私にジャズのこと教えてください!:ユニバーサル ミュージック編

私にジャズのこと教えてください!:ユニバーサル ミュージック編
KKBOX編集室
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今年は「ジャズ100周年」ということもあり、KKBOXのプレイリストやCDショップの店頭でもジャズがいつもよりプッシュされています。でも、ジャズやクラシックってちょっと敷居が高いというか、ある程度聴きこまないとダメな感じがしてどうも突付きにくさもあったりしますよね。そこで、女子大生のSakiちゃんと一緒に、ジャズに一番力を入れているレコード会社、「ユニバーサル ミュージック」にお邪魔して、ジャズに関していろいろ聞いてきました!
初めてのレコード会社
▼青山一丁目にあるユニバーサル ミュージック「CLASSIC & JAZZ」のフロア。手前には上原ひろみのポスター、下にはたくさんのCDが並んでいます。
▼部屋の入口でユニバーサル ジャズの五十貝さんにご挨拶。ノラ・ジョーンズ、上原ひろみにビートルズのポスターも。 まず、今回登場するお二人についてです。 <五十貝さん> 2004年入社。大阪営業所勤務を経て2005年からユニバーサル インターナショナル宣伝本部へ異動。ラジオ、CS、雑誌、webなどの宣伝業務を担当し、2008年~ユニバーサル クラシックス&ジャズで制作業務を担当。 <JD Sakiちゃん> 小さい頃からピアノやギターに親しみ、ライブやフェスも大好きな大学2年生。愛機はギブソンSGギター。
ジャズのいろいろを聞きました。
今回ユニバーサル ミュージックの五十貝さんにジャズについてお伺いすることになりました。大学時代、アナウンス研究会所属だったらしくFMの番組を聴いているような美声の持ち主です。では、Sakiちゃんからのインタビューです。
Saki:まずはジャズの歴史を簡単に教えてください。 五十貝:今年、ジャズという音楽が100周年と言っています。ジャズの源泉になった音楽からたどれば、百十数年だったり諸説ありますが、オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドというニューオリンズのバンドがいて、初めて「ジャズ」という言葉を含んだレコーディングがされて、ちょうど100周年なんですね。
▼右下、たしかに「1917-1921」と書いてあります。
五十貝:ジャズの歴史を簡単にまとめて話すと、アメリカにニューオリンズという、フランスが統治していた南部の港町があって、そこにはヨーロッパから来てカントリーミュージックを演奏していた人や、奴隷として連れてこられたアフリカ人がブルースを演奏していたり、そんな人たちが混ざり合って誕生したのがジャズという音楽。ニューオリンズがジャズで一番有名な場所かというと、ニューヨーク、ロサンゼルスやシカゴだったりもするのですが、このニューオリンズは第一次世界大戦で軍港になり、ミュージシャンはニューヨークやシカゴに移動して行くんですよね。そして各地でレコードやラジオが発達してジャズが聴かれるようになっていったんです。で、だんだん流行ってくると今度は「ジャズで踊ろう!」という動きになって、当時のクラブミュージックなんですが、みんなでダンスホールに行って、有名なカウント・ベイシーやベニー・グッドマンなどの10数人編成のビッグバンドで踊る時代になります。そうこうしているうちに第二次世界大戦になり、ミュージシャン達も兵役があったりで大人数で出来なくなり、50年代以降のチャーリー・パーカーやマイルス・デイヴィスなどの小編成のグループが登場するようになったんです。今、日本で「ジャズ」というとこの頃の「モダン・ジャズ」を一般的に指しています。
60年代以降はビートルズが出て来てポップス全盛の時代となり、ジャズのミュージシャンは演奏が上手いので、それらのヒットソングを演奏するようになってエレクトリックな「フュージョン」が70年代に出てくる。で、今度はまた80年代になると、「ジャズをもう一度蘇らせよう」という動きが出てきたり。で、今度は僕らの世代になると、ヒップホップも聴いて育ったりしてジャズというより、ブラックミュージック全体でとらえるような動きも生まれたりしています。 ユニバーサル ミュージックは、ジャズの名門と言われているレーベルをたくさん持っていて、今の若い人は「レーベルで音楽を聴く」という発想はあまりないと思うのですが、50〜60年代のモダン・ジャズ全盛期にはレーベルごとにいろんなカラーを打ち出していました。その中で一番古いジャズ専門レーベルが「ブルーノート」。当時はマイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーンなどが有名でしたが、僕らの世代ではノラ・ジョーンズやロバート・グラスパーなどの新しい音楽も出し続けています。他にも「リバーサイド」や「インパルス」などのレーベルがありますが、今でも出し続けているという意味では、「ブルーノート」「ヴァーヴ」「ECM」ですね。 Saki:そのレーベルの特徴って何かあるのですか? 五十貝:大ざっぱにいうと、まずブルーノートは、良い曲をたくさん書かせ、名曲をたくさん産んだレーベル。ヴァーブはMGM傘下でジャズの興行からスタートしたレーベル。名演をたくさん産みました。ECMは、「静寂の次に美しい音」というキャッチコピーがあって代表的なアーティストはキース・ジャレットです。 Saki:私、アニメ「坂道のアポロン」は見てサントラも買っちゃいました。
五十貝:まさにこのアニメの中に、ブルーノートのジャケットがたくさん出て来ますね。
Saki:ノラ・ジョーンズは、初めから有名だったんですか? 五十貝:ノラ・ジョーンズは最初からいきなり売れたのではなくて、じわじわと評判が高まって、グラミー賞の主要部門を総ナメにしてブルーノート久々の大ヒットとなったんです。僕が大学2年生の頃かな。み〜んなノラ・ジョーンズ聴いてて。これを聴くのがおしゃれというか、聴かないとおしゃれじゃないというか、今でいうテイラー・スウィフトとかなのかな。でもその頃、Sakiちゃんは3、4歳でしょ?それでもノラ・ジョーンズは聴くんですか? Saki:今は周りもみんな聴いています。ジャズっていうより、ノラ・ジョーンズという感じで。 五十貝:あまりやってる人たちもジャズとは思っていなくて、新しいものが出てくると何か体系化しなきゃならなくてね。50〜60年代のジャズミュージシャンも真面目にポップミュージックを作ってる気持ちだっただろうけど、ノラ・ジョーンズも自分自身ではジャズをやっているという意識はなくて、いろんな音楽の上に自分の音楽が成り立っていると話していました。やっぱり「Don’t Know Why?」なの? Saki:ハイ! 五十貝:そうか、1枚目なんだ。 Saki:レコード会社のジャズの編成のお仕事ってどんなことをするのですか? 五十貝:僕は今13年目で、入社した頃は音楽配信もなくCDを売ることに主眼をおいていたのですが、最近はイベントやグッズなど音楽に携わるすべてに関わるようになってきています。まずはジャズを流行らせなきゃいけないなと思っています。以前、インターンに来ている学生に「ジャズの名盤を千円で売ろうかと思ってるんだけど、どう思うか?」と聞いたら「500円でも買わない」と(苦笑)。僕らが考えなきゃならないのは、若い人たちにとってジャズという音楽の価値を上げていくという仕事がテーマです。
初心者にジャズお薦めの3枚
Saki:これは聴いといたほうがいいオススメの3枚を教えていただけますか? 五十貝:いい質問ですね。年代別にわけてみるのがいいかな。では、モダン・ジャズの中から1曲を選ぶとすると、ビル・エヴァンスの「Waltz For Debby」。女性が一人で聴くのにもお薦めです。
(ビル・エヴァンスの写真を見て) Saki:アニメ「坂道のアポロン」に出てくる人に似てますね? 五十貝:そう、「坂道のアポロン」のピアノを弾いてる彼は、まさにビル・エヴァンスの風貌ですね。このアルバムはライブで、録音の一週間後にベーシストが交通事故で亡くなってしまったり奇跡のようなレコーディングなんです。 2つめは、先ほど話題になったノラ・ジョーンズのファースト・アルバム「Come Away With Me」。
最後に2010年代になりますが、ロバート・グラスパー・エクスペリメント。これはヒップホップやクラブミュージックの要素も入っていて、アルバムでは「Black Radio 2」というのがあってカッコいい曲がたくさん詰まっています。
硬派なジャズファンからすると、モダン・ジャズが少なくて怒られそうですけど。
ジャズ界注目の新人
Saki:(いただいた資料を見ながら)このキャンディス・スプリングスという人は、27歳で新人なんですか? 五十貝:彼女はプリンスが見出して、ソロデビューまで時間はかかったみたいですが、もちろんその前から音楽の活動はずっとしていました。車をいじるのが趣味らしいですよ。
Saki:ほかに誰か注目の新人はいますか? 五十貝:ユニバーサルでは、アメリカのブルーノートからデビューしたトランペッターの黒田卓也と、キーボードのBIG YUKI。あと他社ですが、WONKというバンドも今の若い人にはいいと思います。和製ロバート・グラスパー的に言われています。
ユニバーサル ジャズのオフィス探訪
なかなか潜入することが出来ないレコード会社のオフィス、どんな感じなのか入れていただきました。
▼右の写真は、もうひとつのジャズ漫画「BLUE GIANT」のポスター。
▼その「BLUE GIANT」を見ながら話が弾みます。
▼CDショップで配布している「ジャズの100枚」読本。1枚ごとに丁寧な解説が付いています。また、3枚組CDコンピ「ジャズ百貨店」も入門編として最適。
これからジャズを聴いてみよう
▼オフィスのデスクに座って記念写真。 初めてのレコード会社訪問とジャズの話、駆け足でしたがとてもわかりやすかったです。ここ最近の落語ブームはアニメ「昭和元禄落語心中」が火付け役ですが、話にも出てくる「坂道のアポロン」は、2018年に実写版で公開予定。もうひとつの「BLUE GIANT」も単行本で10冊出ています。ユニバーサル ミュージック選曲のプレイリスト「女子大生にオススメの入門ジャズ」を聴きながら、好きなアーティストを見つけてみてください!
KKBOX編集室
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