アイドルの耳元〜Maison book girl〜

邦楽 総合 インタビュー
山本雅美

アイドルが愛用しているイヤホンやヘッドホンを覗かせてらう連載企画「アイドルたちの耳元」。アイドルの皆さんの音楽ライフを紹介するとともに、取材時にプレイリストを拝見し、その日に聴いていたソングリストを教えてもらいます。今回は2020年6月24日にベストアルバム『Fiction』をリリースしたMaison book girl(通称:ブクガ)のみなさんです。2014年に結成、その独特且つ前衛的な音楽性はアイドルグループという範疇を越え、他に類を見ないパフォーマンスに魅せられる人が急増中です。そんなMaison book girlの矢川葵さん、井上唯さん、和田輪さん、コショージメグミさんのミュージックライフと、ベストアルバム『Fiction』についてお話をお聞きしました。


ブクガの耳元

KKBOX:みんなAVIOTなんですね。

矢川 :そうなんです。AVIOTさんのライヴに出させてもらった時に頂いたものです。

和田:おうちで家事とかする時はワイヤレスのAVIOTを使って、有線のイヤホンはリズムゲームをやったり、ミュージックビデオを観る時に使っています。

井上:私もワイヤレスのAVIOTと有線のイヤホンの2つを使っています。充電切れたらこっちという感じで使い分けしています。

KKBOX:矢川さんのポイントは、ケースに貼っているキティちゃんですね。

矢川:わかりやすいように目印で貼っています(笑)。もう2年ぐらい使い続けていますが、こんなに良いイヤホンは初めてなので大事に使っています。

コショージ:気に入っているポイントは、無くしそうなのに、無くさないところです(笑)。壊れたり、無くさない限り使い続けたいです。

KKBOX:コショージさんはすぐ無くしてしまうイメージでした。意外です(笑)。4人の中で音に一番こだわっている人は誰なんですか?

井上:和田ですね。

コショージ:動画配信の時とか、めちゃ音にこだわってます。

和田:そんな、そんな(笑)


今日はどんな音楽を聴いていましたか?

KKBOX:みなさんは今日どんな音楽を聴いていましたか?

和田:アーバンギャルドです。アーバンギャルドさんは前から好きなんですが、明日、イベントがあるので改めて聴いてました。



井上:さっきコショージがビリー・アイリッシュを聴きたいと言っていたので、聴かせてあげていました。コショージ、ビリー・アイリッシュを聴いたことがなかったようなので(笑)。



矢川:河合その子さんの「青いスタスィオン」です。

KKBOX:うわ、これ名曲です! 80年代や90年代のポップスはよく聴くんですか?



矢川:名曲ですよね。この時代の曲はいっぱい聴きます。最近も「あつ森」やり過ぎて、気がついたら朝の4時になっていたんです。その時、思わず「あつ森してたら4時ー♪」と歌ってしまい(笑)。それで、本家の「渋谷で5時」を聴いちゃいました。

コショージ:私は配信ライヴのセットリストを考えていたので、自分たちの曲を聴いていました。『Fiction』はかなり聴いていますが、今日は「yume」を聴き直しています。



ベストアルバム『Fiction』について

KKBOX:自分は好きな演劇が再演されるとよく観に行くのですが、初演で見落としていた微妙なニュアンンスとか、ディティールを発見できるのが魅力です。今回の『Fiction』を聴いていると、その感覚とすごく近いものを感じました。以前の「bath room」と比べると、再レコーディングされた今回の「bath room_」は息遣いとか、声の残像感などが、すごく立体的に伝わってきます。

コショージ:私の中ではめちゃくちゃ変わりましたね。ブクガがスタートした時から歌っていますが、ソロパートが無くて全部ユニゾンだったんです。今回はひとりひとりが歌うパートが増えました。もしかしたら「こういう風にやりたかったんだ」という想いと同時に、こっちが本当の「bath room」なのかなと、私自身も感じています。

KKBOX:すごくわかります。一つの塊だった4人の歌が、ダイナミックレンジが広がったというか、解像度が深まり、さらにエモーショナルな表現になっていますよね。

矢川:「bath room」は深い歌詞なのに、声が幼かったんだと思います。MVも「森の中で遊んでいる女の子」というイメージだったし。今回の「bath room_」は、自分が聴いてもすごく大人になっている感じがするし、まったく新しい曲のように聴こえました。


出典元:YouTube(Maison book girl)



KKBOX:「snow irony_」も、終盤のサビパートの表現が大きく変わりましたね。以前の「snow irony」は歌詞の言葉を歌っている感じでしたが、今回は言葉の行間を歌っている気がします。

和田:声が大人っぽくなった、上手くなったということだけではなく、ちゃんと「許さない」と言っているなと思いました。それだけの変化が、この5年間であったんだと再認識できました。私は以前の「snow irony」も好きなので、これだけ雰囲気がガラッと変わったことで、違う曲になったのが良かったなと思います。

KKBOX:「lost age_」は歌と楽器が激しく戦うパワーを増し、大きな変化を感じます。再レコーディングされた3曲は数々のステージで歌われて日々アップデートされていると思いますが、ステージとレコーディングで何か違いを感じることはありましたか?

矢川:最初の頃は、感情表現をどこまで振り切れるのかわかりませんでした。それが、ライヴを重ねていくうちに「ここまで、こんなに声を出せるんだ、ここまで歌いたいと思える瞬間があるんだ」ということを気付けるようになりました。レコーディングの時も同じような気持で臨めるようになったことが大きいかなと思います。

井上:「bath room」「snow irony」「lost age」はずっと歌ってきているので、ライヴでの表現力が増してきていると感じてはいました。サクライさんのディレクションで改めてレコーディングすることで、違った形になったのかなって思います。


出典元:YouTube(Maison book girl)



和田:成長の過程でライヴは本当に大きく影響しています。ライヴを重ねていくことで肉体性を伴う表現が成長し、それが私たちの強みに繋がっていることを改めて理解できました。ライヴがあったからこそ、いまのカタチに進化してきたのだと実感しています。

コショージ:初期のライヴは“被せ”が基本だったんですけど、ある時期に「生の歌を届けていきたい」という気持ちになっていきました。それ頃から、今のブクガの方向性がより明確になっていったのかなという気がします。


出典元:YouTube(Maison book girl)



KKBOX:「rooms_」のアレンジは、ブリッジや中盤の転換の時の無音の時間が微妙に倍になっていますよね。その微妙な違和感にヤラれました(笑)。もともと「rooms」の無音の部分に、余白の美学を感じていたんです。アートでの絵画や写真なども、余白があるから主題が生きてきたり、あるいはその余白の中に本質があるように感じるのと似ています。

コショージ:ちょうど倍になっています。私はもっと長くしても、より違いがわかりやすかったのかなと思いました (笑)。

和田:「rooms」は無音の中でステージの上で立ち尽くしていることが「すごい!」と言われたことがありました。最初は私たちもどきどきしていましてが、この5年間でその余白を何度もやってきた結果、ブレイクの長さの変化もいまだからできる表現の一部になったなと思います。


出典元:YouTube(Maison book girl)



KKBOX:新曲「Fiction」は穏やかなメロディの中、4人がソロで歌い紡いでいくドラマチックな曲になっていますね。

コショージ:「bath room_」から始まった『Fiction』を最後に回収してくれている曲になったのかなと思います。

井上:サクライさんが新しく提示してくれる曲って、無音とか変拍子など含めて毎回新鮮なんです。今回の「Fiction」は、こんなにもストレートな曲なんだと思いました。

和田:最初の頃だったら歌えなかったかもしれません。私たちが成長して表現の範囲が広がってきた今だからこそ歌えるということが、よく現されている曲です。



矢川:部屋にいることが多かったブクガの曲の登場する主人公たちは、少しずつ外の世界に気がついて、部屋から出てくるようになってきました。その変わった部分と、でも根っこでは変わらない部分含めて「ブクガなんだ。私なんだ。 」というイメージを持つ曲なのかなと感じています。

KKBOX:最後の質問ですが、これまでのブクガ曲の歌詞の中で好きな言葉を教えてください。

コショージ:「錠剤を吐いて 煙を吐く(「sin morning」)です。ブクガの曲には、こういったフレーズがたくさんあるんですが特に好きです(笑)。

和田:「電信柱の影が、枯れた桜の木に重なる景色が通り過ぎ。(「シルエット」)」のところです。ブクガの曲はあまり具体的な描写ってないんですけど、外を歩いていたら同じ風景があって「これじゃん!」って思いました(笑)。初めて感じたことだったので印象深いです。

井上:悩むなー。「snow irony_」で私が歌っているパートですが「16月から、君はガラスで隠されたよ」かな。 ブクガってフィクションではないけど、どこか現実味がないのと同じように、存在しない16月が不思議な感じで好きです。

矢川:「安心していいよ 全部なくなるの (「rooms_」) 」という歌詞です。存在していることで安心することも多いと思うんですけど、全部が無くなることで安心できる人もいると思うんです。私もリセットしたり、モノを捨てて安心するタイプなので「私と一緒!」と思った記憶があります (笑)。

KKBOX:『Fiction』は微妙で繊細な変化をたくさん発見できるアルバムになっています。聴き逃さないように何度も聴いてみようと思います。ありがとうございました。



山本雅美

ainone合同会社 代表/プロデューサー ビクターエンタテインメント/A-Sketch/KKBOX Japanで幅広く音楽ビジネスを担当、現在は音楽専門インターネットラジオのプロデューサーのほか、多摩川沿いの街で音楽フェスなどを開催。また写真家として国内・海外でのエキシビションに出展。

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