美しい蝶の羽を見た
名前も知らずに
砂漠の砂丘を飲み干してみたい
乾きの一つも知らずに
美しい蝶の羽を私につけて
緩やかな速度で追い抜いてゆく
ゆっくりゆっくりとあくびの軽さで
行ったり来たりを繰り返しながら
美しい蝶の羽を見た
醜い私を知らずに
海原を千も飲み干していく
少しも満ちるを知らずに
美しい鱗の粉よ地平を染めて
あり得ない速度で追い抜いてゆけ
ひらりひらりと木洩れの光で
行ったり来たりを繰り返しながら
私が歩いた道も、私の足も
私が触った花も、私の指も
私が死ぬ日の朝も、その他の日々も
緩やかな速度で追い抜いてゆく
ゆっくりゆっくりとあくびの軽さで
行ったり来たりを繰り返しながら
ゆっくりゆっくりと彼方へ
恐る恐ると羽を広げながら