長屋晴子(緑黄色社会)にとっての「至福なオフ」

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山本雅美

ミュージシャンの「オン」と「オフ」を覗く連載「至福なオフ」。「オン」のモードで作り上げた作品についてはもちろん、休みの日に聴いている音楽や私服のこだわりなど、「オフ」のことも伺います。今回のゲストは、透明かつ力強い歌声と、個性・ルーツの異なるメンバー全員が作曲に携わることにより生まれる楽曲のカラーバリエーション、ポップセンスで同世代の支持を多く集める緑黄色社会の長屋晴子さんです。2月19日にリリースされた「Shout Baby」(読売テレビ・日本テレビ系アニメ「僕のヒーローアカデミア」第4期第2クールエンディングテーマ)のことや、長屋さんのオフやファッションについてもお聞きしました。




(写真:にしゆきみ )


オフの日には何してる?

—長屋さんは音楽活動以外の時間をどうやって過ごすことが好きですか。

長屋:周りのみなさんが思っているイメージと違うかもしれないですが、何もしていないですね。というより“何もしない”のをするのが好きです。

—SNSなどで長屋さんを見ていると、いつもキラキラ時間を過ごしているのかなと思っていました。

長屋:人に会いたいという感情も100%にならないと行動に出せないタイプなんです。寂しいなと思っても「まぁいいや」で終わらせてしまったり。小さい頃から自分で新しい行動を起こすことが苦手だったんです。小中学校の頃って、失敗すると友達から笑われたりするじゃないですか。それがすごく嫌でした。理科の実験とかでも火を付けたりする重要な役割ではなく、誰にも迷惑をかけない最後の後片付けが良かったんです。責任を負わされるのが嫌だったので、行動に移すまで時間がかかっていました。

—意外です。音楽活動を始めたりする中で、変化はありましたか。

長屋:大人になって失敗を笑う人がいないと気がついたんです。笑ったとしても、愛情だったり冗談だったり、失敗をどうやってクリアしていくかを一緒に考えてくれているんだなと感じています。そんな大人の人が周囲にいるので、失敗することも少しずつ怖くなくなっている気がします。私のネガティブ思考も少しはクリアになってきて、これまでの億劫な自分を変えていきたいなと思っています。


—何か能動的な行動をするようになったことはありますか。

長屋:なるべく人に会うという、すごく微かな目標を立てています(笑)。まだ両手の数ぐらいでしかないんですが、自分にとっては画期的なことです。人に会うまでの時間っていまでも苦手ですけど、会えば楽しいと理解できるようになったし、誰かの話を聞いて違う経験ができたような気もするし。発見が多くなりましたね。

—それは良かったです。長屋さんの行動に移すレベルのパーセンテージを少し低くしていけば違う世界も見えてきそうですね。
—それでは、いま1日オフがあったら、誰とどんな過ごし方をしてみたいですか?

長屋:小さい頃から動物に囲まれた家庭だったし、地元の南知多ビーチランドの水族館によく行っていたりしたので、母親と一緒に動物園や水族館に行きたいですね。


どういうファッションが好き?

—SNSでもいろんなファッションの長屋さんを見ますが、ファッションに興味をもったのはいつ頃ですか?

長屋:初めて自分で服を買ったのが中学生の時です。当時サーフ系みたいなファッションが流行っていたんですけど、自分には似合わないだろうなというのもありながら、友達とは違うものを着たいという気持ちがありました。

—長屋さんのファッションに対するこだわりの基準は何でしょう。

長屋:ちょっとした違和感が好きです。音楽もファッションも個性的過ぎず、だけど型にはまっていないというものを好む傾向があります。着る服によって、性格が変わるまではいかないまでも、その日の気分って変わるじゃないですか。だから会う人や、用事の内容によってコーディネーションを変えることが多いです。

—今日のTシャツは「馬」のデザインですね。

長屋:動物モチーフのデザインがあると買ってしまいます。デフォルメされたデザインとかではなく、よく見たら動物がいたくらいのさらっとした感じが好きです。


—長屋さんのSNSを注意深く見ていたら、いろんな動物に会えるかもですね。

長屋:そうですね。それで、どんな気分なのかわかるかもしれないですね(笑)。

—服選びには時間をかける方ですか。

長屋:前日にファッションショーをします(笑)。

—ひょっとして家を出てから、ちょっと違うから着替えに戻るタイプとか?

長屋:あります、あります(笑)。靴も履き替えに戻ったり。服の色も、暖色、寒色問わず、ほぼ全色あるんじゃないかというぐらいあるので、結構何を着るか考えてしまう方です。周りの人はまったく気にしていないと思うんですけどね。


—今日のコーディネーションは単色で落ち着いた感じですね。どちらで買ったものでしょう。

長屋:ジャケットとパンツは〈ENFÖLD〉で、馬のデザインのTシャツは〈I sam I〉
です。帽子はたくさん持っているんですけど、これは仙台のライブの時に見つけたお店で一目惚れして買いました。色味が好きです。


オフの時に聴いている音楽

—今日は「オフに聴きたい音楽」ということで選曲してもらいましたが、ザ・フラテリスが2曲選曲されています。

長屋:洋楽は簡単に歌えないのであまり聴かないんですけど、ザ・フラテリスはどこかで耳にして、気に入ったのでアルバムをよく聴いています。音数が多くないのも好きです。何を聴くか困った時は、取りあえずザ・フラテリスを流してますね。

—YUKI、椎名林檎、安藤裕子など女性ボーカルの曲も多いですね。

長屋:みなさん芯があって、カッコいいんです。私はまだ自分があるようでも、すぐブレてしまうんです。みなさんの生き方とか人となりに憧れます。

—今回選曲してもらったプレイリストは、どの曲も休日に聴くとワクワクするような高揚感があるなと感じました。



長屋:そうなんですが、部屋にいる時は基本的に無音なんです。その無音の中で歌っていますね。聴くより歌いたいんです。形のない自分の曲を歌うこともあれば、好きな曲を歌っていることもあります。それで少し寂しいなと思ったら音楽を流すぐらいです。

—長屋さんの部屋ではいつも生歌が響いているんですね。でも、新しい音楽を見つけたりするにはどうしているんですか。

長屋:新しいものが苦手なので、やっぱり新しい音楽にもバリアがあるんだと思います。
その中でもふとしたきっかけで聴いた音楽を自分のアンテナで捉えることはあります。探しにいくというより、一期一会な感じで出会った音楽が、自分にとって大事な音楽になっているんじゃないかと思います。


ニューシングル「Shout Baby」について

出典元:YouTube(緑黄色社会)

—「sabotage」がドラマ「G線上のあなたと私」主題歌となって、いままで緑黄色社会を知らなかった人たちにも音楽に触れてもらうことが多くなったと思います。最近のご自身の感覚としてはいかがですか?

長屋: これまで出会うことがなかった人たちとドラマがきっかけで出会い、緑黄色社会を知ってくれたのが嬉しいです。それがきっかけでライブに来てくださる人も増えましたね。

—そして新曲の「Shout Baby」が、人気アニメ「僕のヒーローアカデミア」第4期第2クールのエンディングテーマということで、子供たちからも「リョクシャカ」と言われそうですね。アニメの世界観に寄った曲なのかなという気持ちで聴いたら、想像を掻き立てられる言葉が多く、とても奥深い曲になっていることに驚きました。

長屋:もともと曲自体の原型みたいなものはあったんです。そこにタイアップのお話を頂いて、自分なりにアニメの世界観を含めて作っていきました。いろんな人の思考や場面に当てはめて聴いてもらえるような楽曲にしたかったんです。

—そして「内緒にしていてね」というキーワードが、より物語を多角的にしていると感じました。「Shout Baby」に登場する二人の関係性がとても気になります。

長屋:もちろん自分の中でこのストーリーに結論はあるんですけど、その答え合わせをしてしまうとつまらなくなってしまうんじゃないかなと思うんです。あくまで皆さんの感じるように聴いてもらいたいなと思います。


「内緒にしていてね」という言葉は、私の中でもキーワードだと思っています。「Shout Baby」の大きなテーマとして夢とか理想とかがあるんですけど、それを諦めたり、諦めさせられたりする様子みたいなものを描きたかったんです。それをどうやって描くかを考えて使った言葉が「内緒にしていてね」というワードでした。

—諦めるというネガティブな要素がスピード感のあるダイナミックなサウンドに乗って歌われると、言葉と音の良い意味でのギャップがあって気持ち良かったです。

長屋:ありがとうございます。ギャップを狙っているわけではなく、自ずとそうなっていくというのが一番近いのかもしれません。と言うのも、私はネガティブな言葉や思考で歌詞を書くことが多いんですけど、プラスな言葉や思考よりマイナス的な部分こそ、すごいエネルギーを持っている気がしているんです。

—「Shout Baby」はまさにそんな感じで、物語の主人公である女の子が新しい世界に向かう潔さを感じることができました。

長屋:私が音楽を聴いて、力をもらえる曲ってだいたい悲しい曲だったりするんです。同じようにネガティブな気持ちになって、そこからまたスタートしていく方が、私は強くなれることができました。だから自分もそうなりたいなと思っています。

—カップリングはamazarashi「空に歌えば」のカバーです。とても個性的な言葉とサウンド構成のamazarashiの曲を歌われてみて、なにか気づきや発見はありましたか?

長屋:これまでの「僕のヒーローアカデミア」のテーマ曲をカバーしたら面白いかもというお話から始まったんですけど、amazarashiさんの曲を歌うことで化学反応みたいなものが起きるんじゃないかなって思いました。なにより私が男性ボーカルの曲を歌ってみたかったということと、amazarashiさんの独特な世界観を私が歌ったらどうなるのだろうというメンバーの興味みたいなものがあって総意で決まりました。



私が書かないような言葉選び、メロディラインなどすべてが新鮮でした。メンバーも「こういうところが良かったね」とか、「こういうパートをやってみたくなった」と言っていました。自分たちの曲を作っているとわからなくなる時もあるんですけど、カバーをしてみることでメンバー全員に気づきがあった気がします。

—緑黄色社会というおうちを出てみて、緑黄色社会の再確認もできたとう感じですか?

長屋:そうです。それでまた緑黄色社会のおうちへ持ち帰って、自分たちの良さを生かせる作品作りをしていきたいと思っています。

—今回のシングルは「Shout Baby」と「空に歌えば」で、ふたつの緑黄色社会を感じることができる贅沢なシングルになっている気がします。最後にお聞きしたいのですが、長屋さんが描く女性は様々な感受性を持っています。創作された女性たちによって長屋さん自身のパーソナリティが変わったりするという感覚はありますか?

長屋:レコーディングやライブではなりきっているというのに近いですが、普段の自分が影響されているということは無いと思います。でも、全部が私から出ている言葉なので、もともと私の中に潜んでいるものなんですよね。かけ離れてもいないし、近くもないといういい距離感なのかなと思っています。


プロフィール

愛知県出身・在住4人組バンド。 愛称は“リョクシャカ”。 高校の同級生(長屋・小林・peppe)と小林と幼馴染の穴見によって 2012年結成。 2013年、10代ロックフェス「閃光ライオット」 準優勝獲得。その後3枚の自主制作CDを販売するなど活動を本格化。 2017年1月、初の全国流通盤「Nice To Meet You??」をタワー レコード限定でリリース、同作品がタワレコメンに選出され、この 年に選ばれたタワレコメン作品の中で売上1位となる。2017年8月、 2nd Mini Album「ADORE」リリース。収録曲「始まりの歌」がSPACE SHOWER TV「POWER PUSH!」を獲得。2018年3月、1st Full Album「緑黄色社会」をリリースし、オリコンインディリーチャート2位。この頃から各地大型音楽フェスへの出演も果たし、 2018年11月、Epic Records Japanより3rd Mini Album 「溢れた水の行方」をリリース、各メディアにてその存在を取り上げられ、その後開催されたワンマンツアー「溢れた音の行方」は各地 ソールドアウトとなる。2019年8月に映画『初恋ロスタイム』 主題歌「想い人」、11月にTBS系火曜ドラマ 『G線上のあなたと私』主題歌「sabotage」をリリース。2020年2月、TVアニメ「僕のヒーローアカデミア」第4期第2クール・エンディングテーマ「Shout Baby」をリリース。長屋晴子の透明かつ力強い歌声と、個性・ルーツの異なるメンバー全員が作曲に携わることにより生まれる楽曲のカラーバリエーション、ポップセンスにより、同世代の支持を多く集める。




山本雅美

ainone合同会社 代表/プロデューサー ビクターエンタテインメント/A-Sketch/KKBOX Japanで幅広く音楽ビジネスを担当、現在は音楽専門インターネットラジオのプロデューサーのほか、多摩川沿いの街で音楽フェスなどを開催。また写真家として国内・海外でのエキシビションに出展。

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