欅坂46、初武道館となる3rdアニラで“新時代のアイドル像”描く

邦楽 総合 特集 ライブ・フェス
後藤千尋

新元号「令和」を迎え、アイドルグループの欅坂46が5月9日からデビュー3周年記念ライブ『欅坂46 3rd YEAR ANNIVERSARY LIVE』(通称:3rdアニラ)を3夜連続、東京・日本武道館で開催した。同公演は毎年恒例となっているアニバーサリー・ライブで、今年は4月4日から6日までの3日間、初めて大坂・フェスティバルホールでも開催され、6日間の総動員数は約3万8千人にも達した。

欅坂46が、2016年に「サイレントマジョリティー」で鮮麗なデビューを飾ってから8カ月という猛スピードで『第67回紅白歌合戦』に出場したことは記憶に新しい。瞬く間に国民的人気アイドルへの階段を駆け上がった彼女たちだが、昨年1月に行われる予定であった武道館公演は、センター・平手友梨奈の右腕負傷の為に断念。欅坂46にとっては、この日がリベンジでもある初の武道館公演となった。

最新シングル「黒い羊」の活動終了をもって卒業を控える長濱ねる、そして昨年11月に応募総数12万9182人の中から欅坂46に加入した2期生9人を含めた計26人が挑んだ90分間ノンストップで駆け抜けたステージは、とても頼もしく、ブレることなく共鳴する姿に敬意を払わずにはいられないほどであった。 

大阪公演ラストに続く「危なっかしい計画」

2期生として加入した井上梨名と松田里奈による影アナにより場内が温まったところで、耳をつんざくような轟音が響きわたった。一気にステージが暗転すると、さっきまでのムードが嘘のように、緊張が走る。白い照明に照らされたステージに現れたメンバーは、「危なっかしい計画」のフォーメーションでスタンバイ。4月の大阪公演のアンコールで披露された同曲だが、そんな大阪公演からのバトンを受け継ぐように副キャプテン・守屋茜が顔を上げ“武道館ラスト、行くぞー!”とゴールへ向けてスタートの声を張り上げた。

白いタオルを笑顔で振りまわすという粋な演出にテンションも高揚する中、両サイドのモニターにはこれまでの3年間のハイライトや大阪公演の映像などが映し出され、そのバトンはしっかりと繋がれた。大阪公演はメンバーのブログなどで“笑顔のアニラ”と称されていたが、そのステージが一瞬で体現されたようなライブに自然と笑顔が溢れ、多幸感に包まれた。

大阪アニバーサリー・ライブは「危なっかしい計画」で幕を閉じました。今回の3rdアニバーサリー・ライブは大阪と東京をまたいで一つのライブが完結いたします。この後も、東京のライブも最後まで楽しんでいって下さい。以上、欅坂46でした。 ——菅井友香

欅坂46のもう一つの顔

メンバーがおなじみの挨拶でステージを後にすると、欅坂46のイメージカラーであるグリーンの照明とサイリウムが暗闇のステージに浮かび上がり「欅坂」「46」というコールから「Overture」の流れでグレーのコートに衣装チェンジしたメンバーがステージに再び登場した。砂時計のステージセットを背に「避雷針」「大人は信じてくれない」「月曜日の朝、スカートを切られた」「エキセントリック」といったダーク性を持つ楽曲の世界観へ引き込んでいく絶望を噛み砕くような楽曲を畳みかけたこの武道館公演は、大阪公演とはひと味違った欅坂46のもう一つの顔であり、世間に問いたいものが詰め込まれた“これぞ欅坂46”と言わんばかりの秀逸なものだった。そして、メンバーもそんな楽曲ならではのこれまで見せたことの無い表情を自由に表現した場面も多くあった。

「心の葛藤」や「対立」「孤独」にどこまでも向き合う

「月曜日の朝、スカートを切られた」の世界を表現するダンスは「黒い羊」の振付を担当している世界的なダンサー・TAKAHIRO氏による振付だが、「黒い羊」のダンスで表現されている“生きることの葛藤”、“さまざまな人との共存”、“対立”などを抱きしめ合い、突き放す振付のコンテンポラリーダンスに通じる部分が同曲にも存在している。

 こうした葛藤・共存・対立と、絶望を目の当たりにしながらもとどこまでも真っすぐに向き合い、意志を貫く主人公の存在、たくましさのようなものがハッキリと伝わる魅力溢れた直球勝負のセットリストでライブは展開された。

ずっと見てきた欅坂46というグループに入れて『ANNIVERSARY LIVE』というとっても大切なライブに2期生も参加させて頂くことが本当に嬉しいです。今回のライブは自分の中でやりたかった曲が多くて。「エキセントリック」も好きだし、みなさんと最後まで突っ走って行きたいと思います。 ——山﨑天


欅坂の楽曲をお届けすることができて本当にうれしい。これは自分の話になっちゃぅんだけど、「二人セゾン」のしなやかなダンスが苦手で・・・すごく練習して鈴本(美愉)さんにも教えていただいたので、すごく嬉しかったです。——森田ひかる

後のMCで2期生の山崎、森田の2人も語っていたが、3年という月日で新たに加入したメンバーと見せた一体感のあるパフォーマンスは見応えがあった。「エキセントリック」では真っ赤な照明がステージを照らす中、最年少・山崎も楽曲の持ち味を全力で伝えきり、続く「黒い羊」に収録された「Nobody」でも女性らしい艶のあるダンスで新たな欅坂46の一面を見せてくれた。矢継ぎ早に披露されるキレ味の良いダンス。

それに加え、春夏秋冬の中に現れたもう1つの季節を彩るような軽やかなステップとしなやかなバレエの動き取り入れたダンスにあわせて歌う名曲「二人セゾン」では、これまでと空気を変え、森田も練習の成果を発揮。息のあったダンスを見せ前半戦の8曲を終えた。序盤から見せた全メンバーが共鳴してこその一体感を全身で感じ、自ずと4年目の彼女たちに期待が膨らんだ。


3年目にして見えるそれぞれの武道館

 3周年のアニラも千秋楽という挨拶から入ったMCでは、欅坂46全員が武道館に立つことがはじめてだということで改めてファンへの感謝が伝えられ、それぞれの想いが述べられた。そして、時にはユーモラスなMCを交えながら本編とは対照的な雰囲気で場を和ませてくれた。

欅坂の目標でもあった武道館に立たせて頂いて、ひとり一人のお顔も見えてすごく近くて、武道館に立てることって本当にうれしいですね。この3年間、皆さんの支えがあってからこそ舞台に立ててると想うので、このステージで何か恩返しできたら良いなって思ってます。——小池美波

こうやって皆さんに見守って頂きながらパフォーマンスできることが誇りだなって思ってます。個人的にはここが地元で欅坂に入る前からこの日本武道館を通ってた場所なのでそこでやらせて頂けるなんてうれしいなって思ってます。——菅井友香


1番が決められないくらい本当に濃い3年間だった。——渡邉理佐


今まで生きてきた中で濃い3年間だった。メンバーにもファンの皆さんにもお会いできたし、すごい幸せ者だなって改めて思いました。タピオカも飲んだから元気でた。3年間で1番飲んだ飲み物だなって。——土生瑞穂


アート性の高いパフォーマンスと新たな試み

この砂時計が3年の月日を示してくれているんだよね。これはこの公演が終わっても砂時計が流れ続けているんですよ。時の流れっていうのはみなさん平等で、この時間をみなさんと大切に、1人ひとりにとって特別で忘れられない日が、このライブで刻めていけたらいいなと思ってます。—キャプテン・菅井友香

序盤からステージ後方に設置されていた逆三角形の三連になった巨大な砂時計。3つの逆三角形に3年の想いを込めて、さらにそんな時の流れを強く進めるように自分たちらしい方法で欅坂46のアイデンティティを表現した後半戦「キミガイナイ」。

1周年のアニラでも演奏された同曲だが、そんな楽曲がスクリーンに映し出されたメンバー自身による影絵(シルエット)の演出でさらに新しく産声を上げた。彼女たちの才能が一段と花開く瞬間、いまという時の流れの中に立ち会えたことが何より喜こばしい。プレゼントにリボンをかけて手渡されたような感覚を覚え、真剣にそのパフォーマンスに見入ると、そのシルエットは男女の物語を描いていた。

木や街、犬や猫・・・といった動物をシルエットで写し、世界中を旅するかのように男女の心情風景を描くストーリー。消えてしまった彼女を探し、再会し2人でボートに乗る様子などスクリーンを通して描かれたアート性が高い演出は新時代の新たなアイドル像を感じさせた。

国民を虜にする欅坂46

私たち、ユニット曲なしで走り続けました! これからも欅坂46は手を取り合って新しい道を切り開いていきたいと思いますので、応援よろしくお願いします!—菅井友香

鮮やかな緑の森の映像の中へと飛び込んだ錯覚に陥りそうになった「もう森へ帰ろうか?」、「東京タワーはどこから見える?」と、後半戦も勢いは留まることなくアンコールへ向けてエンタメ性が増す予想以上のライブに、目をこらし、夢中になった。

「Student Dance」ではスマートフォンのムービーでメンバーを撮影する演出や椅子を使用し、火柱があがるステージはさらに続いて「語るなら未来を…」を披露。色鮮やかな紙吹雪が舞った「風に吹かれても」、名曲「アンビバレント」では銀テープの特効が勢いよく降り注ぎ、平手が側転するアクロバティックなダンスを見せ、熱を帯びたまま走り続けた本編は終了。




最後に見せたセンター・平手の涙

アンコールに応えて再度ステージに現れたメンバーは、これまで披露されることの無かった「黒い羊」を千秋楽で初披露。ゴールドディスクミリオン認定された同曲は、身動きができないほどの世界観を目の当たりにさせられ、言葉にできない感情が心の内でうごめいているのが分かった。それは、欅坂46が持つ心の内のさまざまな感情を抉るような絶望という深い場所に、ライブを通してダイレクトに触れていたからだろう。

真っ赤な薔薇の花びらが散らばったフロアに平手が彼岸花を抱いて横にうずくまる映像がスクリーンいっぱいに広がって次第に瞳へとカメラがズームで近づいてくると、暗転して同曲がはじまった。葛藤・共存・対立など不安定な揺れ動きを見せる平手が抱きしめ合い、突き放すお馴染みのダンスでクライマックスへの階段を上る。ミュージックビデオの衣装を着てのパフォーマンス。ラストは小林由依がステージに彼岸花をたむけたのが印象的でもあり、ライブ全体を総括するような「黒い羊」の衝撃は脳裏に焼き付くものとなった。

 エンドロールが流れる中、最後の最後でスクリーンに映し出された横たわる平手の瞳から流れる涙は、白い羊の群れには属さずに黒い羊(厄介者)であることを受け止めた覚悟の涙。決して後ろ向きなものではない。現実を受け入れ、強く歩もうとする勇敢な戦士を描くこれほどの楽曲を、ここまで完成度を高めて示す彼女たちの姿は最高にクールでカッコよかった。新時代を切り拓く欅坂46の未来を見逃すわけにはいかない。

(撮影:上山陽介)


後藤千尋

1987年生まれ。編集者、ライター。大学在学中よりライターとしての活動をスタート。その後、音楽メディア「OKMusic」「EMTG MUSIC」編集部を経て、2020年より編集プロダクション Why Not!を立ち上げ、主にファッション/エンタメ/ビジネス関連の仕事に携わる。動画企画、撮影、ラジオDJをしていたことも。https://www.w-not.jp/

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