Eveニューアルバム『廻人』全14曲&MV徹底解説

Eveニューアルバム『廻人』全14曲&MV徹底解説
阿部裕華
阿部裕華

インターネットシーンから飛び出し、今や日本を代表するトップアーティストへと昇りつめたEve。22年3月時点で、YouTubeチャンネルの登録者数375万人、総再生回数は15億回突破、テレビアニメ『呪術廻戦』の主題歌「廻廻奇譚」のMVだけでも驚異の2億回超え、他楽曲のMVも軒並み1,000万再生を超えている。

出典元:YouTube(Eve)

そんなEveが、約2年ぶり3枚目のメジャーアルバム『廻人』を3月16日にリリース。前述した「廻廻奇譚」をはじめ、一度は耳にしたことがあるであろうロッテガーナチョコレート『Gift』テーマソング「平行線」、Spotify まとめ / プレミア TVCM ソング「藍才」など多数のタイアップ楽曲を含む全14曲が収録されている。一度聴いたら忘れられない軽やかな歌声、楽曲によって変幻自在に色を変えるサウンドデザイン、文学的な表現で美しく繊細に綴られる歌詞など、Eveの持つ魅力がフルに詰まった本アルバムを一曲ずつ解説していく。また、さまざまなクリエイターと創り上げているこだわりのMVについても紹介する。

さらに記事後半には、Eveのメールインタビューも掲載。本アルバムをより深く楽しめる内容をお届けする。


アルバム『廻人』全14曲解説

01.廻人(instrumental)

アルバムの開幕を飾るのは、アルバムタイトル曲である「廻人(instrumental)」。約1分間のインストゥルメンタルだ。ギターのリフレインと重厚なベースで紡がれたシンプルなメロディに、サンプリング音やシンセ音などさまざまなサウンドが折り重なっていく。アルバムのオープニングらしからぬシリアスなナンバーだが、「これが今のEveの創り出す世界観なのだ」と語りかけられているかのよう。“アルバムの開幕”ではなく、“『廻人』の開幕”に相応しい一曲と言えるだろう。

02.廻廻奇譚

TVアニメ『呪術廻戦』第1クール オープニングテーマに起用され、Eveの名を世に知らしめた一曲がこの「廻廻奇譚」だ。《闇を祓って 闇を祓って》《傀儡な誓いのなき百鬼夜行》などかねてより、原作を愛読していたからこそ描くことのできる作品世界に寄り添った歌詞は、『呪術』ファンだけでなく多くのアニメファンをも魅了した。

出典元:YouTube(Eve)

動画配信サイトで視聴する人が増えた近年、オープニングを飛ばさずに見てもらえるかはアニメ業界の一つの課題でもある。オープニングも物語の一部として感じられるテーマソングは非常に重要だ。それを意図しているかはEveのみぞ知るところであるが、疾走感のあるバンドアンサンブルやボーカルエフェクトなど、“聴き飽きることのないサウンド面の工夫”を感じずにはいられない。そんなEveを代表するナンバーとなった「廻廻奇譚」は「廻人(instrumental)」に続き、本アルバムのリード曲と言っても過言ではない。

03.夜は仄か

アルミ缶のプルトップを開けた「カシュッ」という音を皮切りに《今日も生きてしまったな これで何年》と、酒を片手にもの思いにふけっているかのような情景が頭に浮かぶ。そのあとに続く《痛い》《寂しい》《会いたい》《愛されたい》といったフレーズには強い孤独を感じる。しかしその孤独を徐々に引き裂くかのように変化していくアーバンなディスコサウンドが妙に心地よい。

出典元:YouTube(Eve)

MVのアニメーションを手がけたのはタイを拠点に活動する映像クリエイターZem。オレンジをテーマカラーにしていながらも、どこか陰鬱とした作風に目を奪われる。ディスコのリズムに合わせて体を揺らすキャラクターたちに、観ている側もつられてノッてしまいそうな中毒性ある作品だ。「夜は仄か」は“孤独を謳った曲”ではなく、“孤独に寄り添った曲”なのかもしれない。

04.遊生夢死

個人制作アニメーションの祭典『Project Young.』の主題歌として“好きなことを諦めない”というテーマに書き下ろされた「遊生夢死」。タイトルとなった四字熟語は“ぼんやりと生きて夢を見ているかのように死んでいく”という意味だ。自身も一人のクリエイターであるEveは「楽しいことだけではない、苦難や辛さ、その結果がどうであれ行き着く先には美しい未来が待っていると信じてこの曲を書きました」とコメントしている。孤独を背負いながらも好きを追求するクリエイターたちを鼓舞するメッセージが込められているようだ。

出典元:YouTube(Eve)

フォーキーなギターサウンドと雄大なサウンドプロダクションにピッタリなMVも必見。アニメーター/イラストレーターとして活躍しているniLが制作した繊細で幻想的なアニメーションにも注目してほしい。

05.暴徒

Eveをフィーチャーした映画『Adam by Eve: A Live in Animation』の劇中歌であり、書き下ろし新曲である「暴徒」。厨二心をくすぐられるようなダーク色強めな皮肉たっぷりの歌詞と激しいビート。混沌とした感情をむき出しに表現した本楽曲は、常に進化し続けるEveがこれまで培ってきた才能を武器に携えて原点に戻ってきたのかと錯覚してしまうほど、どこか懐かしさを感じる。

映画『Adam by Eve: A Live in Animation』劇中の「暴徒」アニメーションは スタジオカラー所属の吉崎響が担当している、数多くの短編アニメーションやMVを手がけ、国内外問わず高い評価を受けている吉崎とEveのタッグにも注目したい。

06.平行線

ダーク色強めな流れから一転して流れ出すのは、愛らしいミディアムチューンのキラキラとしたピュアソング「平行線」。ロッテ ガーナチョコレート『Gift』のテーマソングとして書き下ろされた本楽曲は、同じくネットシーンから人気を博したヨルシカのsuisとツインボーカルであることも大きな話題となった。2月14日にまつわる情景を綴った歌詞に合わせ、低中音域の男性らしいEveの歌声と透き通った女性らしいsuisの歌声が交互に進行し、タイトルに相応しい距離感が巧みに表現されている。聴き終わった後は、一冊の恋物語を読み終わったかのような満足感だ。

出典元:YouTube(Eve)

MVは数多くのアニメ作品でオープニングアニメーションを手がけている依田伸隆が監督を務めた。「僕らまだアンダーグラウンド」「君に世界」など過去の作品でもタッグを組んでおり、Eveの創り出した“平行線”の世界を見事に演出している。

07.YOKU

グローバルメイクアップブランドKATEによる『KATE欲コレクション』のインスパイアソングとして“欲”をテーマに書き下ろされた「YOKU」。EDMを駆使したフローティングな一曲だ。《会いたい色添えるよ/曖昧なstyleで居よう/I MAKE 正解のない未来へいけ》と韻を踏んだリリックもさることながら、『KATE欲コレクション』で発売されるアイライナーとアイシャドウ…つまり「アイメイク」と掛けた言葉遊びがおもしろい。

MVは『KATE欲コレクション』のパッケージを手がけるイラストレーター米山舞とタッグを組むことが発表されている。Eveメジャー2作目の「レーゾンデートル」以来の米山とのコラボレーションも楽しみだ。

08.蒼のワルツ

アルバム折り返し地点に配されている「蒼のワルツ」は、美しいピアノの旋律とファルセットを駆使したEveの美しいハイトーンボイスが印象的なミディアムバラードだ。曲名に“ワルツ”とついている通り同じテンポが続くものの、サビから開放的なストリングスアレンジを取り入れることで楽曲に抑揚をもたらしている。Eveの妙妙たるサウンドセンスと表現力に脱帽せざるを得ない。

出典元:YouTube(Eve)

アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』の主題歌として書き下ろされた楽曲であるため、本作に登場するキャラクターたちの心情が描かれた歌詞は切なくも愛おしさに溢れている。

09.心海

「蒼のワルツ」に続く「心海」もまた、アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』のために書き下ろされた
楽曲だ(こちらは挿入歌として起用されている)。「蒼のワルツ」はピアノとストリングスで表現された切ないミディアムバラードに対し、「心海」はギターとシンセサイザーで表現された青さを感じるポップチューンだ。NTTドコモのWeb動画「卒業生100万人の答辞」では同楽曲の合唱verが流れており、良質な青春ソングと言えるだろう。

出典元:YouTube(Eve)

以前「いのちの食べ方」のMVを担当したアニメーション作家・まりやすが本楽曲のMVを手がけた。「深い海」と「心の海」をかけ合わせたアニメーション表現は、Eveの描く歌詞の世界観と絶妙にマッチしている。

10.群青讃歌

大人気モバイルゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ!feat.初音ミク(以下、プロセカ)』 のアニバーサリーソングとして書き下ろされたナンバー。タイトル通り“青春を賛美”した爽快なアップチューンだ。歌い手としてボカロ楽曲の「歌ってみた」動画やボカロPとして楽曲を投稿していたEveの軌跡を振り返っても分かるように、《顔も名前も知らない僕たちが/たった1つの音をかき鳴らす》という歌詞はボカロシーンへのリスペクトを感じるほかない。

出典元:YouTube(Eve)

MVのアニメーションを担当したのはイラストレーターのくっか。YouTubeでは「Eve feat. Miku Hatsune ver.」、ニコニコ動画では「初音ミク ver.」のMVを同時公開するという粋な計らいも。青を基調としたアニメーションは爽やかさ満点だ。

11.言の葉

出典元:YouTube(docomoOfficial)

この楽曲は実にシンプルな青春ソングだ。NTTドコモのWeb動画「あの恋をもう一度」に起用されている。いたずらに派手な表現はせず、ストレートな思いを綴った歌詞も王道なロックサウンドもいい意味で“普遍的”を貫き通しているよう。また、《曖昧な 距離感は/僕たちを 平行線のまま/同じ帰り道の途中下って》《届くならもう一度/君に言おう》など「あれ?」と思うリリックが詰め込まれている。そう、この曲は「平行線」と繋がっていると思わざるを得ないのだ。サウンド面はもちろん、ぜひ歌詞にも注目して聴いてみてほしい。

12.藍才

Spotifyまとめ/プレミアムTVCMソングに起用された楽曲で、Eve自身もCMへ出演したことが話題となった。高音と低音をミックスした多重ボーカルが面白い「藍才」。スケールの大きいサウンドと内省的な気持ちから徐々に未来への希望を解放させる歌詞が、開放的な世界観を創り上げている。

出典元:YouTube(Eve)

MVのアニメーションを担当したのはアニメーターのGlens sou。男子高校生二人の青春ムービーかと思いきや徐々に様相を変えていく。映像の中盤から描かれる荒廃した世界はコロナ禍により誰もいなくなった街を彷彿とさせ、終盤にかけて涙なしでは見ることのできないエモーショナルな展開に引き込まれる。MVと共に世界観を味わってほしい一曲だ。

13.退屈を再演しないで

「暴徒」と同じくEveをフィーチャーした映画『Adam by Eve: A Live in Animation』の劇中歌である「退屈を再演しないで」。ファンキーなブラック・ミュージック調のサウンド感と《ブルー》と《ランデブー》や《メロウ》と《イエロー》といった韻をきかせたリリック。

「蒼のワルツ」から「藍才」までの流れを打ち破るかのようなダーク色強めの楽曲をぶち込んでくるのが、このアルバムの妙だ。繰り返される《退屈を再演しないで》というワードは、今多くの人が世の中に抱えている感情を吐露しているかのよう。Eve初期楽曲「お気に召すまま」「トーキョーゲットー」などのMVを制作したWabokuが、本楽曲のMVを手がける。危うげで不穏な空気感の漂うアニメーションは、一気に楽曲の世界観へ引きずり込まれる。

14.アヴァン

出典元:YouTube(『呪術廻戦 ファントムパレード』公式チャンネル<ファンパレ>)

スマートフォンゲーム『呪術廻戦 ファントムパレード』主題歌に書き下ろした「アヴァン」。「“廻廻奇譚”の地続きになるようなイメージで楽曲を制作しました」とコメントしている通り、冒頭のイントロや疾走感のあるロックチューン、《廻って 廻って》といった歌詞は「廻廻奇譚」を彷彿とさせる。この曲から《廻って》最初(「廻人 (instrumental)」)に戻っていく、円を描くような曲順は実に巧妙だ。また、「アヴァン」はフランス語で“前に”という意味を持つ。「このアルバムを皮切りにさらに前へ進んでいこう」という気概も感じる。アルバムタイトル『廻人』の最後を飾るに相応しい一曲だろう。


Eveメールインタビュー「今一番しっくり来る言葉が『廻人』だった」

Q:アルバムタイトル『廻人』の由来を教えてください。

Eve:この2年間、コロナで出口の見えない日々が続いている中で、退屈な日々をずっと“廻”っているような感覚がありました。そこから抜け出していくためには、このアルバムをリリースし、ライブをすることではないか。そして、その先に何か見えてくるのではないかという期待を込めて「廻」という言葉をキーワードにしました。今の僕の気分が現れているんだと思います。

そして、「廻廻奇譚」という楽曲が作品を通して遠くまで届いていった中で「廻廻の人だ」と言われる機会がとても多くなりました。アルバムにとってタイトルというのは自分の顔です、そんなこともあり、今リリースするアルバムに付ける言葉は“廻る人”と書いた『廻人』が一番しっくりくると思い、このタイトルになりました。

Q:本アルバムの楽曲制作について印象に残っていることはありますか?

Eve:今回のアルバム楽曲はさまざまなタイアップソングにもなっています。対面した作品や人間を通して、自分の音楽が新しい形に昇華されていく感覚がとても新鮮で制作は楽しかったです。

そういう意味で、本当にいろんな一面を持つ楽曲が並んだと思います。気に入ってもらえる楽曲があるといいな、なんて思います。

Q:今回のアルバム収録楽曲制作で、今までの楽曲制作から変化したことは?

Eve:意識的に「何かやってやろう」という感覚を減らしていったことです。あまり難しく考えすぎず、常にフラットでいることが大事なんだと『廻人』でようやく気づけました。

Q:ネットシーンで活躍されていたEveさんはMVにも非常にこだわりを感じます。初回限定盤にはMVが収録されているとのことですので、MVに対する思いをお聞かせください。

Eve:たくさんの個人クリエイターの方々や制作スタジオの方々の熱意やこだわり、好きなモノが詰まっていると思います。今回も音楽としっかりすり合わせて創っていったので、MVとして観て聴いて楽しんでもらえると嬉しいなと思います。



阿部裕華
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