佐野史郎と安藤裕子が選ぶはっぴいえんど:897Selectors#32

佐野史郎と安藤裕子が選ぶはっぴいえんど:897Selectors#32

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897 Selectors
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プレイリスト紹介

日本のポップミュージックシーンで聴き継がれ続ける“はっぴいえんど”。

ファーストアルバム「はっぴいえんど」が1970年8月5日に発売されてから半世紀近くが経ちました。
“100年後に残したい音楽”を選曲テーマにお届けしている『KKBOX presents 897 Selectors』では、“はっぴいえんど”が残した音楽、そしてこれからも影響を与え続ける存在としての“はっぴいえんど”を8月14日、21日の2週間に渡りスペシャル番組として特集。

第1回目は“はっぴいえんど”に大きな影響を受けたという佐野史郎さんと安藤裕子さんが“はっぴいえんど”の魅力を語り尽くして頂きました。

【出演者からのコメント】
<佐野史郎>
1970年、初めて出会った”はっぴいえんど”の、 本物の日本のロックバンドの音に興奮した瞬間を
今も忘れない。 世代を超えて聴き継がれていくことなど、考えもしてみなかったけれど。

<安藤裕子>
佐野さんと喋ってしまうと、私なんてはっぴいえんどを語る資格はないなと思ってしまうけれど、自分の音楽の道標となってくれたのは間違いなく彼らです。収録でLP「風街ろまん」を見て今更驚愕の事実に本気で驚いたCD世代のつまらん女ですが、曲を通して感じるものはやはり普遍的であると思います。花いちもんめに広がるそこはかとない哀しさと淋しさ。一瞬で駆け抜けた彼らのはっぴいえんど。美しい。

<TALK MEMO>
〜"はっぴいえんど"との遭遇〜
M1: 12月の雨の日 / はっぴいえんど
佐野さん選曲。1970年に、ビクターからリリースされた「中津川フォークジャンボリー」の実況録音盤を岡林信康目当てで購入した佐野さん。岡林信康のバックバンドが"はっぴいえんど"だった。唯一はっぴいえんどの楽曲で収録されていた「12月の雨の日」に衝撃を受けて、翌年71年には「中津川フォークジャンボリー」に参戦。会場で「ゆでめん」を購入したとのこと。

M2: 抱きしめたい / はっぴいえんど
安藤さん選曲。20才の頃、音楽制作を始めようとした時期に、日本語で曲を作ることに悩んでいたそうで、何か参考になる音源はないかとレコード店に足を運んだ安藤さん。そこで「風街ろまん」をジャケ買いしたとのこと。試聴もせずに買ったのだが、1曲目の「抱きしめたい」を聴いて、安藤さんの悩みは解消され、以降曲作りのお手本・教科書になっていると語った。

「風街ろまん」のジャケットについて、安藤さんはずっと絵だと思っていたが、実は写真であると佐野さんに教えられ衝撃を受けていた。(注:野上眞宏さんの写真に宮谷一彦さんが筆で補正)。さらに、「最初ジャケットを見た時のはっぴいえんどのメンバーの印象は好評ではなかった。」と佐野さんは裏エピソードを語った。

〜松本隆の詞の世界〜
M3: 敵タナトスを想起せよ ! / はっぴいえんど (安藤さん選曲)
M4:朝 / はっぴいえんど (佐野さん選曲)
「難解な現代詩の世界を取り入れたのが前代未聞」と語る佐野さん。1960年後半、アンダーグラウンド・サイケデリック・ムーブメントで演劇や音楽・写真・舞踊などが混然一体とする中、フォーク・クルセダーズの「帰ってきたヨッパライ」などのヒットもあり、フォークソングの歌詞の社会的メッセージ性やセンチメンタルな要素が注目されるようになった。しかし、はっぴいえんどの歌詞は堅く叙事的で難解であった。言葉の奥に風景や音、アートを重ねた松本隆のセンス、そこに細野晴臣や鈴木茂のビート、大滝詠一のメロディーが重なった"はっぴいえんど"は奇跡的だと佐野さんは語った。

一方、安藤さんは「ゆでめん」で感じる音楽と言葉がぶつかり合いながら試行錯誤をしている様子にキュンとすると語った。

〜100年後も誰かの心に残っていて欲しい、はっぴいえんどの曲〜
M5: 飛べない空 / はっぴいえんど
安藤さん選曲。「ゆでめん」の世界から感じる松本さんの内省的な部分や感情の揺れ・ねじれ、混沌さにキュンとすると語る安藤さん。「これは細野さんの作詞作曲だけど、はっぴいえんどの眼差し。」「自分はぬるい人間。そのぬるさに囚われて動けない。」と自分を分析しながらも「はっぴいえんどはそのぬるさに囚われているものを否定せずに受け止めてくれる。けれどそうでありながら、世の中を突き放して観ている。この曲に凄い終焉を感じる。」と語った。佐野さんは「今、この曲の歌詞を読むと、まるで予言しているみたい。未だに色褪せない。今の時代に新たな言葉と音となって突き刺さる」と語った。

M6: 花いちもんめ / はっぴいえんど
鈴木茂さんの曲を選んだ佐野さん。「風街ろまん」〜「HAPPY END」でライティングが光る鈴木さんについて佐野さんは「メンバー最年少の鈴木さんは、周りの兄さんたちの試行錯誤から吸収し、名曲を生み出し70年代を駆け抜けていった。」と述べた。また、歌詞の"みんな妙に怒りっぽいみたい"というフレーズについて「こういう茂さんにバンドを託す松本さんの目線が良い」と語った。

〜最後に・・・〜
M7: はいからはくち / はっぴいえんど
僅か2年ほど活動期間にも関わらず後世に多大なる影響を与えている"はっぴいえんど"。
佐野さんは「シュガー・ベイブも含めて当時は、お客さんも全然少なかった。でも熱量は凄かった。その熱量が現在まで伝わり続けたんじゃないかな。」と最後に語った。