福山雅治の音楽人生、そして挑戦の今を紐解く

福山雅治の音楽人生、そして挑戦の今を紐解く
柴那典
柴那典

福山雅治のデビューから現在に至るまでの全楽曲がKKBOXにて解禁された。

19903月にシングル「追憶の雨の中」でデビューを果たした彼。その後は数々のヒット曲を世に送り出し、デビュー27年目となる今年はドラマ『黒革の手帖』主題歌のシングル「聖域」、そしてドラマ『トットちゃん!』に提供した配信限定シングル「トモエ学園」をリリース。これらの楽曲を含むすべての楽曲がKKBOXにて提供されている。

出典元:(YouTube:福山雅治 FUKUYAMA MASAHARU)

年末にはカウントダウンも含む毎年恒例のライブイベント「福山冬の大感謝祭 其の十七」をパシフィコ横浜にて開催している福山雅治。筆者は1223日に開催された男性限定ライブ「野郎夜!!4 “野郎夜は永遠に”」に訪れた。MCで福山自身も「ほんとにいい匂い」と言っていたが、1万数千人の男性が集まったフロアはまさに熱気と汗がむんむんと立ち上るような空間。10代や20代の若いファンが多かったのも印象的だ。雄叫びのような歓声が響くコールアンドレスポンス、ほぼ全員が声を張り上げて歌うシンガロングなど、男性限定ライブならではの興奮に包まれていた。

セットリストや演出の詳細は伏せるが、初期の楽曲から新曲までキャリアの中から万遍なく披露されたステージは、まさに福山の「音楽人生」を示すようなものだった。

そこで、この原稿では、改めて彼の足跡と今を紐解いてみたい。



長崎出身で、ザ・ルースターズやTHE MODSARBなど「めんたいロック」と呼ばれた九州の硬派なロックバンドに憧れて育ち、学生時代はそれらの曲をコピーしていたという福山雅治。彼らやSIONのようなシンガーソングライター、さらにそこから遡って知ったトム・ウェイツ、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ブルース・スプリングスティーンなど数々のロックスターが彼の音楽のルーツになっている。

ただ、俳優として世に頭角を現していく一方、ミュージシャンとしてのデビュー当初は「売れなかった」と本人も振り返る。そこからブレイクポイントの一つになったのが「Good Night」(92年)。スマッシュヒットを記録したこの曲を契機に花開いたのが「ポップスターとしての福山雅治」だろう。その後90年代に「HELLO」など数々のヒットソングを生み出していく。

そして、ターニングポイントとなったのが「桜坂」(00年)。このカップリングで泉谷しげる「春夏秋冬」をカバーした際に参加していたのが、大滝詠一とも関係の深い音楽プロデューサーの井上鑑。現在でも福山雅治のライブではバンドのキャプテンを務める彼は、楽曲制作やレコーディングにおいても重要なパートナーとなっている。

この「桜坂」や「家族になろうよ」など福山雅治の代表曲の多くはしっとりと染みるバラードナンバー。「ラブソングの帝王としての福山雅治」としての彼を知る人は多いだろう。

その一方で、ライブでの見せ場となるのは「ギターヒーローとしての福山雅治」。レスポールを抱えパワフルなリフやテクニカルなソロフレーズを弾きこなす姿だ。「ステージの魔物」、「HUMAN」、「GAME」、「I am a HERO」などギターが見せ場となっている曲はとても多い。アサヒスーパードライのCMにてジョニー・デップと共演した「Humbucker vs. Single-Coil」もその一つだ。

出典元:(YouTube:福山雅治 FUKUYAMA MASAHARU)

このように、デビューから27年で、ポップスターとして、ギターヒーローとして、バラードやラブソングの歌い手として着実にキャリアを重ねてきた彼。ただ、これまでの延長線上だけでなくミュージシャンとして新たな領域を開拓しようとしているのが今の福山雅治だ。今年9月にリリースした2年ぶりのシングルの表題曲「聖域」は、ジャズやスパニッシュの要素を取り入れた新境地。カントリーやブルーグラスのテイストを活かしたカップリング「jazzHepburnと君と」と共に、バンジョーの音色がポイントになっている。

音楽家として挑戦の季節を迎えている今の福山雅治。熱心なファンでなかったという人も、改めて聴いてみてほしい。



柴那典
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