ネット発の若手クリエイターが活躍する音楽10選 〜緊急座談会〜【後編】

  • 邦楽
KKBOX編集室

三月のパンタシアの“音楽×小説×イラスト”を連動させた自主企画「ガールズブルー」の最新作「8時33分、夏がまた輝く」が、7月14日にボーカル・みあの公式Twitterアカウント上で連載が開始され、15日には座談会の前編でも触れた「いつか天使になって あるいは青い鳥になって アダムとイブになって ありえないなら」の配信がスタート。さらに先日7月24日には、ネクライトーキーが石風呂の楽曲をセルフカバーしたミニアルバム『MEMORIES』がリリースされた。ウォルピスカーターは10月27日(日)に行われる豊洲PITワンマン公演『2019年度ウォルピス社 “大”株主総会』が即日完売したことを受け、その追加公演を2020年1月26日(日)を同会場にて開催予定。すこっぷPもVTuberオーディションに楽曲提供するなど、ネット発の若手クリエイターが活躍する音楽から今後も目が離せない。座談会の後編では、いま注目の若手クリエイターが活躍する音楽のプレイリストをもとに、ボーカロイドの魅力やカバー楽曲、それぞれの現状と今後についてじっくり話を訊いた。

【取材・文:後藤千尋】

前編はこちら
https://www.kkbox.com/jp/ja/column/interviews-0-189-1.html

参加メンバー





朝日(ネクライトーキー)
@ishi_furo
「オシャレ大作戦」がネットで話題のネクライトーキー、ギター。コンテンポラリーな生活ではギター&ボーカル、石風呂の名義で動画投稿も行っている。今回、大阪にいる朝日さんには東京からSkypeを繋いで座談会に参加して頂きました。






ウォルピスカーター
@wolpis_kater
2015年4月に投稿した「アスノヨゾラ哨戒班」が1000万再生を超える記録。「歌ってみた」動画投稿とオリジナル楽曲のボーカルで活動し、“高音出したい系男子”として人気を博すボーカリスト。






みあ(三月のパンタシア)
@3_phantasia
2015年、YouTubeの動画投稿をきっかけに人気急上昇中の音楽ユニットとして注目を集めている三月のパンタシアのボーカル。“音楽×小説×イラスト”を連動させた企画やコンセプトのあるライブに定評がある。






すこっぷ
@scopscop
ボカロ投稿を中心に活動中。現在は三月のパンタシアに楽曲提供をしている若手クリエイターのひとりで、多くのシンガーに楽曲をカバーされている人気ボカロP。


曲を聴いて「何かをしよう」っていう衝動を自分が与えたっていうのが凄く嬉しい

—先月フルアルバム『寂しい人が一番偉いんだ』をリリースしたmajikoさんは蝶々Pこと一之瀬ユウさんの「心做し」のカバーしているのでプレイリストにも入れさせていただきましたが、この他にも前編でお話に出たすこっぷさんの「アイロニ」もカバーされていますね。

すこっぷ:ネットで活動してる方や趣味でやってる方とか全部なんですけど、聞いてくれるだけじゃなくて自分の曲を聴いて絵を描いたり、「何かをしよう」っていう衝動を自分が与えたっていうのが凄く嬉しいですね。そんな風に自分の曲を聴いて思ってくれたのは嬉しいなって思います。

—プレイリストには、りぶさんが歌うみきとPの「サリシノハラ」、現在はシンガーソングライターの須田景凪として活躍されている、バルーンの「シャルル」のセルフカバーなども選曲させていただきました。みなさんはカバーして難しかった楽曲はありますか?

みあ:すこっぷさんの「アイロニ」も歌ってたんだけど、とくさんの「SPiCa」は高くて、ブレスの場所がないし難しかったですね。これはカラオケに行くリスナーからも聞く言葉なんですけど、「難しかったり早かったり歌えないからこそ歌いたい!」みたいな楽しみ方もあるのがボカロの魅力かもしれない。

—りぶさんがカバーしてる「サリシノハラ」はみきとPの楽曲ですが、指原莉乃さんがツイートして反響になった楽曲で歌詞の内容も良い意味で衝撃的でした。この曲は、まじ娘(majiko)さんのカバーもKKBOXで配信されていますが、ウォルピスカーターさんはどんな楽曲をカバーされていましたか?

ウォルピスカーター:僕はボカロ楽曲の「歌ってみた」を主にやってましたが、選曲としては原曲キーで歌えるものを歌っていました。すこっぷさんも(座談会の前編で)おっしゃっていましたが、そもそもボカロ楽曲はキーが高いんですよね。初音ミク、鏡音リン・レンの適正キーが高いところにあるので、意図して高い楽曲を歌っていたわけではなく、結果そうなったというか。

—あ、そういうことだったんですね。

ウォルピスカーター:あと、とにかく自分の好きな曲を歌ってました。それこそランキングにある楽曲をずらっと聴いて、「この曲いい!」って思ったら「歌ってみた」を投稿してました。

—最近ではLiSA「ADAMAS」などの有名な曲のカバーもされて、再生回数も伸びてますね。

ウォルピスカーター:もともとアニソンが好きなので隙あらばやっていこうと思ってます。4年前ぐらいに、じんさんの「カゲロウプロジェクト」が大流行した時とか、その「歌ってみた」だけでランキングの1位から40位まで埋まるみたいな時期があって、あの時はすごかったですね。


ボカロっていうのは本当にソングライターとしての腕だけで毎日ランキングを競わされる

—ネット発の音楽ってズバリ、どんなところが魅力だと思いますか?

みあ:歌詞が文学的だったり、文字の置き方がすごく特徴的なところは最初にフックになるところだなと思いました。音数が多くてギターがずっとリフレインしてるのが私はすごく自分にハマってます。

朝日:音楽がずっと好きだったからボカロだからとかは無く、「この曲、いいな」としか思ってなかった。ただ、投稿をしていた当時すごい面白いなと思ったのが、ボカロって種類はあれど人間ほど声が違うわけでもなく歌の上手さに差があるわけじゃないところ。生身の人間だと本当に技術や声質とかルックスが絡みあってくるんですけど、ボカロっていうのは本当にソングライターとしての腕だけで毎日ランキングを競わされるのは面白いなと思ってました。こんなに曲書きの責任の比率が大きい文化ってないんじゃないかなって・・・楽しかったですね(笑)。

すこっぷ:それは僕も思ってました! 今までJ-POPとか聞いても作ってる人に焦点が当たらなかったんだけど、ボカロは単純に作る人の名前が知られていくのがすごい面白い。

—プレイリスト内にあるSouさんの「愚者のパレード」の編曲は神谷志龍さんが担当されていますね。ウォルピスカーターさんの「僕らのミッシングリンク」も神谷さんの作曲で、以前から仲が良かったとお聞きしました。

ウォルピスカーター:二人ともかなり前からの付き合いで、よく連絡を取り合う仲ですね。「愚者のパレード」はSouくんが初めて作詞作曲を手掛けた楽曲ということで、聴いてみたらメロディーも歌詞もすごくカッコよくて、びっくりしましたね!

輝ける場所が絶対あるだろうにずっとここで留まってるのかって

—ネクライトーキーのお話も伺いたいんですが、プレイリストはネットで火がついた「オシャレ大作戦」を選曲させて頂きました。セルフカバーアルバム『MEMORIES』が先日発売しましたが、「ゆるふわ樹海ガール」はそらるさんもカバーされていていたりと驚きました。このタイミングでセルフカバーを出そうと思ったきっかけは?

朝日:石風呂の楽曲はライブでもやってたんですけど、音源を出すことはないと思ってたんですよ。けど、ライブでやるから音源が無いのは不親切かなって思ったんです。ボカロ楽曲としてネット上で公開されたのが7〜8年前の曲なんですよ(驚)。「昔の曲が改めていろんな人に届くんだな」っていうと続けてきたことの感慨深さはありました。

—ネクライトーキーは、もともと石風呂さんが投稿していた楽曲をヴォーカルのもっささんが「歌ってみた」投稿していましたよね。

朝日:「歌ってみた」をチェックしてる中で、もっさのカバーがびっくりするくらい下手くそだったんですけど(笑)、本当に声がよかったんです。

—(笑)歌は上を目指すとキリがないですもんね。朝日さんはずっと女性ヴォーカルと組もうと思っていたんですよね?

朝日:はい。石風呂をはじめて「ネット上だけ」ってもったいないなって思ったんです。どんな聴き方でも自由だけど、自由だからこそライブでも聴いてほしいし、ライブで出来そうな曲が石風呂の初期には多かった。やっぱりライブって何回やっても良くて、音源って古くなるけどライブはやった日が最新なんですよね。だから、それができないと凄く寂しく感じちゃったんです。石風呂の楽曲で、輝ける場所が絶対あるだろうにずっとここで留まってるのかって。

—ネクライトーキーは9月23日(月・祝)にマイナビBLITZ赤坂で自身最大規模のライブが決定しましたね。コンテンポラリーな生活では出来なかったことをネクライトーキーではやってる?

朝日:シンセの存在が大きいかな。3ピースのギターロックではできなかった。

—はじめて聴いた時は“リバイバル感”を感じたんですが、今後はどんな活動をしていきたいですか?

朝日:ZAZEN BOYSみたいになりたい。僕がハマった頃の趣味そのままなので、必然的にリバイバルになったのかな? 曲に関しては、僕が10代の頃の音楽シーンがもろに出てるんじゃないかな。どうなるかわからないけど、「石風呂の名前でやってください」って曲を作ることはあるにはあるんですけど、それってアーティストとしての創作活動とは違う気がしてて・・・いつかボカロで何にも縛られない個人制作のアルバム1枚とかは作ってみたいですね。


「殿堂入り」から交流が広まってくのもボカロの魅力

—プレイリストにはニコニコ動画で「殿堂入り」を果たし、その上位(100万回再生以上)で活躍している若手クリエイターが多いですね。朝日さんもその一人です。

朝日:殿堂入りって何万回再生ですか?

ウォルピスカーター:ニコニコだと10万回再生で「殿堂入り」、100万回再生で「伝説入り」ですね。

朝日:むかし、10万で「殿堂入り」してたのってすごいですね!(笑)。

ウォルピスカーター:目標でしたもんね10万再生。

—当時は大変だったんですよね。

ウォルピスカーター:いまはYouTubeだと100万再生が当たり前のような時代ですけど、当時は10万再生するのも大変でした。 

朝日:当時は100万再生されてる楽曲なんて本当に無かったですね。

—すこっぷさんも「殿堂入り」されていますが、当時はいかがでしたか?

すこっぷ:「殿堂入り」はみんなの目標でしたね。僕も4曲目くらいではじめて再生回数が10万を越えたんですけど、すごい嬉しかったですね。曲の反応をもらえるのもあるんですけど、自分がすごい好きだったボカロPとかに、「殿堂入り」がキッカケで知ってもらえたのは嬉しくて、そういうところから交流が広まってくのもボカロの魅力だったりします。

朝日:交流の話で思い出したんですけど、すこっぷさんがいたレーベルは羨ましかった(笑)。

すこっぷ:当時話題になったんですけど、「BALLOOM」っていうレーベルができて僕とかハチさん(米津玄師)、とくさん、wowakaさん、 OSTER PROJECTさんとか・・・当時活動していた人達で集まってレーベルを作って、トークライブをしたり1人ずつアルバムを出したりしていました。

—錚々たるメンバーですよね。

朝日:あれは、ホントに吐き気がするくらい羨ましかった(笑)。

一同:(爆笑)。


n-bunaさんの曲は切ない感じと物語性が見えるのがすごい魅力だなって

—最近の三パシもだけど、少しコンセプトのあるものが増えているように感じます。プレイリストにあるヨルシカの「心に穴が空いた」も前作『だから僕は音楽を辞めた』から続いたストーリー性のある作品です。

みあ:純粋に「いいなぁ」って思いましたね(笑)。

—ところで、話が脱線しちゃうんだけど、みあさんがこの間Twitter上で「n-bunaさんとお食事に行った」って書かれてましたね。

みあ:そうなんです、ホント街でたまたますれ違って!(笑)。私のマネージャーが気がついて「n-bunaさんじゃないですか!」ってなって。前作『だから僕は音楽を辞めた』の特典についてるスウェーデンの写真を自分で撮りに行った話をしてくれました。ヨルシカはわたしも好きでずっと聴いてますね。

—ヨルシカのファンの方は多いですよね。他にもヨルシカのファンの方が座談会に参加されていたような?

すこっぷ:はい、僕も好きです(笑)。同じように活動してる人は気になりますね。あと三月のパンタシアだとヨルシカのn-bunaさん含め決まった何人かのクリエイターの方が書き下ろすことが多いんですけど、自分もやっぱり勉強する側で聴いてるので、「青春なんていらないわ」もギターロック・四つ打ち系・夏がテーマって、それだけきくとアッパーな感じなんですけど、n-bunaさんの作風とみあさんの声で切ない感じが出ていて、それが魅力だと思う。n-bunaさんの曲は切ない感じと物語性が見えるのはすごい魅力だなって思て、自分も見習いたいです。

—ネット発の若手クリエイターが活躍する音楽って本当にいろんなスタイルがあるけれど、みなさんは今後どんな活動をしていきたいですか?

ウォルピスカーター:僕はライブをなるべくやらない方向で行きたいなと思ってます。そこだけ聞くとマイナスに捉えられちゃうかもしれないですけど、例えば動画投稿、音源制作、今やらせていただいているラジオのお仕事だったり、それに絡めたクリエイティブなことができれば良いですね。それこそ、僕も小説とか映画が大好きなので、ゆくゆくは脚本を書いてみたいという気持ちはあります。オリジナル曲に関しては、やっぱり自分の好きな方に書いてもらうのが一番いいなと思うので、これからもたくさんの方とコラボしていきたいですね。

みあ:三パシの中では物語性を大切にしていきつつ、ライブをやって一歩ずつ大きくしていけたら良いですね。ライブも全部ストーリーを作ってやってるんですけど、そういったコンセプチュアルなライブを楽しんでもらいたいので小説もあわせて楽しんでもらえて、それをさらにライブで体感しに遊びに来てもらえたりしたら嬉しいと思います。イラストに関しても1アイテムは非現実的なものを入れようと意識して作っているので、「これってどういう意味だろう?」っていうのをみんなで考察して楽しんでもらえたらいいな。

朝日:自分が満足いく曲を作れたらなって思います。あと、最近はVR関係で仕事してる方としゃべって、ライブをVRで体感できたら楽しそうだなって言うのがありますね! 「ライブ会場まで来い」っていわれても来れない人もいるじゃないですか? 例えば部屋から出るのが怖いとか、ずっと病室にいるとか、ライブハウスがいやだとか・・・でも、そういう人たちにも見て欲しいなって思います。

すこっぷ:最近は楽曲提供がメインになってるんですけど、またオリジナルのデモをやりたいなって思ってるんです。それはボカロかもしれないし、誰かと組んでヨルシカみたいにユニット組むのも楽しそうだなって思うし、楽曲提供とは別に何かできたら良いなとは思ってますね。


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