敬虔なクリスチャン・メタルバンドが“悪魔のバンド”をカバー!?

  • 洋楽
西廣智一
80年代のLAメタル全盛期にデビューし、正統派HR/HMサウンドとキリストを賛美するような歌詞で注目を集めたクリスチャン・メタルバンド、ストライパーがニューアルバム『Fallen』をリリースした。2003年の再結成以降、定期的にアルバムをリリースしてきた彼らだが、本作は彼らにとって通算9枚目(再結成後4枚目)のオリジナルアルバム(カバーアルバム、セルフカバーアルバムは除く)に当たり、80年代の代表作『To Hell With The Devil』にも通ずるドラマチックでハード、かつ美メロを備えた楽曲を、まったく衰えを感じさせないボーカル&演奏で聴かせてくれる良作だ。

そして、魅力たっぷりの新曲群に混じって、実は1曲だけ往年のHR/HMの名曲カバーが収録されている。それが今回紹介する「After Forever」だ。オリジナルはオジー・オズボーン在籍時のブラック・サバスが1971年にリリースした3rdアルバム『Master Of Reality』に収録。当時のサバスといえば黒魔術や悪魔崇拝と結び付けられることが多く、メンバーも(特にオジーが)ドラッグ問題などスキャンダラスなイメージを漂わせていた。そんなサバスの楽曲を敬虔なクリスチャンがカバーするとは……、「一体どうした、ストライパー? 」と思った往年のファンも少なくないだろう。

が、この「After Forever」という曲がクセモノで、作詞をトニー・アイオミ(G)が担当。魂の存在や死後について考えるというキリスト教的なテーマにした歌詞がつづられているのだ。ドラッグや戦争、恐怖などをテーマにすることが多いオジーとは異なり、トニーらしさが表出した異色作と言える。つまり、ストライパーがカバーしたのにはそういう背景があったのだ(もっとも、彼らがサバスの「Sweet Leaf」などを演奏する姿も考えにくいが)。

(YouTube: Frontiers Music srl)

ちなみに、ストライパーは2011年に発表されたカバーアルバム『The Covering』でも、ロニー・ジェイムス・ディオ時代のサバスから「Heaven And Hell」をカバーしている。こちらもストライパーらしい選曲&演奏なので、機会があったら聴いてみてほしい。
西廣智一

音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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