な成長や変化というのは? 杉本:デビューした頃は、どうしても自分たちが楽しむ為の音楽という、狭い領域でしか作れていなかった気がします。でも自分たちの音楽を受け止めてくれるたくさんの人を目の当たりにして、音楽というものは、リスナーや世界中の人たちと自分が繋がることのできる、とても素晴らしいものなんだなと気付いていきました。『ID』では、そうした想いが年を追う毎にどんどん大きくなって、純粋に曲へと反映されていった過程を感じてもらえるんじゃないかと思います。 奥野:そもそも僕らは、誰かの背中を押す曲や「音楽があって良かった」と、僕らもリスナーも思えるような曲を書くことに憧れてバンドを始めました。そういう想いがだんだんクリアに、洗練されていったという感覚はありますね。 河邉:だからこそ一方で、「誰かの為の音楽になり過ぎてはいないか?」と悩んだ時期もあったのだと思います。なかなかひとつの答えを見つけ出すのは難しいですからね。 ――WEAVERってすごく欲張りなバンドだなって思うんですね(笑)。旋律はものすごくキレイで、心から人を感動させたいと願っていて、それぞれの中で音楽とは絶対に美しいものであってほしいという理想もすごく高い。タフになりたいけど、でも繊細さは絶対に失いたくない。ものすごくハードル設定が高いバンドなんじゃないかって。 杉本:まったくその通りです(笑)。だからこそバランスっていうのがすごく重要で、そこはこの5年間における迷いのひとつでしたね。その中で、音楽は人に伝わった時にこそ、初めて音楽になるというか、伝わらなかったらそれはただのノイズなんだ、と言い切れるまでの感覚が、自分の中に生まれてきましたね。 奥野:「この曲で救われました」といった声が届くのは、自分たちにとってすごくモチベーションになるし、そこから新しい曲も生まれていく。だからリスナー有りきの楽曲制作というスタイルは、僕らのようなバンドには向いているんだと思います。 河邉:『ID』って、実はきちんと筋が一本通ったベストアルバムだと思います。悩んで迷ってきたけれど、全ての曲は僕ら三人が一生懸命奏でてきたもの。それを世界中の人が聴いて、何をどう感じてくれるのか、とても楽しみです。僕らはこれからどんどん姿を変えて、自分たちの理想を追いかけていきます。そういった流れを一緒に感じてもらえたら嬉しいですね。 6月から日本だけでなく、KKBOXサービス全地域で配信されるWEAVER。音楽があればどんな人ともつながれる、そう感じている彼らが音で扉を開くのなら、それは世界のリスナーの望みでもあるだろう。その出会いによって生まれる今後の変化にも注目していきたい。

内田正樹
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