矢川葵(Maison book girl)が語る 松田聖子の魅力とアイドルポップス論

矢川葵(Maison book girl)が語る 松田聖子の魅力とアイドルポップス論
山本雅美
山本雅美

最近、若い世代の中で80年代前後のアイドルポップスが注目を浴び、再評価される機会が増えています。単なる懐メロとしてではなく、いまの時代の作品にはない、詞の世界観やメロディなどに“新鮮さ”を感じ、支持する層が生まれつつあるようです。今回はそんなリスナーの一人でもある Maison book girlの矢川葵さんをゲストにお迎えしてお話をお聞きします。 Maison book girl (以下 ブクガ_)は現代音楽とアイドルを融合させた唯一無二の存在として注目を集め、2020年1月にはLINE CUBE Shibuyaでワンマンライブを大成功させた注目のグループです。


出典元:YouTube(Maison book girl)

その活動の傍らで、矢川葵さんは2020年7月から音楽インターネットラジオ番組「LIKESONG」のレギュラーパーソナリティーを担当。平成生まれのアイドルが80年から00年代のアイドルソングやポップスを愛情を持って紹介する番組として注目が集まっています。そんな矢川さん大好きな松田聖子やアイドルポップスについてお話を伺いました。


矢川葵が80年代のアイドルソングに目覚めた理由

ー矢川さんが 昔のアイドルソングを好きになったきっかけはなんだったのですか?

矢川:おばあちゃんの家に母が過ごした部屋がそのまま残っていたんです。そこには母が集めていたファンシーな雑貨や、昭和の頃に流行っていた丸文字だらけのアルバムとか日記帳などがあって、小さい頃、それを見るのが好きだったんです。アイドルのレコードもあって、ジャケットとか可愛いなーと思っていました。それに80年代頃の歌謡曲を特集したテレビ番組が放送されると、母がよく歌っていたんです。それがきっかけで松田聖子さんや当時のアイドルを知るようになりました。

インタビュー時に大好な松浦亜弥のアイテムを持ってきてくれました。

ーその頃から、いろんなアイドルの曲を聴くようになったんですか?

矢川:小学生の頃はリアルタイムのあやや(松浦亜弥)とか、モーニング娘。が好きでした。中高生の頃になると、周りの友達はアイドルを卒業してバンドの曲を聴き始めたんですが、私には性に合わないというか、ハマることができなかったんです。それで私が好きな曲ってなんだろう?と探し始めたら、母が歌っていた松田聖子さんがいいなと思うようになって。ヒット曲だけじゃなくて、アルバムの収録曲とかも掘っていくようになりました。

ー周りの友達と違って、矢川さんは松田聖子にいくわけですね。

矢川:「ザ・ベストテン」など当時の映像も見ていると、聖子ちゃん以外にも「中森明菜さん、かっこいいな」とか「キョンキョン、可愛いな」とか、自分の好きなタイプのアイドルの曲を調べていくのが楽しくなっていきました。


SNSでも矢川さん視点の80年代アイドルの投稿も。最近、田原俊彦の魅力を知ったとのことです。


矢川葵にとって松田聖子のこの5曲

ー80年代以降のアイドルの中でも、特に松田聖子さんへのリスペクト感がすごいですよね?

矢川:いろんなアイドルが好きなんですが、私は「箱推し」ではなくて「単推し」タイプなんです。聖子ちゃんは、ひとりでステージを作るところがすごくカッコいいなと思いました。しかも声も可愛くて上手だし、歌詞も素敵です。そして歌だけなく、「聖子ちゃんカット」という髪型とか、「ぶりっこ」という言葉が生まれたのも聖子ちゃんがきっかけだったということを聞いて、すべてのアイドルの元祖が聖子ちゃんだったんだなって思えるんです。

ーこの本はなんなんですか!すごいレアな感じですね。

矢川:古本屋さんで見つけて買いました。聖子ちゃんの丸文字がそのまま掲載されていたり、普段のままの写真がそのまま掲載されていたり、本当に可愛いです。

ー矢川さんにとっての松田聖子ベスト5を聞きたいんですが、まずナンバーワンソングにあげるとしたらどの曲ですか?

矢川:「天国のキッス」です。白いワンピースで歌っている姿も、首を傾げた仕草、小さな手の振りとか全部可愛いです。振り付けは、聖子ちゃんが歌詞の世界観に入り込んでいるようで、聖子ちゃん自身が思った動きをしてるのかなとさえ思えるんです。



ー確かにひとつひとつが可愛いですね(笑)。

矢川:あとは「ピーチ・シャーベット」「赤い靴のバレリーナ」とか・・

ー・・・。聴いたことがないです。アルバムの曲なんですか?

矢川:私の一番好きなアルバムが『ユートピア』で、そのアルバムに収録されてる曲です。「ピーチ・シャーベット」は、私が好きなレトロな喫茶店にいる風景が思い浮かぶんです。



ー「赤い靴のバレリーナ」も、いまの時代にはないゆったりしたテンポで恋愛感情を表現してますね。

矢川:「赤い靴のバレリーナ」を聴くと、この曲の主人公になった気分になれます(笑)。前髪を切りすぎた時の気持ちとか、恋をしてほんの少しだけ浮き足立ってふわふわした気持ちとか、わかる感じがします。

ー今日は「ユートピア」のレコードも持ってきてくれたんですね。

矢川:これは中古レコード屋さんで買って部屋に飾っています(笑)。

ーそんなに想い入れがあるんですね。「セイシェルの色にそまり、 いまこころはあなたへのシンフォニー」というコピー、すごいな。昔のLPレコードのタスキってやっぱりいいですね。

矢川:コピーの終わりは「聖子。」です(笑)。収録されている曲名で文章が構成されているのも素敵ですよね。

ー次に選んでくれたのが「瞳はダイアモンド」です。

矢川:サビ終わりの“瞳はダイアモンド” のパートが「泣き節」なんです。“瞳・は・ ぁ“という声が高くなるところです。ここがすごいんです!何度もカラオケで練習してます。


ー最後にあと1曲選んでもらえますか?

矢川:たくさんありすぎて選べないんですけど・・・「ガラスの林檎」ですかね。この曲も動画で見たんですけど、ずっと泣きそうな表情で歌っている姿が印象に残りました。女の子が切ない顔で歌う姿が好きなんです(笑)。



松本隆が書く詞の世界観

ー今日、選んでくれた松田聖子の曲は、詞がすべて松本隆ですね。矢川さんは松田聖子を聴いているうちに、松本隆にも興味が湧いてきたと言って、ラジオでも「松本先生」と丁寧に呼んでましたね。

矢川:そうです。かなり掘りました(笑)。

ー矢川さん世代の女の子が松本隆の世界観がいいなと思えるのは、どんな点なんでしょう?

矢川:風景が思い浮かぶ感じとか、私の知らない言葉が出てくるのもツボなんです。「白いパラソル」に出てくる“風を切るディンギー”ってなに??とか。「渚のバルコニー」で“バルコニー”がタイトルになる感じも、いまの時代とは違う空気が伝わってきます。

ー松本隆の詞で一番印象に残っている歌詞のフレーズってありますか?

矢川:「赤いスイートピー」の “なぜ あなたが時計をチラッと見るたび 泣きそうな気分になるの? ”という歌詞です。



こんなシチュエーションに立ち会ったことはないけど、すごく切ない気分になったり、なぜか懐かしい気分にさせられるところが、すごく好きですね。

ー歌詞の文字を読むと“泣きそうな気分になるの?”という疑問形なんですね。深いですね。

矢川:当時の作詞家や作曲家の方は、ひとりのアイドルという女の子のことだけを考えて曲を作っていたんだと思うんです。いまのように大勢のアイドルグループだと「ここ歌いたいのに・・」と思っても歌えないこともあるじゃないですか。ひとりのアイドルのために作られた曲ってすごいです。だから「この人が歌う、このフレーズ!」というのが印象に残っていくんだと思います。

ー確かにソロアイドルは、1コーラス、2コーラスからサビと全部ひとりで表現するわけですよね。いまの時代のアイドルとは違いますね。

矢川:聖子ちゃんの曲はいろんな人がカバーしてますが、聴き比べをしてみるのも面白いです。南波志帆さんの歌う「天国のキッス」は、聖子ちゃんが歌う「天国のキッス」に登場している女の子とは性格が違うように聴こえる新しい発見もあります。



矢川葵がときめく80年代アイドルソング

ー今日は松田聖子を中心としてお話を聞いていますが、他にも矢川さんがいいなと思える曲をラジオ番組風に紹介してください。

♪スローモーション/中森明菜

明菜さんの大人っぽい情熱的なイメージの楽曲しか知らなかった頃に、このデビュー曲を聴いて驚きました!恋がゆっくりと始まっていく光景が目に浮かび、砂浜や海風の匂いまで感じられるような歌詞がすごく好きです。


♪サザン・ウインド/中森明菜

イントロが印象的な曲で、囁くようなAメロから、Bメロがなくすぐにサビに入るスピード感と曲中ふいにみせる笑顔、クールな眼差しで歌われる「危険かしらね…」。全てにドキドキしながら何度も聴いた曲です。


♪あなたを・もっと・知りたくて/薬師丸ひろ子

薬師丸さんの上品な声が歌声だけじゃなく台詞でまで味わえる優しいメロディが美しくて、夜眠る前によく聴いていました。「誰だかわかる?」の部分だけ滑舌が甘くなるところが可愛くてたまらなく好きです。


♪ワインひとくちの嘘 / Night Tempo Showa Groove Mix

最近、よく聴いているのが工藤静香さんの「ワインひとくちの嘘」ですが、80年代のアイドルやポップスの曲をリミックスしている韓国のDJ のNight Tempoさんが手掛けているアレンジがすごくいいんです。オリジナルはバラードなんですが、グルーヴ感が出ているのがすごく好きで、オススメです。


♪NEON/ YUKIKA

K-POPアイドルのYUKIKAちゃんも好きです。曲はオリジナルなんですけど80年代のシティポップス感があってよく聴いてます。プロデューサーの方が80年代の日本のポップスが大好きだったみたいです。YUKIKAちゃんは日本人なんですが、、韓国のテレビドラマ『THE IDOLM@STER.KR』のオーディションで、唯一の日本人キャストに抜擢されて、昨年韓国でソロデビューしたんです。「単推し」の私としては大好きなアイドルです。

ー最新の80年代のトレンドも押さえてて、すごく参考になります。これからも80年代の音楽は堀っていくんですか。

矢川:はい! もっともっとたくさんの素敵な歌を見つけていきたいですね。

ー最後に、矢川さんがソロアイドルでステージに立つとしたら、どんな感じになるんでしょうか。

矢川:難しいですけど、ブクガの青っぽいイメージや私の声質的にも、最近の可愛いアイドルの曲よりも、やっぱり歌謡曲っぽい感じが合っているじゃないかと勝手に思ってます(笑)。

ーリアルタイム世代以上に松田聖子を語ってくれたり、作家との関係性なども丁寧に考えてる矢川さんなので、ソロアイドルとしての歌も聴いてみたいです。プロデューサーのサクライさん、考えて欲しいなー(笑)。

矢川:以前のブクガは作られた世界観を歌っていた気がするんですが、最近のサクライさんはブクガのそれぞれのメンバーのことを考えて、歌詞を作ってくれているのかなぁと感じてます。「長い夜が明けて」のBメロの歌割りが「その子っぽいな」というか、それぞれのメンバーが本当に言ってそうな言葉なんです。私が勝手に思っているだけかもしれないですけど(笑)。

ー矢川さんが話していた「作家が、その女の子のことを考えて作品を作る」ということですね。矢川さん含めて各メンバーのソロ作品、本当に聴いてみたいですね。


矢川さんの大好きな80年代音楽を紹介するラジオ番組「LIKESONNG」でパーソナリティーを担当

10月11日には コロナの影響で延期されていた矢川葵さんの生誕祭が開催!矢川さんがリスペクトする80年代〜00年代のアイドルポップスをカバーするコーナーもあるとのことなので、是非チェックしてみましょう。


〈INFORMATION〉

◉BSCラジオ「LIKESONG」 (毎月第1&第3木曜 19:00-20:00) レギュラー出演中!!
矢川さんがリスペクトする80年代〜00年代のポップスソングをお届けする音楽ラジオプログラム
https://backstagecafe.jp/

◉矢川葵お誕生日会2020(リベンジ)」
・配信日:10月11日(土)
・配信媒体:ツイキャスプレミア配信
・チケット料金:1,500円



山本雅美
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