ジャケット・デザインの世界 第5回:アンディ・ウォーホル

ジャケット・デザインの世界 第5回:アンディ・ウォーホル
永見浩之
永見浩之
アンディ・ウォーホルはアメリカ・ペンシルバニア州出身、1928年生まれ。銀髪をトレードマークとし、ロックバンドのプロデュースや映画制作なども手掛けたマルチ・アーティスト、日本のTVCMにも出たことがあるぐらい有名なポップアートの第一人者です。近年ユニクロで彼のデザインのシリーズが販売されていたので、Tシャツとして彼の作品を見たことがあるかもしれません。1987年没、58歳でした。 彼が手がけたレコードジャケットを並べてみると大きく3つの作風に分けられます。 ・初期のブロッテド・ライン(しみつきの線)と呼ばれるイラストレーション主体のもの。 ・有名なピーリング・バナナやリアルなジッパーといった仕掛けもの。 ・70年代以降のシルクスクリーンを使ったポップでカラフルなポートレイトもの。 僕らが持っているいわゆるウォーホルのイメージは、シルクスクリーンにカラフルな処理を施した70年代中期からのポートレイト作品であろう。その手法をファインアートでもレコードジャケットでも量産している。制作費を定額にした注文システムでセレブの間で流行したようだ。 もともと彼がポップアートのアイコンと言える「キャンベルのスープ缶」(1962年)で表した大量生産、大量消費社会に拍車をかけるような、ある種露悪的なアティチュードはもしかしたら、マスで消費されるロックレコードのカヴァー制作という商業的行為にものすごくマッチしてたのかもしれませんね。
Monk / Thelonious Monk 1954
ブルーノートを意識したような大胆なタイポグラフィに、彼の特徴ある彼の文字がちょっとだけあつらえてある、という、まだウォーホールらしさは全開ではない。プレスティッジから出たモンクには珍しい、ふたつのクインテットによるセッションを収録した作品。モンクっぽい朴訥なピアノも楽しい。
Blue Lights / Kenny Burrell 1958
ケニー・バレルはブルースフィーリング溢れるプレイで人気を博した。代表作はこれと『Midnight Blue』でしょう。ただジャケットの点で言えば、いかにもブルーノート的な冷たいデザインの『Midnight Blue』よりもこのウォーホールの描く女性の柔らかいタッチの勝ちではないでしょうか。
The Congregation / Johnny Griffin 1958
ジョニー・グリフィンの『Little Giant』もストレートな迫力のあるジャケットだけど、粋な感じでいうとこれには敵わない。ブルーノートでもこれだけカラッと明るいジャケは珍しいんじゃないかな。その割にタイトルである『The Congregation』は宗教的な集会を意味していて、そう思って聴くと深みのあるプレイだ。
The Velvet Underground & Nico 1966
彼の手がけたジャケでは一番有名なものでしょう。ここではジャケだけではなく、バンドのプロデュースもやっており、自分の作品という感覚も持っていたと思われます。シルクスクリーンで描かれたバナナはシールになっていて、「そっと剥がして、見てね」という指示通りに剥がすとバナナの果肉が現れるという仕掛け。
White Light/White Heat / The Velvet Underground 1968
彼らのセカンド。ファーストが思うように売れなかったこともあり、ウォーホールとバンドとの関係は悪化してたようです。真っ黒なジャケットにアルバムタイトルとVerveのロゴとバンド名。この黒いジャケットデザインにウォーホールはクレジットはされていませんが、彼のアイデアだそうです。
Sticky Fingers / The Rolling Stones 1971
ローリング・ストーンズが自分たちのレーベルを作った初のアルバム。ジッパージャケとは相当気合いが入っていたんでしょう。ラフなロックンロールとこの古びたジーンズの相性の良さ。バナナとジッパー、セクシュアルな面でつながりますね。
Love You Live / The Rolling Stones 1977
1975年夏の北米ツアー、1976年のヨーロッパ・ツアー、1977年のトロント公演が収録された彼らの3作目になる公式ライヴ・アルバム。自分の手をガブリとかむミック・ジャガーはスーパービッググループになっても、まだ若さを捨ててないイラつきや反骨精神を表現しているのでしょうか。
Emotions In Motion / Billy Squier 1982
売れなかった元ザ・パイパーのリーダーだったビリー・スクワイア。ソロになって、ルックスの良さも幸いしてMTV時代に大ヒット。タイトル曲「Emotions in Motion」はフレディ・マーキュリーやロジャー・テイラーも参加してクイーンぽい出来です。
Silk Electric / Diana Ross 1982
ダイアナ・ロスによる見返り美人といった体。80年代らしい派手な音作りが楽しい。ちなみにA面1曲目の「Muscles」のプロデュースはマイケル・ジャクソンです。
Soul Vacation / ラッツ&スター 1983
シャネルズからラッツ&スターへ名前が変わって最初のアルバム。大瀧詠一がプロデュースを担当し、アート・ワークはアンディー・ウォーホルという超豪華なアルバム。SOUL、DISCO色の強いものへとサウンドも変わっている。
Aretha / Aretha Franklin 1986
ウォーホル晩年の作品。元マハビシュヌ・オーケストラのナラダ・マイケル・ウォルデンがプロデュースしたファンキーな音。日本題にもなった『ジャンピング・ジャック・フラッシュ』はキース・リチャードのプロデュース。ジョージ・マイケルとデュエットした「愛のおとずれ」が、シングル・カットされて全米・全英1位を獲得した。
永見浩之
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