破格の10代

  • 邦楽
柴那典

2017年、ヤバい才能がどんどん出てきてる。今までの常識とか方法論みたいなものにとらわれない新世代のアーティストが登場してきている。メディアでは「10代」とか「JK」みたいな切り口で紹介されることが多いと思うんだけど、単に歳が若いってことだけじゃなくて、どこかしら「破格」なポイントを持っていて、だからこそ新しいムーブメントを作る可能性を持ってる人を紹介します。


「練馬のビヨンセ」の破壊力
ちゃんみな

出典元:(YouTube:ちゃんみな official)

まず図抜けた存在感を放ってるのがアルバム『未成年』をリリースしたばかりの、ちゃんみな。すでにテレビ番組にも出演していて相当の注目が集まってるけど、アルバム聴いてクオリティの高さに度肝抜かれました。本人自ら「JKラッパー」を名乗ってるし、高校生ラップ選手権に出場したことが注目を集めたきっかけだったりもして、今のフリースタイルブームの中で脚光を浴びた人なのかと思ってたら、がっつり音源に力を入れるタイプ。ハードなトラックにどんどん乗っかっていくフロウといい、挑発的な言葉遣いといい、めちゃめちゃ格好いいです。本人は「練馬のビヨンセ」を名乗ってるけど、僕としてはニッキー・ミナージュが出てきた時と同じような衝撃がある。


「気高くあれ」というメッセージ
ぼくのりりっくのぼうよみ

出典元:(YouTube:Victor Entertainment)

そして、ぼくのりりっくのぼうよみ。2015年末の段階で、「これはとんでもない才能が出てきた」という衝撃を感じてたんだけど、いよいよその存在感が一段広いところに広まりつつある感があります。アルバム『Noah’s Ark』に収録された「Be Noble」は、映画『3月のライオン』の前編主題歌。将棋の世界を舞台に不遇な生い立ちと屹立した才能を持った10代の主人公が、闘いの世界に身を置き、周囲の人たちと不器用ながらも関係を気付いていくというのがストーリー。その主題歌の書き下ろしとして「Be Noble」つまり「気高くあれ」というタイトルの曲を作るのがとても彼らしいと思う。


「おんがくも人をころす」
リーガルリリー

出典元:(YouTube:リーガルリリー)

ほぼ無名の存在から「リッケンバッカー」という1曲のMVで徐々に話題が広がっていったリーガルリリー。たかはしほのか(Vo/G)、ゆきやま(Dr)、白石はるか(B)というメンバーによる、平均年齢18歳の3ピースガールズバンドだ。まだあどけなさの残る立ち姿から繰り出す切れ味の鋭いギターサウンド、そして歌詞の言葉選びがいい。「きみはおんがくを中途半端に食べ残す」から「おんがくも人をころす」という、思わずハッとさせられるようなAメロから後半に向けて曲がどんどん盛り上がっていく。このエモーションがとても鮮烈だ。


「大海を知るなら今」
Lick-G

出典元:(YouTube:Lick-G)

17歳で1stミニアルバム『Trainspotting』を完成させたラッパー、Lick-G。イギリス人とのハーフという生い立ちの持ち主だ。彼も「高校生ラップ選手権」出身で、日本の中ではフリースタイルブームの中から脚光を浴びたラッパーの一人なんだけれど、見ている先は全然その先にあると思う。音源で勝負しているし、トラップ以降のサウンド、ミーゴスのようにUSのヒップホップシーンでトレンドになっている三連符のフロウを当たり前に取り込んで日本語でラップしている。特に「Oasobi」で聴けるスキルフルなフロウは驚愕。次のヒップホップシーンを担う才能だと思う。


一対一で迫る声の持ち主
山﨑彩音

出典元:(YouTube:Rock is)

18歳のシンガーソングライター、山﨑彩音。彼女が持っている特質は「挑むような声」だろう。真っ直ぐに放つ歌に息を呑むような緊迫感がある。アコギ弾き語りスタイルでライブをする女性アーティストは決して珍しい存在ではないが、ハスキーボイスで歌う彼女の存在感には“ギタ女”なんて流行りのキャッチーコピーが似合わない骨太さがある。ファーストミニアルバムの表題曲「キキ」は、余計なものを削ぎ落としたようなアレンジで、ゆったりとしたリズムマシンとギターだけの空間を作る一曲。「ルー・リードとコカ・コーラ」という歌詞の言葉が印象的。


「超絶ギタープレイ少女」
Li-sa-X

出典元:(YouTube:Sony Music (Japan))

ここからは別枠。8歳の時に投稿したレーサーXのカバープレイ動画が世界中で注目を集め「ヘヴィメタルの未来を担う天才少女 10人」(米MTV)、「将来が楽しみな名キッズ・ギター・プレイヤー10選」(米VH1)などと絶賛された少女ギタリスト、Li-sa-X(リーサー・エックス)。12歳の誕生日にアルバムデビューが決定し、オリジナル曲「セレンディピティ」が配信リリースされた。このLi-sa-Xの場合は「小さい女の子のわりにプレイが超絶すぎる」という違和感が注目の理由であって、その原理は言ってしまえばX JAPAN「紅」をドラム演奏する青森県のゆるキャラ「にゃんごすた〜」と変わらない。ということなので、これから5年、10年かけて彼女がメタルのスキルやテクニックだけではない音楽の素養をどれだけ身につけていくかがポイントだと思う。



柴那典

ライター/編集者。1976年生。 音楽に軸足を置きながら、いろんなことを書いています。 主な掲載先:『ナタリー』『nexus』『CINRA』『MUSICA』『marquee』『papyrus』などなど。 http://shiba710.blog34.fc2.com/ twitter:shiba710

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