渋谷系の息吹を感じるアニソン・ゲーム音楽

初めまして。ボカロPとして楽曲制作をしていたり、デザインなどをやっているミスミと申します。このコラムでは、今まで聴いてきた音楽の中から毎回テーマを設けてさまざまな良い感じの音楽をみなさんにご紹介していけたらなと思います。さて、第一回のテーマは、渋谷系の影響を受けたアニソン・ゲーム音楽です(アニソンはアニメの楽曲だけでなく、声優さんの楽曲なども今回含めています)。 渋谷系音楽の一番の特徴は、おしゃれなコード進行と音色。dim(ディニミッシュ)やaug(オーギュメント)、分数コードなどあまり使われないコードを使ったり、曲の途中で何回も転調したりと、とても聴いていて不思議な心持ちにさせられます。特に近年のアニソンではこういった複雑でおしゃれなコードを持つ楽曲が多く聴かせるようになり、何回もリピートして聴きたくなる心地良さ・中毒性の要因のひとつになっています。 最近では、海外でも日本の渋谷系の影響を受けたクリエイターが増えており、Maltine Recordsから今年春にリリースされた、三毛猫ホームレスxhappy machine「ペパーミント脱走計画 feat. 根本凪」(https://soundcloud.com/maltine-record/peppermint_escape_plan)では日本とフランスのトラックメイカーによる、渋谷系の文脈を汲んだ素晴らしい楽曲が完成するなど、各地でさまざまな面白い動きも目立ってきています。出典元：(YouTube：Sony Music (Japan)) このテーマを語るにあたってはずせないのが花澤香菜さんです。千石撫子(化物語)、向井戸まなか(凪のあすから)など多くの人気キャラクターの声を担当し、今や日本のアニメ界にはかかせない声優さんで、「恋愛サーキュレーション」を歌っている人というとピンとくる人も多いかもしれません。1stアルバムにして、もはや名盤となった『claire』には北川勝利さん、カジヒデキさん、ミトさん、沖井礼二さんなどいわゆる渋谷系音楽と関わりの深いアーティストが多く参加し、極上のポップアルバムに仕上がっています。 「恋する惑星」は2枚組25曲入りアルバムとしても話題を呼んだ『25』収録曲。北川勝利さんによる作曲で、菅野よう子さんが手がけたYUKI「坂道のメロディー」のように、サビへの盛り上がり、サビの浮遊感・疾走感が特に素晴らしい楽曲となっています。花澤さんのウィスパー系の歌声は渋谷系の楽曲と非常に相性が良く、曲の良さを何倍にも引き立てていて本当にすごいなと思います。出典元：(YouTube：KONAMI公式) 今ゲーム音楽でおそらく一番渋谷系テイストが入ってきているのがひなビタこと日向美ビタースイーツ♪。jubeatやポップンミュージックなどゲーセンの音ゲーで耳にすることが多いアーティストで、音楽監修をTOMOSUKEさんが担当していることもあり、どの楽曲もハイクオリティ。 「neko＊neko」はまさに""これこそ渋谷系""というコード進行と音色を持ったおすすめの楽曲。「恋とキングコング」「じもとっこスイーツ♪」「チョコレートスマイル」など、ひなビタにはおしゃれなコード進行を持ったポップな楽曲がたくさんあるのでぜひチェックしてみてください。音ゲーをプレイしながら聴くとさらに楽しめます。出典元：(YouTube：avex) Wake Up,Girls！は、アニメ「Wake Up, Girls!」から生まれた音楽ユニット。劇伴から主題歌まで音楽制作を行うクリエイター集団・MONACAが全面的に関わっていて、とにかく良曲が揃っています。MONACAは、「涼宮ハルヒの憂鬱」や「化物語」の楽曲などで有名な神前暁さんを筆頭に今のアニソン界にはなくてはならない存在で、上に挙げた「Beyond The Bottom」の作曲を手がけた田中秀和さんもMONACA所属のお方。 田中秀和さんは渋谷系の複雑でおしゃれでポップなコード進行、神前暁さんに引けをとらないメロディーのキャッチーさをあわせ持った今一番アニソン周りで注目を浴びている作曲家の方です。「Beyond The Bottom」は上記2曲に比べて若干渋谷系の要素は落ち着いていますが、序盤のボーカルカットアップ、サビであえて最初から盛り上げに行かないじらす楽曲構成、複雑なコード進行と楽器の配置など、まさに名曲と呼ぶに相応しい楽曲に仕上がっています。田中秀和さんがつくる曲は、この他にも「花ハ踊レヤいろはにほ」「カレンダーガール」「PUNCH☆MIND☆HAPPINESS」などどれもがおすすめです。 プレイリストにはこのコラムでご紹介した楽曲や、その他のおすすめ楽曲などを集めてみたのでぜひ聴いてみてください。