サザンオールスターズ全972曲から聴き解く7つのプレイリスト

山本雅美

1978年に「勝手にシンドバッド」でデビュー、日本のロック&ポップスシーンに大きな影響を与えてきたサザンオールスターズの全972曲(ソロ作品など含む)が、ストリーミングサービスでの配信がスタートしました。2世代、3世代に渡るファンに愛され続けているサザンオールスターズの魅力は多岐に渡ります。今回はサザンオールスターズをファンとして聴き続け、そして近い距離で仕事をさせてもらった筆者が、サザンオールスターズの魅力を振り返ってみました。往年のファンの人はもちろん、若い世代の方も改めてサザンオールスターズの魅力を知ってもらえればと思います。


時代の新しいサウンドを生み続けるサザンオールスターズ

サザンのアルバムの1曲目を聴くのが楽しみでした。そこでは王道のサザンナンバーではないどころか、これまで聴いたことがないようなサウンドに出会えたからです。例えば1985年に発表された2枚組のアルバム『KAMAKURA』は、当時出始めたサンプラーやデジタル・シンセサイザー、ドラムマシンなどが使用され、これまでのサザンとは一線を画す実験的な作品がたくさん収録されています。その冒頭を飾るのが「Computer Children」。6分12秒の作品の中に誰も体験したことのないようなサウンド体験が散りばめられていて、この曲を夢中になって聴いていました。



ミリオンセールスになった1996年発表の「愛の言霊〜Spiritual Message〜」も同様で、最初に聴いた時に、これまでに体感したことのないサウンド構成、そして日本語の美しさが絶妙に連なり、圧倒されました。それに加え異国情緒を醸し出すガット・ギターやバリトン・サックス、桑田佳祐のラップによるエンディングまで耳を離すことができなかったことを覚えています。前年に発表された「あなただけを~Summer Heartbreak〜」というサザン王道のラブソングとはまったく違うアプローチも衝撃でした。



衝撃といえば桑田佳祐の「東京」(2002年)も同じです。「波乗りジョニー」「白い恋人達」と大ヒットシングルに続く新曲がとてつもなくディープで重い作品だったことに愕然としました。サザンの凄さは求められているものに迎合しないスタンスを継続し続けてきたことでもあります。KUWATA BANDのオリジナルアルバム『NIPPON NO ROCK BAND』(1986年)はヒットシングルが収録されずに全作品英語詞だったし、「マンピーのG★SPOT」は誰も触れることのできない領域のワードを何万人もの観客に連呼させることになる作品だったり、「ブルースへようこそ」は伏字にされた歌詞を聴く側が想像することで、深い意味合いを理解しようとさせられました。一筋縄でいかない新しい作品こそがサザンの大きな魅力であることは間違いありません。



夏の恋とエモさとサザンオールスターズ

夏がやってくると自分の理想の夏サザンの曲をカセットテープに録音してずっと聴いていたのは大学生の頃。そんな夏の始まりはサザンと恋の予感!〈彼女が髪を指で分けただけ それがシビれるしぐさ(「栞(しおり)のテーマ」)〉や、〈抱かれてしびれた ほんのチョットだけで (「海」)〉に登場する女性たちにドキドキし、まだ見ぬ大人の女性との出会いに胸がときめきました。そして〈四六時中も好きと言って〉と最強にロマンティックな表現を教えてくれた「真夏の果実」や、〈心に咲く花は 君の香り〉と歌う「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」で決め言葉を知り、夏の恋は最高潮に達します。でも夏の恋は儚いもので〈いい女にはForever また夏がまた来る〉と歌う「メロディ(Melody)」で鮮やかだった夏の恋の終わりを感じ、9月の風を感じる頃には〈君が思う男は 他にいる気がして(「NEVER FALL IN LOVE AGAIN」)とすっかり弱気になった男心に共感できました。そんな夏の恋の手ほどきを教えてくれたサザンの作品は数々あれど、その金字塔として「Bye Bye My Love(U are the one)」を紹介します。



波音は情事のゴスペル あの夏よいずこへ

酔いざめのヌードで今、 誰かに抱かれてる


この言葉は本当に大人の世界そのものでした。恋の終焉を迎え、自分ではどうすることもできず離れていく女性への未練を歌った作品ですが、その感情を36文字の歌詞で見事に表現してくれています。「波音って情事のゴスペルみたいだと思わない?」って歌詞を丸パクリして大人ぶっていた時期もありました。そして秋が始まる頃には磨り減ったカセットテープは切れてしまい、サザンと一緒に過ごした夏が終わります。サザンの言葉は間違いなく大人になる教科書でした。



社会を直視するサザンオールスターズ

サザンは政治、組織や体制、経済格差など社会問題を取り上げた作品もたくさん発表しています。二度と戦争が起きないようにと歌に託した「ピースとハイライト」や、少ない言葉ながら歴史に翻弄された少女たちに想いを馳せたメランコリックな「悲しみはメリーゴーランド」、〈この国が平和だと誰が決めたの? / 未だ終わらぬ過去があります〉と、いまなお様々な課題が横たわる沖縄のことをストレートに歌った「平和の琉歌」など、受け継がれるべき作品もたくさんあります。



その中で紹介したいのが、あえての美輪明宏のカバー曲「ヨイトマケの唄」。記憶が正しければ、この曲を初めて聴いたのは桑田佳祐ソロツアー「桑田佳祐 LIVE TOUR '94 -さのさのさ-」のステージ半ばでした。桑田佳祐が歌う「ヨイトマケの唄」を聴いた時に微動だにできず、歌を聴いて初めて涙をポロポロ流していました。この曲は「土方(どかた)」や「ヨイトマケ」などの差別用語とされる言葉が含まれ、日本民間放送連盟により要注意歌謡曲(俗にいう放送禁止歌)に指定され、長らく民放局で歌われることはありませんでしたが、自身の音楽番組『桑田佳祐の音楽寅さん ~MUSIC TIGER~』で2000年に歌唱され大きな反響を得ることになります。放送禁止歌という得体のしれない言葉に縛られることなく、時代を超え〈親に対する普遍な愛〉に溢れる曲は桑田佳祐を通じて多くの人に聴き継がれることになったのではないでしょうか。



昭和歌謡とダンスホールとサザンオールスターズ

サザンを語る上で忘れてはならないのが「昭和歌謡」をルーツとした様々な作品です。桑田佳祐はビートルズやエリック・クラプトン、ボブ・ディラン、リトル・フィートなどの海外アーティスト同様、内山田洋とクールファイブ、弘田三枝子、ザ・ピーナッツ、植木等など昭和の歌謡曲に大きな影響を受けており、長年取り組んできたエイズ啓発活動「Act Against AIDS (AAA)」の一環として、 2008年以降3度にわたって開催された「ひとり紅白歌合戦」でも、昭和の歌謡曲やグループサウンズ、フォークやニューミュージックなど数多くの名曲を歌い継いでいます。初期の名作ナンバーは原由子のボーカル曲「私はピアノ」。切ない女心を ザ・ピーナッツ的なメロディで表現しつつ、曲間の男と女の会話のやり取りを昭和の偉大なるコミックバンドであるザ・クレイジーキャッツ風な掛け合いで表現しています。それでいて歌詞にラリー・カールトンやビリー・ジョエルといった当時の洗練された洋楽アーティストも登場し、昭和歌謡的アプローチと都会的エッセンスを見事に調合させています。



「チャコの海岸物語」「HOTEL PACIFIC」などのヒットソングを生み出し、また「匂艶(にじいろ)THE NIGHT CLUB」や「そんなヒロシに騙されて」など昭和の大人たちの社交場だったダンスホールの空気感を感じさせるような作品も絶妙でした。この桑田佳祐の昭和歌謡DNAは、最近の「若い広場」や「天井棧敷の怪人」にも宿り続けています。



サザンオールスターズは口に出せない隠語の宝庫!

サザンオールスターズの「エロスな視点」も欠かすことのできない大事な要素。おそらく日本の音楽シーンにおいて、これほどエロい作品を残しているのはサザンだけではないでしょうか。「シュラバ★ラ★バンバ SHULABA-LA-BAMBA」「エロティカセブン EROTICA SEVEN」「マンピーのG★SPOT」はメジャーなエロ三部作ですが、そのほかにもエロい曲が多数あるのを知っていますか?ライトなところでは「わすれじのレイド・バック」。男の切ない恋心を歌っている作品にでてくる〈指でさぐることなどつらい In your socket〉という歌詞が当時はまったく理解できず、桑田佳祐の独特の喩えの表現だったと知るのは大人になってからでした。サビで「スケベ」と歌うために作られたという「スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)」はカラオケでよく歌われている作品ですが〈君にとりこの純生ジュニア〉とか結構意味深な言葉が隠れています。また「C調言葉に御用心」のBメロに出てくるのは〈たまにゃMaking Love そうでなきゃ hand job〉という歌詞。自慰行為のことをセンスよく言い回しているのはあっぱれです。そしてエロさは徐々にタイトルにも登場、「マイ フェラ レディ」「クリといつまでも」「HONKY JILL~69(あいなめ)のブルース」と、あのことやあの部分を喩えていると思わざる得ない作品へと進化していきます。



そしてサザンのエロい作品の金字塔は「経験II」。爽やかなサマーラブソング「涙の海で抱かれたい~SEA OF LOVE~」のカップリングに収録されていますが、油断して口ずさむと彼女に頬を叩かれるのでご注意を。「経験II」はサザン史上最強にヤバいエロ度MAXな作品です。歌詞は是非みなさんご自身で確認してみてください。

真面目な話をするとエロスは人間が持つ本能です。ギリギリの言葉でその本能の想像力を枯渇させないように桑田佳祐は歌いかけているのではないでしょうか。サザンのエロい作品は音楽を超越した神々しさを感じるのと同時に、ここまで歌い続けるロックスピリッツに感服します。



サイダー味のサザンオールスターズ

サザンオールスターズとサイダーの関係は古く、サザンオールスターズの記念すべき初出演CMは「三ツ矢サイダー」でした。CM曲となった「青い空の心(No me?More no!)」はサザンらしい情緒的な言葉と遊び心のあるメロディの作品で、この作品を聴いてからサイダーがなぜか大人っぽく感じるようになったものです。



そして時を経てデビュー40周年記念日となる2018年6月25日から再びサザン全員が「三ツ矢サイダー」のCMに登場、「壮年JUMP」を聴いた時は当時と変わらない瑞々しさを感じつつ、懐かしい空気に触れたような気がしました。ちなみにどちらの作品も〈サイダー〉という言葉が登場するので、ぜひ聴き比べてみてください。サザンの曲にはサイダーは登場しないものの、澄み渡った青い空や、澄んだ空気を感じさせてくれる曲もたくさんあります。このプレイリストにはサイダーのようなサザンソングを選りすぐっています。



サザンオールスターズのロックン・ロール

最後にお届けするのはロックン・ロールなサザンです。よく使われる邦ロックという範疇ではなく、ロックン・ロールと表現するのがふさわしいのだと思います。60年代-70年代の洋楽の匂いをさせながらも、独自に構築された作品は数々あります。KUWATA BANDでは収録曲すべてが英語詞作品という当時としては革新的なアルバム『NIPPON NO ROCK BAND』を発表しています。そして桑田佳祐の3作目のオリジナルアルバムとして2002年に発表された『ROCK AND ROLL HERO』は、日本のロックンロール・アルバムの最高峰といっても過言ではないぐらいに濃密なアルバムになっています。桑田佳祐が敬愛するボブ・ディランを彷彿させるブルージーな「HOLD ON (It's Alright)」で始まり、2曲目の「ROCK AND ROLL HERO」は日本とアメリカの関係を皮肉りながらもロックサウンドが痛快なナンバー。Suchmosのボーカルで桑田佳祐と同じ茅ヶ崎市出身のYONCEは、11歳の頃にこの曲を聴いて歌詞の社会性に感銘を受けたことを述べています。



〈Baby…Pom, pom…Baby Ah…〉という歌から始まる4曲目の「影法師」は、桑田佳祐がリスペクトし続けるジョン・レノンの「Mother」に対するオマージュであるかのようですし、5曲目の「BLUE MONDAY」は、60sっぽいギター&オルガン・サウンドと泣きのギターリフが融合したワクワクするナンバーです。アルバム『ROCK AND ROLL HERO』はこれからもロックバンドの教科書として、いまの若いバンドマンたちに是非聴いてもらいたいアルバムです。そしてサザンのアルバムにはもちろん、シングルのカップリング曲にも絶妙なロックン・ロール作品が収録されています。是非このプレイリストでサザンオールスターズのロックン・ロールを聴いて気持ちをアゲてみてください。



今回のコラムでは7つの側面からサザンオールスターズの作品を紹介してきましたが、「桑田佳祐が描いた原由子のガーリーな世界」とか「1曲で3曲分美味しいサザンオールスターズ」とかまだまだ多彩な魅力を紹介しきれていません。是非また別の機会に紹介できればと思います。ササンオールスターズが40年以上に渡りバンドとして成立し続け、日本中の多くの人から愛され続けているのは、多彩な音楽がその時代時代でフィットし続けているからでしょう。いつか自分も孫ができたら一緒にサザンオールスターズのライブに行けることを楽しみにしています。



山本雅美

ainone合同会社 代表/プロデューサー ビクターエンタテインメント/A-Sketch/KKBOX Japanで幅広く音楽ビジネスを担当、現在は音楽専門インターネットラジオのプロデューサーのほか、多摩川沿いの街で音楽フェスなどを開催。また写真家として国内・海外でのエキシビションに出展。

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