「カバーの女王」戦国時代を制するのは誰か?

「カバーの女王」戦国時代を制するのは誰か?
柴那典
柴那典

「カバーの女王」の勢力争いが、今、熱い。ここ数年で完全に根付いたJ-POPカバーのブームを経て、沢山の女性シンガーがJ-POPの名曲を歌ったナンバーをリリースしている。 ざっとシーンを見回しただけでも、数々の「女王」が存在する今は、まるで戦国時代や三国志時代のような群雄割拠の状況。王国が乱立し、数々の「歌姫」が「女王」に即位する動乱の時代と言っていいだろう。 そんな「女王」の一人として目下大きく勢力を拡大しているのがBENIだ。2012年3月にリリースされた「COVERS」は、オリコン1位、iTunes年間アルバムランキング1位、レコチョク年間アルバムランキング1位獲得など数々の記録を打ち立てる大ヒット。続けてリリースされた「COVERS:2」「COVERS:3」もあわせ、シリーズ累計100万枚に迫るヒットを実現した。サザンオールスターズや平井堅、槇原敬之など男性シンガーの曲を英語で歌い上げるこのシリーズ。懐かしさと新鮮さの絶妙なマッチングが人気の秘密と言っていいだろう。デビュー10周年を機にリリースしたベスト盤も好評だ。 そして、2014年を代表する「女王」としてやはり絶好調なのがMay J.だ。とはいえ、今の彼女は「カバーの女王」と言うより「雪の女王」。ディズニー映画「アナと雪の女王」が歴史的な興行収入を実現し、日本版の主題歌「Let It Go 〜ありのままで〜」も大ヒット。はやくも年末の紅白歌合戦に内定したとも噂されるなか、松たか子の歌う劇中歌のバージョンと、May J.の歌うエンディングテーマのバージョン、どちらがいい?という論争も巻き起こっている。 そもそも、2006年にメジャーデビューしたMay J.が「カバーの女王」になったきっかけは、テレビ朝日系の番組「関ジャニの仕分け∞」でのカラオケ得点対決だ。2012年に登場すると、その圧倒的な歌唱力で連勝街道を驀進。今年5月にその「Let It Go」で初黒星を喫するまで、26連勝という記録を樹立した。 さらに、新興勢力の「女王」と言えるのがGILLE。「国籍やビジュアルにとらわれずに自分の歌声を届けたい」との想いから、2012年に素性を隠してデビューした彼女は、その歌唱力が評判を呼んだことでアルバム「I AM GILLE.」がロングセールスを記録。AKB48「フラインゲット」やももいろクローバーの「行くぜっ!怪盗少女」、ゴールデンボンバー「女々しくて」など最近のヒット曲のカバーで注目を浴びたが、今年4月にリリースされた「I AM GILLE. 3 〜70's&80's J-POP〜」では、「ひこうき雲」や「恋におちて」など懐かしい歌謡曲のカバーを披露。さすがの歌声を見せた。 そして見逃せないのが「ラブソングの女王」シェネル。マレーシア生まれの彼女は、2011年に「ラブ・ソングス」が50万枚を超える大ヒット。J-POPの英語カバーのブームの火付け役となった。2014年6月にリリースされたばかりの第2弾「ラブ・ソングス2」も、配信19冠獲得のSPICY CHOCOLATE「ずっと」や、MISIA「逢いたくていま」などの英語カバーを収録。こちらもヒットを記録している。 ちなみに、台湾の「ラブソングの女王」フィッシュ・リョン(梁靜茹)も、つじあやの「風になる」やTHE BOOM「島唄」の中国語カバーを歌っている。「カバーの女王」の勢力争いは、日本だけでなく、アジア全域に広がっていると言えそうだ。

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