そろそろ予習しない? グラミー賞2019

ジョー横溝

第61回グラミー賞がいよいよ迫ってきましたね。
賞レースの行方で言えば、ケンドリック・ラマーがなんと最多8ノミネートを獲得。続いて、ドレイクが7部門、ボーイ・ワンダ(Boi-1Da)とブランディ・カーライルがそれぞれ6部門でノミネートされていて、賞が幾つ獲れるのかが注目です。とは言え、グラミー賞は単なる人気投票・売上順位レースではないので、ノミネート作品に触れることが大切なんです。グラミー賞主要4部門(最優秀レコード賞、最優秀楽曲賞、最優秀アルバム賞、最優秀新人賞)のおススメ、注目の作品をチェックして、現地時間2019年2月10日(日)に開催される第61回グラミー賞を楽しみましょう!

最優秀レコード賞

シングル曲の演奏者、及び制作チームに授与される賞です。カーディ・B、バッド・バニー&J.バルヴィン「I Like It」、ドレイク「God's Plan」、ケンドリック・ラマー&シザ「All The Stars」あたりが順当にいけば受賞するのだと思います。しかし、この賞のポイントは“制作チーム”も賞の対象だという点です。そこで注目したいのが、チャイルディッシュ・ガンビーノ「This Is America」です。この曲はMVが発表になった途端に話題になりました。MVの冒頭、黒人のギタリストがゴスペルを奏でています。その黒人ギタリストをガンビーノが頭を銃で撃ち抜きます(00:50あたり)。

出典元:YouTube(Donald Glover)

その瞬間に曲調がガラリと変わり、「This Is America(これがアメリカだ)」とガンビーノが歌い出し、「捕まるなよ。オレみたいにうまくやれ!」と続きます。「This Is America」はこのMVの衝撃なしには成立しない曲です。また、このMVには実際に起きた銃にまつわる事件のメタファーがいくつも盛り込まれています。そして、MVの監督は東京生まれで LA で活動するフィルムメーカーのヒロ・ムライさんです。ヒロさんへのリスペクトを込めて注目ですし、銃問題が過熱するアメリカに一石を投じたこの曲が、アメリカで最も権威のある音楽賞を受賞するかどうかも注目なのです。どうですか?賞の行方、気になってきませんか?


Childish Gambino
https://www.kkbox.com/jp/ja/charts/artist_song_charts-.Vllrkg8P7GCiMz0F0jJC08J.html


最優秀楽曲賞

シングル曲の作詞者、作曲者に授与される賞で、グラミー主要4部門のひとつです。ちなみに、昨年の主要4部門は新人賞を除く全てをブルーノ・マーズが独占しましたね。それが関係しているのかどうかわかりませんが、今年から主要4部門はノミネート数が5から8に増えています。ノミネート数が増えたおかげで、従来ならノミネートされなかったであろう曲がノミネートされています。それがブランディ・カーライル の「THE JOKE」で、全米チャート100位以内にも入らなかった曲です。

出典元:YouTube(Brandi Carlile)

近年、グラミー主要4部門はR&B、ヒップホップ系がノミネーションを独占していますが、ブランディ・カーライルは現在37歳のフォーク・カントリー系シンガーソングライター。シアトルの郊外の田舎町で育った彼女のイノセントな歌は、心に沁みるんですね。 順当に行けば、ドレイクの「God's Plan」あたりが受賞しそうですが、ブランディ・カーライルの「THE JOKE」がオールドロック好きな僕の個人的なイチオシです。余談ですが、ブランディは6部門でノミネートされていますが、主要4部分のどれかで受賞する気がします。それは、ある意味“政治的な配慮”なのかもしれません。“政治的な配慮”というのは、具体的に言えば白人保守層への配慮です。良くも悪くもアメリカの音楽は政治とは無関係ではないのです。


Brandi Carlile
https://www.kkbox.com/jp/ja/charts/artist_song_charts-YRjYAIq2JQML1Ro0F05w208J.html


最優秀アルバム賞

アルバム演奏者および制作チームに授与される賞です。もし、ドレイクが最優秀楽曲賞、最優秀レコード賞のいずれも獲れないとなるとアルバム『Scorpion』で最優秀アルバム賞を受賞させてあげたいなぁと思ってしまいます。それくらいドレイクが素晴らしい活動をした1年でした。

出典元:YouTube(Drake)


Drake /Scorpion
https://kkbox.fm/Yl2cCV


その一方で、ジャネール・モネイ『Dirty Computer』は昨年1年間で音楽業界的に最も評価が高く、受賞候補筆頭な気がします。ジャネール・モネイは、全世界メガヒットとなったFUN.の「We Are Young」への客演、グラミー賞でのブルーノ・マーズ&B.o.Bとの共演パフォーマンス、エリカ・バドゥをフィーチャーした自身のヒット曲「Q.U.E.E.N.」など、その多彩な音楽性と、唯一無二の存在感で音楽界にセンセーションを巻き起こした“クイーン・オブ・フューチャー・ソウル”の異名を持つディーヴァです。しかも、映画『ムーンライト』『ドリームス』への出演で今や人気女優としても大活躍しています。そして、アルバム『Dirty Computer』はハイブリッド最前線であるばかりか、プリンス直系のファンキーでポップな曲まで楽しめてしまう秀作です。

出典元:YouTube(Janelle Monae)


Janelle Monae /Dirty Computer
https://kkbox.fm/Kl2laX


なので、「ジャネールで決まり!」と言いたいところですが、ピューリッツァー賞も受賞した世界最高峰のラッパー、ケンドリック・ラマーと、彼のレーベルであるトップ・ドッグ・エンタテイメントのCEOを務めるアンソニー “トップ・ドッグ” ティフィスが全面プロデュースしたアルバム『Black Panther: The Album』もとてつもなく素晴らしいアルバムだけに、アルバム賞の行方は混とんとしています。

出典元:YouTube(KendrickLamarVEVO)


Kendrick Lamar, The Weeknd, SZA /Black Panther The Album Music From And Inspired By
https://kkbox.fm/Bl2V5y


最優秀新人賞

文字通り、この1年で著しい活躍をみせた新人に授与される賞です。今年の傾向は、他の主要4部門と同じでR&B、ヒップホップ系が多いです。とは言え、R&B、ヒップホップ系は8候補の内4候補のみなので、半分は他のジャンルが健闘しています。半数を占めるR&B,ヒップホップ系の中では、H.E.R.が注目です。H.E.R.はデビュー当時、謎のR&B歌手と言われていましたが、“アリシア・キーズの再来”と言われていたギャビー・ウィルソンの別名プロジェクトであることがわかっています。H.E.R.としては2016年に初作品『H.E.R.Vol. 1』をリリースし、リリース当日だけでサウンド・クラウドにて8万回の再生を記録し話題となりました。2017年にはフォーブスによる「30 Under 30」(30歳以下の重要人物30組)の音楽部門に選ばれるなど、今や全米が注目をする若干21歳のディーヴァです。

出典元:YouTube(H.E.R.)


H.E.R.
https://www.kkbox.com/jp/ja/charts/artist_song_charts-bw0q1T3qQvQuZP0F0Oas-08K.html

そんなH.E.R.の受賞が濃厚だとは思いますが、注目はグレタ・ヴァン・フリートです。平均年齢が21歳の4人組バンドで、4人中3人が実の兄弟です。そもそも今回のグラミー主要4部門でバンドでノミネートされているのはこのグレタ・ヴァン・フリートのみ。しかも、そのサウンドはもろにレッドツェッペリン!アメリカのメインストリームで、ロックもバンドも死につつある状況で、平均年齢21歳のバンドがツェッペリン的なロックを奏でてノミネートされただけで奇蹟!!ノスタルジーと言われようが、50歳の私は、圧倒的にグレタ・ヴァン・フリートを注目&応援したいのです。

出典元:YouTube(Greta Van Fleet)


Greta Van Fleet
https://www.kkbox.com/jp/ja/charts/artist_song_charts-fsuV51I7BcgO2t0F0U.0C08K.html


プレイリストでは主要4部門にノミネートされてる楽曲をプレイリスト化してます。ぜひ、予習してグラミー賞を楽しんでください。

オススメプレイリスト

 

ジョー横溝

ライター/ラジオDJ/MC 1968年生まれ。東京都出身。早稲田大学卒。 2017年までローリングストーン日本版シニアライターを務める。 現在は、音楽はもとより、ファッション、カルチャー、社会問題に関するインタビュー・取材・執筆も行い、新聞、雑誌、WEBメディアでの連載も多数。 ラジオDJとしてはInterFM897で「THE DAVE FROMM SHOW」「LOVE ON MUSIC」にレギュラー出演中。またニコニコ動画でもレギュラー番組2本を持つ。 中津川THE SOLAR BUDOKANをはじめとするロックフェス、音楽イベントや討論番組のMCも担当している。 著書に「FREE TOKYO~フリー(無料)で楽しむ東京ガイド100」「ボブ・ディラン語録―静寂なる魂の言葉」他。