じわじわ熱いミュージカル界から注目のアーティスト5選

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町田麻子

ミュージカルで活躍するアーティストたちが音楽番組に出演する機会も多くなり、いま注目が集まっています。今月のFNS歌謡祭(12月5日/12日放送)でも数多くのアーティストが出演、今後もその人気は高まるはずです。そこで今回は、2019年に主演作が控えるミュージカル・アーティストの中から、ミュージカル初心者も押さえておきたい5人のアーティストをピックアップ、演劇ライターの町田麻子さんに解説して頂きます!

石丸幹二

東京藝大に在学中だった1990年、『オペラ座の怪人』のラウル子爵役で鮮烈なデビューを果たした石丸さん。以来2007年まで劇団四季に在籍し、甘いマスクと繊細な歌声を武器に、『ウエストサイド物語』や『美女と野獣』など数々の人気作で主要な役を演じました。当時は“ミュージカル界の貴公子”といった印象でしたが、退団後は映像作品などに活躍の幅を広げることで演技の幅も広げ、現在ではアクの強い役やコミカルな役どころもこなすマルチな俳優として知られています。

出典元:YouTube(TohoChannel)
キャプション: 『ライムライト(2015)』ダイジェスト舞台映像

2019年は、そんな石丸さんの主演ミュージカルが目白押し。まず1~2月には、『オペラ座の怪人』の続編である『ラブ・ネバー・ダイ』に、当たり役だったラウル子爵の恋敵にあたるファントム役で出演します。妖しい色気が必要な役だけに、今の石丸さんにピッタリと言えるでしょう。4月の『ライムライト』は、2015年の初演時、老芸人に扮した石丸さんの枯れた演技が話題を呼んだ作品。そして9月には、初の福田雄一演出作となる『ペテン師と詐欺師』が控えます。売れっ子映像監督にして、今やミュージカルコメディの第一人者でもある福田さんのもと、また新たな石丸さんの魅力が開花するに違いありません。

井上芳雄

ミュージカル俳優がメディアで取り上げられる際、よく使われる“ミュージカル界のプリンス”というフレーズ。実際ミュージカル界には、その呼称が似合う王子然とした若手俳優が多いのですが、絶対的プリンスをひとり選べと言われたら、ミュージカルファンの多くはこの人の名を挙げるでしょう。幼い頃からミュージカル俳優を志し、東京藝大在学中の2000年に『エリザベート』のルドルフ皇太子(=プリンス)役でデビュー。すぐに人気を博し、“演劇の殿堂”と謳われる帝国劇場で主役を張れるスターへと成長を遂げました。テレビ界出身でも、また四季や宝塚などの劇団出身でもない彼の快進撃は、当時としては画期的。それゆえに、39歳になった今でもプリンスであり続けているのです。

出典元:YouTube(TohoChannel)

とは言えその地位に甘んじず、様々な役柄に果敢に挑み続けているところもまた彼の魅力のひとつ。2019年1月に上演される『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』は、トルストイの「戦争と平和」をミュージカル化していることや、観客参加型の斬新な趣向であることに加えて、プリンス井上さんが冴えないピエール役に扮することも話題の大注目作品です。

神田沙也加

わざわざ経歴を紹介する必要もないくらい、若い頃から広く一般に知られていた神田さん。映画「アナと雪の女王」の吹き替えを務めたことで、知名度のみならず実力も一流であることもまた、広く認知されるところとなりました。透明感と甘さを兼ね備えた耳心地良い歌声は、歌番組やCMを通して誰もが一度は耳にしていることでしょう。
でも彼女がミュージカル界で重宝されているのは、決して知名度と歌唱力だけが理由ではありません。演技力――わけても、コメディセンスが抜群に優れているのです。現状、日本で上演される大型ミュージカルは西洋で創られたものの翻訳版であることが多く、俳優たちは英語で書かれたジョークも日本語で成立させなければいけません。そのセンス、そして主役としての華を若くして併せ持っている女優はなかなかいないため、ミュージカル界には神田さんにやってほしい役がたくさんあるというわけです。

出典元:YouTube(TohoChannel)

その代表作が、2019年2月に再演される『キューティ・ブロンド』。原作である同名の映画を観たことがあれば、あの金髪の主人公エル・ウッズを日本人が演じることの難しさは想像がつくことと思います。そんな心配を吹っ飛ばす神田沙也加エル、必見です。

城田優

彼もまた、経歴の紹介は不要なスター。ミュージカルの舞台で活躍していることもご存知の方が多いかと思いますが、本場ブロードウェイで活躍する3人の俳優とともにコンサートを開催したほどだ、というのは意外と知られていないかもしれません。そんな話を聞いたことはあるけどそこまですごいこととは思っていなかった、という方のために、その3人が最前線で活躍する正真正銘の世界的スターであること、そして城田さんが持ち前のロマンティックな佇まいと歌声とで“日本代表”として立派にステージを務めたことを、一ミュージカルオタクとしてここで改めて保証しておきたいと思います。

出典元:YouTube(『ピピン』日本公演 公式YouTube)
キャプション:『ピピン』2015年日本公演より

そんな城田さんが次に出演するミュージカルは、1972年にブロードウェイで初演されて以来、世界各地で上演されている名作『ピピン』。日本でも何度か上演されていますが、今回は2013年にブロードウェイに登場して絶賛された、サーカスアクロバットを取り入れた演出がそのまま再現される形となります。城田さんが演じるピピン役の名曲、「コーナー・オブ・ザ・スカイ」の英語版(6月の舞台では日本語で歌われます)はKKBOXでも配信されているので、まずは一度聴いてみてはいかがでしょうか。

山崎育三郎

井上芳雄さんが切り開いた、テレビ界出身でも大きな劇団出身でもなく、いわば生粋のミュージカルっ子として主役を張れる俳優になる道。その道をひた走って見事に主演俳優になったのち、テレビ界に本格的に進出することを選び、そこで成功してミュージカル界に新たな観客を引っ張ってきた人、それが山崎さんです。間違いなく、ミュージカル界をじわじわ熱くした立役者のひとりと言えるでしょう。
舞台を中心に活動する俳優が、テレビに軸足を移すのは、実はとても勇気の要ること。というのも、舞台の主演級俳優のキャスティングは通常、テレビより何年も早く行われるため、例えばこの時期はドラマに出たいと思ったら、本当にドラマの仕事が入るかどうかは分からないまま、舞台の仕事を断って空けておかなくてはならないからです。

出典元:YouTube(TohoChannel)

おそらくそうして空けてあったのであろう2015年10月、人気ドラマ「下町ロケット」に出演して爪痕を残し、今ではテレビ界でも主役を張れる役者になった山崎さん。2019年3月、半年ぶりのミュージカル出演となる『プリシラ』が開幕します。テレビで彼のファンになった方は、あの甘く伸びやかな歌声をぜひ生で堪能してみてください。

町田麻子

2002年に早大一文演劇映像専修を卒業。バレエ雑誌編集ライター、新聞社契約ライター、演劇パンフレット編集プロダクション等を経て、2012年にライターとして独立。主に演劇誌、演劇系ウェブサイト、演劇パンフレットにてインタビューやレポート記事を執筆している。 ミュージカル熱が高じ、2018年より東京藝大楽理科で音楽を勉強中。