アクエリオンからももクロまで、岩里祐穂が作詞家生活35周年を迎える

西廣智一
岩里祐穂(いわさと ゆうほ)という作詞家をご存知だろうか。アラサー世代以上なら歴代のヒット曲の作詞家として馴染み深いかもしれないが、若い世代は彼女の名前は知らなくても彼女が作詞を手がけた楽曲名を挙げれば「あーっ! 」と納得することだろう。そんな岩里祐穂がこのたび作詞生活35周年を迎えたことを記念して、自身が作詞を手がけた楽曲を集めた2枚組コンピレーションアルバム『Ms.リリシスト ~岩里祐穂作詞生活35周年 Anniversary Album ~』が5月25日にリリースすることになった。
岩里は1980年に「いわさきゆうこ」名義で、シンガーソングライターとして活動開始。1983年に現在の「岩里祐穂」名義で作詞家デビューしてからは、堀ちえみや早見優、森尾由美、新田恵利、生稲晃子などといった当時のアイドルに歌詞を提供してきた。そんな岩里の名を一気に広めたのが、今井美樹とのコラボレーション。1989年に発表した「瞳がほほえむから」はロングヒットを記録し、ドラマ主題歌として世を賑わせた「PIECE OF MY WISH」や「Miss You」はオリコンシングルランキング1位を獲得した。ちょうどこの頃にカラオケが一大ブームとなり、岩里が歌詞を提供した楽曲はカラオケで歌われる機会が急増。アラサー、アラフォー世代の女性なら当時、今井美樹のヒット曲の数々やアン・ルイス、中山美穂などでお世話になったことだろう。その後も岩里は布袋寅泰や楠瀬誠志郎、崎谷健次郎といった男性アーティストにも歌詞を提供。意外なところでは、小堺一機がCDリリースした際に作詞を担当している(今の10代、20代からしたら、小堺が歌手活動をしていたことのほうに驚くのかもしれないが)。
(YouTube: UNIVERSAL MUSIC JAPAN) そんな岩里は90年代後半、坂本真綾とのコラボレーションを機に大きな転機を迎える。坂本のデビュープロジェクトに参加したことで、「作詞:岩里祐穂、作曲:菅野よう子」というクレジットの楽曲を目にする機会が急増。またこれが大きく影響したのか、その後数多くのアニソンや声優アーティストの楽曲に歌詞を提供。あの「創聖のアクエリオン」も岩里の作詞ナンバーだということは、意外と知らないJ-POPリスナーは多いのではないだろうか。 岩里は現在も、May J.や城南海、新垣結衣などのJ-POPシンガー、Sexy ZoneやA.B.C-Zなどのジャニーズユニット、Buono!や乙女新党、さんみゅ〜といった女性アイドル、堀江由衣、花澤香菜、高垣彩陽などの声優アーティスト、May'nやAKINO from bless4をはじめとするアニソンシンガーなどに歌詞を提供。ここ数年ではももいろクローバーZ「サラバ、愛しき悲しみたちよ」も大ヒット、今井美樹がデビュー30周年を迎えた中での作詞生活35周年記念コンピレーションアルバム『Ms.リリシスト』発売とあって、改めて彼女の功績に注目が集まることになりそうだ。
(YouTube: stardustdigital) なお、『Ms.リリシスト』には80年代から近年までのヒット曲33曲を収録。まるで1冊の本のような装丁で、ジャケットは「うる星やつら」「犬夜叉」などで知られる漫画家・高橋留美子の描き下ろしイラストとなっている。岩里とは旧知の仲である高橋は、連載を抱え多忙を極める中、今回の描き下ろしを快諾したという。さらに約120ページにもおよぶブックレットには、岩里が長年作詞を手がけてきた坂本真綾、中川翔子、花澤香菜との3本のスペシャル対談を収録。このほか今井美樹、布袋寅泰、菅野よう子によるメッセージも掲載された、音楽的にも、データ的にも資料価値の高いアイテムだ。 KKBOXでは岩里が作詞を手がけた楽曲も多数配信中。ぜひこの機会に彼女の紡ぐ歌世界に浸ってみてはどうだろう。
西廣智一

音楽系ライター。2006年よりライターとしての活動を開始し、「ナタリー」の立ち上げに参加する。2014年12月からフリーランスとなり、WEBや雑誌でインタビューやコラム、ディスクレビューを執筆。乃木坂46からオジー・オズボーンまで、インタビューしたアーティストは多岐にわたる。

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