Shiggy Jr.にとっての「至福なオフ」 ー 休みの日になに聴いてる?

ミュージシャンの「オン」と「オフ」を覗く、連載『至福なオフ』。「オン」のモードで作り上げた最新作についてはもちろん、休日の過ごし方、休みの日に聴いている音楽、さらには私服のこだわりなど、「オフ」のことも伺います。今回は、現在放送中の人気テレビアニメ『斉木楠雄のΨ難』のオープニングテーマを歌うShiggy Jr.の4人にご登場いただきました。
オフの日、なにしてる?
—バンド活動の予定がなにもない「オフ」の日に、「至福だな」「贅沢だな」と思う1日の過ごし方を、それぞれ教えてください。
池田(Vo):私は、ゆっくり洗濯をして、ゆっくりご飯を作って、ゆっくり掃除をして、ということをやります。仕事が立て続けに入っていると家事をのんびりやれないから、それができると自分自身も整う感じがしてストレス発散になるんですよね。それに私は、同じような毎日が続くなかで起きる小さな変化を大事にしたいから、オフの日に、自分の頭のなかで「あの出来事はどういうことだったんだろう?」って振り返ったり、噛み締めたりしたいんです。そうやって部屋で過ごしたら、映画を1本見て、夜に友達とちょっといい焼肉屋さんへ行って美味しいハラミを食べられたら、もう最高(笑)。
原田(Gt&Vo):僕は、バンドとしての稼働がない日は家でパソコンの前で曲作りをしています。でも「今日はダメだな」って思ったら、お酒を飲みながらNetflixとかを見始めて、3本くらい続けて見たりしていますね。最近見たドラマだと『The 100』が面白かったです。でも、もし長い休みが取れるなら旅行に行きたいなあ。今一番行きたいのは、2歳半から小5くらいまで住んでいたマレーシアと、当時行ったモルディブ。もうずっと行ってないから、再確認しに行きたいんです。
森(Ba):俺にとっての「至福なオフ」は飲み歩きかな(笑)。飲み仲間と、昼2時くらいに立石とか八広の下町へ行って、10軒くらいハシゴする。1軒だいたい30分くらいの滞在で、2杯くらい飲んで、ということを続けるんです。夜10時くらいには解散するんだけど、その時点になるともう記憶がない、みたいな(笑)。
諸石(Dr):俺にとっての至福な過ごし方は、朝から昼にかけて漫画を読んだりアニメを見たりして、そのあとスタジオへ行って遊びでセッションして、夜は小中学校からの馴染みの友達と会って飲む。なにを話したかは覚えてないんだけど、とにかく楽しかったことだけが記憶に残ってるような飲み会って、いいですよね。最終的にはみんなでカラオケに行って、バカ騒ぎして、家に帰ってちょっとだけ『モンスターハンター』をやって寝る、という日が最高ですね。
どういうファッションが好き?
—今日はメンバーを代表して原田さんに、私服についても話を伺えればと思います。普段、どんなファッションが好きですか?
原田:夏はだいたい柄シャツとジーパン。めんどくさがりということもあって、基本的に重ね着とかはあまりしないです。キャップも、髪の毛をセットするのが大変だからかぶっちゃおう、みたいな。
池田:そう言いつつも、ちゃんと靴磨いてたりするよね。
原田:そうだね。このadidasの靴は、「サマータイムラブ」をリリースしたときのアーティスト写真でも履いていたから、もう3年くらい履いてる。靴はちょっと高いのを買いますね、すぐに壊れるのが嫌なので。
諸石:シゲ(原田)は物持ちがいいんですよ。柄シャツのなかに、めっちゃ昔のライブとかフェスのTシャツを着てたりする。
池田:そう、それを見てみんなで懐かしむんです(笑)。茂幸くんはスタイルがいいから、なんでも似合う気がする。
—買い物はどのあたりでしますか?
原田:渋谷、原宿が多いかな。でも、ネットで買ったりもするし、スタイリストさんから買うことも多いです。
オフの日に聴きたい12曲
ー今回は「オフの日に聴きたい曲」をテーマに、それぞれ3曲ずつ選んでいただきました。
池田:私が選んだのは、Jónsi「Boy Lilikoi」、岡村靖幸w小出祐介「愛はおしゃれじゃない」、エレファントカシマシ「部屋」の3曲です。私、エレファントカシマシがすごく好きで。「部屋」という曲は、本当になんでもない日常なんだけど、彼女か親しい人が自分の部屋に遊びにくる、ということを歌っていて。さっき言ったみたいに自分が落ち着ける大事な空間があって、ほっとできる時間があって、しかも大事な人がいて、というのが私にとっての最高のオフで、そういうことを感じられる曲です。
原田:俺は「休日」というと、昔、家族と車で出かけていたことを思い出すんです。父親がThe Crusadersが好きで、よく車とかで流れてた記憶があるので、The Crusaders「Put It Where You Want It」を選びました。Brasstracks「Say U Won’t」とBruno Major「Easily」は、単純に今好きな曲。Brasstracksは、Chance the Rapper「No Problem」のトラックとかもプロデュースしてますが、俺はChance the Rapperの曲よりもこっちのほうがかっこいいと思ってよく聴いています。
森:俺は、オフの1日をイメージして選曲しました。朝起きたときは爽やかな曲が聴きたいから、ブレッド&バター「ピンク・シャドウ」。そのあとは、友部正人さんの「一本道」を聴きながら、井之頭公園を散歩して、夕涼みをしたい。その土地に似合う音楽ってあると思うんですけど、友部さんは吉祥寺生まれで、吉祥寺フォークの中心人物のような人なので、井之頭公園の夕方にすごくマッチするんですよね。で、夜は飲みに行きたいから、酒場詩人・吉田類さんの「Bad Bad Whiskey」。この曲はAmos Milburnのカバーで、どちらにするか悩んだんですけど、吉田類さんは俺の憧れの人だし、この曲がエンディングになってるテレビ番組『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)が大好きだから、こっちを選びました。
諸石:俺は最近、レゲエをよく聴いているんです。ドラムの師匠みたいな人から「すべてのグルーヴはレゲエに詰まってる」「レゲエのグルーヴを習得するといいグルーヴが生まれる」という話を聞いて、サブスクを使ってルーツレゲエのプレイリストを聴くようになったらハマっちゃって。そのなかでも特に刺さったのが、Jimmy Cliff「The Harder They Come」。レゲエを聴いてると落ち着くし、楽しい気分になれるんです。寝るときも小さな音で流しながらベッドに入ったら、1曲が終わる前に眠れます(笑)。Daniel Caesar「Take Me Away(feat. Syd)」とAnderson .Paak「Heart Don't Stand a Chance」は、今の気分で選びました。オルタナティブR&Bも好きですね。
最新EP『KICK UP!! E.P.』について
—テレビアニメ『斉木楠雄のΨ難』のオープニングテーマ「お手上げサイキクス」について聞かせてください。アニメのオープニングを見ると、映像と音楽がすごくマッチしていると思ったのですが、Shiggy Jr.としてはどういうことを考えて作った曲ですか?
原田:アニメのスタッフの方々から、「オープニングでキャラクターたちを踊らせたい」って言われました。Shiggy Jr.はこれまで、ディスコテイストの踊り系の曲は多かったけど、今回はアニメを通していろんな人が聴いてくれる曲になるだろうと思ったから、自分たちを「バンドらしく見せたい」とも思ったんです。世間からどういうふうに見られているのかはわからないけど、意外とバンドとして見られていないかもと思って、「Shiggy Jr.はバンドだよ」ということを提示してみようかなって。
—EPには全5曲収録されていますが、全体としては、どういったことを意識したのでしょう?
原田:基本的にShiggy Jr.の作品は、意図的に音楽性がバラバラの曲を入れたいと思っているんですけど、今回は、それぞれの曲をより「ジャンルらしく」できたと思っていて。「お手上げサイキクス」はRed Hot Chilli Peppersっぽいというか、ミスクチャー感があって、2曲目「Sun is coming up」は、弦と打ち込みのバランスやジャズっぽい感じとかを含め、今の洋楽っぽいものを意識して作りました。3曲目「ずっと君のもの」は1970年代ポップスをやろうと思って、4曲目「Do you remember」は1980年代のディスコとか、バブルっぽい感じを意識していますね。最後の「Beat goes on」は、「スタジアムロック×ダンス」みたいになりました。なので、1曲1曲において「ジャンルを意識した」と言える5曲が揃えられたかなって。
—池田さんはボーカリストとして、今回新たに意識したことや挑戦したことなどありますか?
池田:「お手上げサイキクス」は、レコーディングで、初めてハンドマイクを使ったんです。エレファントカシマシの宮本さんが、ドキュメンタリーDVDのなかで、パイプ椅子に足をかけながらライブみたいにハンドマイクで歌ってレコーディングしてるのを見て、私もそれをやりたいとずっと思ってたんですよね。なので今回、宮本さんを真似してパイプ椅子をレコーディングブースのなかに入れて(笑)、足をかけながら歌いました。そうすると、歌が結構変わるんですよ。ライブに近い感じの歌い方が出るから、この曲に関しては、それがすごくよかったなと思っています。でも、実際ライブで歌っていくとまた変わっていくとは思うから、それも楽しみですね。
〈Shiggy Jr.プロフィール〉
池田智子(Vo)、原田茂幸(Gt&Vo)を中心に結成された後、森夏彦(Ba)、諸石和馬(Dr)が加入し現体制へ。ポップスになりうるすべてのジャンル、取り分けモータウンサウンド・ブルーアイドソウル・ロックミュージックをルーツに、独自のセンスで紡がれるフレーズと歌声がどこまでもキャッチーかつジャンルレスに多幸感を織り成す、4人組ハイブリッドポップスバンド。2018年5月23日に『KICK UP!! E.P.』をリリース。そして7月7日より、ワンマンツアー『Shiggy Jr. LIVE TOUR 2018 - Step by Step - summer ver.』を開催する。
インタビュー・テキスト:矢島由佳子/写真:にしゆきみ