30分で「世界を変えるのさ」

「思い通りに世界を変える」だなんて、大言壮語もいいとこだ。今のご時世、そんなことを言ったら周りから笑われてしまうだろう。それを高らかに宣言してしまうのが9mm Parabellum Bulletというロックバンドだ。「革命」を意味するアルバムの表題曲で彼らは、「世界を変えるのさ おれたちの思いどおりに」と歌う。そんな言葉も、彼らが歌うとなんだか現実味を帯びて聴こえる。私たちが言いたくても言えない色んなモヤモヤをバンドサウンドに乗せて代弁してくれる、それが9mmであり、その完成形であると言って過言ではないのがこのアルバムだ。全曲聴いても30分強という、フルアルバムとしては短すぎるこの作品はそれでも、9mmが「革命」を起こすには十分な長さである。 まさに怒涛の30分。たった49秒で「今世紀最大のドラマ」を叫ぶ「Lovecall From The World」に始まり、三三七拍子のリフが印象的な「Cold Edge」、最早ライブ定番曲の「Black Market Blues」など前半だけでも盛り沢山だが、特筆すべきは後半のロマンティックな流れだ。「光の雨が降る夜に」アウトロのツインギターの美しさは他に類を見ない。「キャンドルの灯を」は9mm史上最も「洒落た」曲ではないだろうか。また、9mmの曲特有のメロディの美しさを最も堪能できるのは「Finder」だろう。そして、このドラマティックなアルバムの最後にやってくるのが、冒頭で紹介した「The Revolutionary」だ。ここで9mmはようやく「長い夜が明けた」と歌う。ここまで来ればもう疑う余地は無い。彼らの革命は大言壮語なんかじゃない、このアルバム自体が文字通り彼らの「革命」なのだ。 9mmは「Revolutionary」以降に2枚のフルアルバムをリリースしている。加えて9周年のアニバーサリーを迎えた今年は特に多くのライブ活動も行っているが、その中でもこのアルバムに収録された10曲は全く褪せることがない。ある時はライブハウスで、ある時は野外フェスで、ある時はアコースティックで(!)。9mmの革命はまだまだ続く。 つらつらと語っては来たが、何せ全部聴いてもたったの30分だ。説明するより、聴いた方が早い。「今世紀最大のドラマ」が始まった30分後、おそらく世界は少しだけ変わっている。是非その耳で、彼らの革命を確認してほしい。(小島 沙耶)