いまの時代を生きる人たちに聴いて欲しい!! 山口百恵の持つ言葉とメロディの美しさ。

いまの時代を生きる人たちに聴いて欲しい!! 山口百恵の持つ言葉とメロディの美しさ。
森朋之
森朋之

1972年、オーディション番組「スター誕生!」をきっかけに14才でデビュー。清純派アイドルとしてデビューした山口百恵は、その後、早熟な女の子をイメージさせる楽曲で大ブレイク。さらに自立した女性像を歌う大人の歌手、そして普遍的な愛を歌う実力派シンガーへと成長した。1980年の日本武道館公演を最後にわずか21才で引退し、昭和を代表する伝説的な歌手となった。

山下智久が「プレイバック part2」、GLIM SPANKYが「ロックンロール・ウィドウ」を音楽番組でカバーするなど、今も数多くのアーティストに愛され、若いリスナーを魅了し続けている山口百恵。今回 600曲以上に及ぶ膨大な楽曲がストリーミングサービスで解禁されることに敬意を払い、ここでは彼女のキャリアを代表する楽曲をピックアップし、山口百恵の魅力を紐解いていく。


「ひと夏の経験」(1974年)

デビュー曲「としごろ」は、恋のはじまりを描いた爽やかで素朴なナンバー。14才の新人歌手の楽曲としては十分に魅力的だったが、セールス的に成功したとは言い難かった。そこで2ndシングル「青い果実」では大体な路線変更を決断。「あなたが望むなら 私何をされてもいいわ」というフレーズで、世の中に鮮烈なインパクトを与えた。思春期の女の子が危うい恋愛を歌う、いわゆる“青い性”路線のもっとも大きな成果が、翌年リリースされた「ひと夏の経験」。「あなたに女の子の 一番大切なものをあげるわ」という歌詞、清純と早熟のなかで揺れる歌声は、いま聴いても驚くほどにスリリングだ。


「横須賀ストーリー」(1976年)

作詞・千家和家、作曲・都倉俊一のタッグにより、「ひと夏の経験」「冬の色」などのヒット曲を生み出した山口百恵は、デビュー3年目の1976年の夏に大きなターニングポイントを迎えた。きっかけは、作詞・阿木燿子、作曲・宇崎竜童による「横須賀ストーリー」。不良っぽいイメージのロックンロールバンド“ダウンタウン・ブギウギ・バンド”でヒットを飛ばしていた阿木、宇崎、そして、歌謡界を代表する存在となっていた山口百恵のコラボレーションは、当時のシーンに大きな衝撃を与えた。自らの意思を貫く女性像を提示したこの曲は、キャリア最大のセールスを記録。彼女自身も鮮やかなイメージチェンジを遂げた。


「プレイバックPart2」(1978年)

阿木燿子・宇崎竜童の制作チームにより、「夢前案内人」「イミティション・ゴールド」と“ロック×歌謡曲”を軸にした楽曲を次々と発表し、70年代後半の音楽シーンを牽引。その頂点はおそらく、1978年5月に発売された「プレイバックPart2」だろう。心地よいスピード感をたたえたメロディ、そして、女性の強さを全面に押し出した歌詞が一つになったこの曲は、誰もが認める山口百恵の代表曲だ。特に“馬鹿にしないでよ”というサビの台詞は、昭和歌謡史に刻まれるキラーフレーズだ。クールビューティ的なビジュアルにもさらに磨きがかかった彼女はこの年、第29回NHK紅白歌合戦のトリを史上最年少でつとめ、歌謡界の頂点に立った。


「秋桜」(1977年) 「いい日旅立ち」(1978年)

才能と個性を併せ持ったシンガーソングライターと組み、魅力あふれる楽曲を送り出したことにも注目してほしい。1977年には、さだまさしの作詞・作曲による「秋桜」を発表。叙情性に満ちた旋律、“明日嫁ぐ私”と年老いた母親との心の交流を描いた歌詞を軸にした同曲で彼女は、その豊かな歌唱力を改めて証明してみせた。

谷村新司の「いい日旅立ち」は、日本各地の情景、両親とのつながりを描き出したバラードナンバー。日本語の美しさを活かしたこの曲は、桑田佳祐、矢野顕子、氷川きよし、スキマスイッチなど数多くのアーティストにカバーされるなど、日本のスタンダードとして浸透している。


「さよならの向こう側」(1980年)

1980年3月に婚約、芸能界からの引退を発表した山口百恵は、10月5日、日本武道館でラストコンサートを開催。その最後の曲として歌われたのが、31枚目のシングル「さよならの向こう側」だ。阿木燿子、宇崎竜童によるこの曲は、引退を決意した心境、ファンに対する感謝をテーマにしたバラード曲。ドラマティックなメロディ、豊かな感情を込めたボーカルは、7年半の活動のなかで辿り着いた“歌手・山口百恵”の集大成と言っていい。“Thank you for your everything/さよならのかわりに”という最後のフレーズを歌い上げ、ステージにマイクを置いて去ったパフォーマンスも伝説だ。

わずか8年弱の活動で、日本のポップスの歴史に名を残す存在となった山口百恵。彼女の音楽性、佇まい、優れたボーカルは、後世のアーティストにも大きな影響を与えている。私見だが、彼女の匂い立つような官能性は椎名林檎のスタイルにつながっているし、揺れる感情を抱えながらも、個として生きる強さを描きだす楽曲は、あいみょんの作風とも結びついてる。日本語の響きを活かしたリリック、豊かな叙情性を帯びたメロディ、表現力に富んだボーカルは、現在の10代、20代のリスナーにも訴えるはず。ストリーミング解禁をきっかけにして、山口百恵の名曲が“再発見”されることを願う。


オススメプレイリスト

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