「旅と音楽:サハラ砂漠」〜オアシスに響く“砂漠のブルース”

「旅と音楽:サハラ砂漠」〜オアシスに響く“砂漠のブルース”
栗本斉
栗本斉
見渡す限り、砂、砂、砂。世界最大のサハラ砂漠に足を踏み入れたなら、誰もがその広大な世界に圧倒されるはずだ。太陽の傾きによって刻々とその表情を変えていく美しい砂丘の稜線、砂の城が建ち並ぶトゥンブクトゥに代表される天国のようなオアシスの街。そして、このアフリカ大陸のおよそ3分の1を占める乾いた砂の世界には、実はユニークな音楽文化も多数隠されているのはご存知だろうか。
Tinariwen「Cler Achel」
なかでも、“砂漠のブルース”と呼ばれるシーンを築いたティナリウェンは、その代表的なアーティストだ。手拍子とパーカッションによるトランシーなリズムと、ギター数本が絡みあうブルージーなフレーズ、そして呪術的で神秘的なメロディを歌うヴォーカルが一体化することで、独特のグルーヴを生み出している。メンバーは遊牧民であるトゥアレグ族で構成されており、政治的なメッセージを掲げているのも彼らの特徴といえる。
出典元:(YouTube:KEXP) ▼ティナリウェンが、2007年に大ヒットさせたアルバム『Aman Iman』に収められた楽曲のライヴ・ヴァージョン。歌、手拍子、ギターなどが生み出す酩酊感が最高だ。
Etran Finatawa「Surbajo」
ニジェールを拠点に活動するエトラン・フィナタワもまた、“砂漠のブルース”の代表的なグループのひとつ。彼らはトゥアレグ族とウォダアベ族とのミックスで、ティナリウェンよりもさらにパーカッシヴなサウンドが個性的。大音量で聴いていると、トランス状態に陥ってしまいそうになるほどの迫力だ。
出典元:(YouTube:Thomas Hipp) ▼砂漠の遊牧民たちによって結成されたエトラン・フィナタワのデビュー作『Introducing Etran Finatawa』からの1曲。トランシーなグルーヴ感は彼らならでは。
Gnawa Diffusion「Ombre-Elle」
アルジェリアのグナワ音楽を、ロックやレゲエといったモダンなサウンドで再構築するグナワ・ディフュージョンも、注目したいグループだ。移民の街パリを拠点にしているとはいえ、アラビックなメロディやギンブリと呼ばれる民族楽器の響きを最大限に活かしたエスニック・サウンドで、一気に心をサハラの広大な大地へ連れていってくれる。
出典元:(YouTube:stef bloch) ▼“砂漠のブルース”よりもアラブ音楽のテイストが色濃いグナワ・ディフュージョン。朗々とした歌声で、ほのかに哀愁を帯びたメロディをじっくり聴かせてくれる。 こういった音楽が集結する、“砂漠のフェスティバル”という音楽イベントも、サハラで開催されている。砂漠の中でテント生活しながら聴く“砂漠のブルース”ほど、贅沢な音楽体験はないかもしれない。
栗本斉
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