洋楽文化の魅力「オモシロ邦題」に復活の兆し

洋楽文化の魅力「オモシロ邦題」に復活の兆し
西廣智一
西廣智一
昭和の時代までは洋楽文化における「邦題」は、ひとつ確立されたものがあった。例えば、エルヴィス・プレスリー「Can't Help Falling In Love」には「好きにならずにいられない」、ビートルズ「I Want To Hold Your Hand」には「抱きしめたい」などの名邦題が付けられ、世代によっては原題よりも邦題のほうが馴染み深いことが多い。そんな邦題文化も、80年代後半を境に衰退。90年代は一部の企画モノや特殊ジャンル(メタル系など)を除いて、オリジナルな邦題と巡り会う機会はなくなっていた。しかし、ここ数年でオリジナリティあふれる邦題が増えつつあるように感じる。 例えばテイラー・スウィフトが2012年にリリースしたアルバム『Red』からの大ヒットシングル「We Are Never Ever Getting Back Together」。日本ではテレビ番組『テラスハウス』のテーマソングに起用されたこともあり、誰もが一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。この曲には「私たちは絶対に絶対にヨリを戻したりしない」という直訳的邦題が付けられているが、今となっては邦題のほうが馴染み深いのではないだろうか。ちなみに同アルバムでオリジナルの邦題が付けられたのは、この曲のみ。続く2014年のアルバム『1989』ではこれに倣ってか、1stシングル「Shake It Off」に「シェイク・イット・オフ~気にしてなんかいられないっ!! 」という微妙な邦題が与えられたのも記憶に新しい。
(YouTube: TaylorSwiftVEVO) 今年に入ってからも、いかにもそれらしい邦題が付けられたアルバムが2作、立て続けにリリースされている。そのひとつは、1月に発売されたスウェードのアルバム『Night Thoughts』だ。こちらには「夜の瞑想」という邦題が付けられ、そのサウンドやアートワークにも通ずる幻想的な雰囲気を漂わせている。また、2月末にはThe 1975の2ndアルバム「I like it when you sleep, for you are so beautiful yet so unaware of it」が発売されたばかり。原題からして長いこの作品、邦題もそれに倣ってか「君が寝てる姿が好きなんだ。なぜなら君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。」と直訳的タイトルが与えられている。どちらにせよ覚えにくいタイトルなので、ファンがどちらを好んで使うのかも気になるところだ。
(YouTube: The1975VEVO) 昔は「お説教」(エアロスミス「Walk This Way」)、「いかすぜあの娘」(キッス「I Want You」)、「ラジオ・スターの悲劇」(バグルス「Video Killed The Radio Star」)、「ハイ・スクールはダンステリア」(シンディ・ローパー「Girls Just Want to Have Fun」)、「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」(ワム!「Wake Me Up Before You Go Go」)など原題からかなりかけ離れたオモシロ邦題がたくさんあったが、さすがに最近はそこまで素っ頓狂なものは少ない様子。日本だけに根付いたこの邦題文化は、ぜひ将来に残してほしいものだと個人的には感じている。
(YouTube: CyndiLauperVEVO)
西廣智一
西廣智一

関連アルバム

最新の記事

    share to facebook share to facebook share to facebook share

    Ctrl + C でコピー