デビュー35周年を迎えた中村あゆみの現在

デビュー35周年を迎えた中村あゆみの現在
森朋之
森朋之

デビュー35周年を迎えた中村あゆみから、ベストアルバム「Ayumi of AYUMI〜35th Anniversary BEST 完全版」が届けられた。「翼の折れたエンジェル」「ちょっとやそっとじゃCan’t Get Love」などのシングルを収めた「DISC1」、中村あゆみ自身が厳選した名曲のほか、プロレスラーの鈴木みのるの入場テーマ曲の最新ヴァージョン「風になれ〜The King of the World」、2018年12月に急逝したギタリスト・鎌田ジョージに向けて歌詞を書き直した「Precious friend」(10thシングル)などを収録した「DISC2」による本作。35周年のキャリアを追体験できると同時に、現在の彼女の音楽性を体感できる充実のベストに仕上がっている。今回のインタビューでは、ベストアルバムの制作はもちろん、いまの中村あゆみのモードについても語ってもらった。


——2015年からワンマンライブを再開。精力的な活動が続いています。

結婚、出産、離婚を経験して、音楽活動を再開させたのが2004年くらいなんですね。

久しぶりに戻ってみたら、音楽業界がすっかり変わっていたんです。予算が少なくなっていたし、レコード会社もどんどん縮小されて。「これは路上で歌う根性がないと戻れないな」と思って、「駅でもどこでも歌います」って言ってたんですが、そのなかでショッピングモールでのインストアライブをはじめたんです。10代の頃に私の曲を聴いてくれていた方の多くはパパやママになっていて、子供をつれて、ショッピングモールにいたんですよ。実際、ライブをやると1000人単位の方が集まってくれて、CDも200〜300枚くらい売れて。シングルマザーだったから、「とにかく子供を育てなくてはいけない」と思っていたし、営業もやりました。80年代にテレビ局のADだった人がプロデューサーになっていたり、企業家として成功したファンの方がパーティーに呼んでくれたり。

——その後、ライブ活動も本格化して。

ちょうど50才のときに、いまの事務所の社長と知り合って、「アーティストはコンサートを続けていないとやせ細ってしまう。ワンマンコンサートをやろう」と言ってくれたんです。最初は渋谷のMt.RAINIER HALL(SHIBUYA PLEASURE PLEASURE)。次の年は川崎クラブチッタで、去年と今年は渋谷のさくらホール。少しずつ規模が大きくなってますね。ただ、インストアライブも営業も好きなんですよ。私のことをあまり知らない人たちを一瞬で振り向かせて、歌を聴いてもらうのって、クセになるんです(笑)。エンターテイナーとしての自分が好きなんでしょうね。

——ストリーミング・サービスの普及もあり、音楽の聴かれ方も大きく変わりました。

いまは自分で好きなプレイリストを作る時代ですよね。そのアーティストが好きというより、「この曲もあの曲も聴きたい」という感じで。全世界がそうなっているので、それに対応した作品を作っていけばいいのかなと。

——今回のベストアルバム「Ayumi of AYUMI〜35th Anniversary BEST 完全版」のDISCに収録されている、中村さんセレクトの楽曲はまさに“プレイリスト”ですよね。

完全にそうですね。シングル以上に人気がある曲もあるので、それも収録したくて。「風になれ〜The King to the World」(プロレスラー鈴木みのる入場テーマ曲)は、みのるくんから「海外のレスラーから、“あの曲はどこで買えるんだ?”って聞かれるんだよ」って言われていたんですよ。

——このベストをきっかけに、これまでの名曲、代表曲を聴き返すリスナーも多そうですね。1984年のヒット曲「翼の折れたエンジェル」など、デビュー当初の楽曲に対しては、どんなふうに感じていますか?


出典元:YouTube(Warner Music Japan)

高橋研(中村あゆみの初期の楽曲を手がけたプロデューサー)の楽曲のファンの方もいらっしゃいますからね。高橋研の楽曲を中村あゆみが歌うことで支持されたところも大きいし、その頃を否定することはできないので。一時期、その頃の楽曲を歌うのがイヤになったこともあって、それで高橋研のもとを離れたんですけど、年月が経つとすべて愛おしく感じますね。チャートに入った曲も多いし、その歴史があって、いまの私があると思っているので。ライブでリアレンジするのも楽しいんですよ。私は「こういうふうにやってみよう!」と言うだけで(笑)、バンドのメンバーは困ってるかもしれないけど、少しでも良くしていきたいから。

——今回のベストに入っている「Jin Jin Jin」は“ニュー・ダンス・ヴァージョン”ですからね。スペシャル・ボーナス・トラックとして収録されている「Precious friend」は新しい歌詞になっているとか。

そうなんです。「Precious friend」の歌詞は高橋研のもとを離れるときに書いたもので、すごく直接的なんですね。ただ、よく考えてみると高橋研は“friend”ではなくて、恩師、監督、プロデューサーなんですよ。このタイミングで「私にとっての本当の“friend”ってどういう存在だろう?」と考えたんですが、「まさか(鎌田)ジョージ…?」と思い至って。試しに一行目を書いてみたら、そのまま10分くらいで歌詞が完成したんですよ。復帰後の営業にも付き合ってくれたし、ホールライブに戻ってこれたことをいちばん喜んでくれたのもジョージなんですよね。


——現在の中村さんの心境も反映されているんですね。

ええ。私はいろんな音楽が好きで、あれもやりたい、これもやりたいというタイプなんですが、鎌田ジョージがいてくれたおかげで、ロックという軸を持つことができたと思っていて。そういう意味でも、デビュー35周年を記念したベストを出せたことはすごく良かったなと。心残りだった部分を修正できたし、このベストを聴いてもらえれば、私の歴史もわかってもらえるし、この先のコンサートも楽しんでもらえると思うので。

——相川七瀬さんとのプロジェクト「ANNA」が始動するなど、音楽活動の幅も広がっていて。この先も楽しみです。

出典元:YouTube(avex)


娘が成人したので、そろそろ自分のために生きてもいいかなと(笑)。若い世代のアーティストとコラボレーションしたいという気持ちもあるんですよ。この声に興味がある方がいれば、ぜひアプローチしてください!


【中村あゆみプロフィール】

1984年デビュー。「翼の折れたエンジェル」を始めシングル35枚、アルバム29枚をリリース。2019年7月にデビュー35周年ベスト『Ayumi of AYUMI~35th Anniversary BEST 完全版』発売。8月25日からは「Ayumi Day Special」ライヴツアーを開催。8月25日:(東京)渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール / 8月31日:(福岡)都久志会館 / 9月28日:(大阪)松下IMPホール

中村あゆみオフィシャルサイト
http://ayumi-nakamura.com/

ワーナーミュージック・ジャパン中村あゆみサイト
https://wmg.jp/nakamura_ayumi/


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