大森靖子にとっての「至福なオフ」〜休みの日になに聴いてる?

矢島由佳子

ミュージシャンの「オフ」を覗く、連載『至福なオフ』。今月は、大森靖子さんにご登場いただきました。アイドルファンの顔、2歳の息子を育てる母親の顔、かわいい服やアクセサリーを身に着けて笑顔を見せる女性の顔、そして、音楽の力を信じ抜いている「超歌手」としての顔。「大森靖子」という人間を形成している様々な面を、「オフの日に聴きたい曲」をテーマとしたプレイリストとともに、凝縮してお届けします。

オフの日、なにしてる?

ー大森さんって、歌手活動がお休みの「オフの日」はなにをしていますか?

大森:アイドルの現場に行くか、子育てか、どちらかです。最近だと、道重さゆみさんの生誕(『道重さゆみバースデーイベント2018』)と『SAYUMINGLANDOLL~宿命~』の大阪公演、けやき坂46(『けやき坂46「走り出す瞬間」ツアー2018』)、『欅共和国 2018』とかに行きました。子どもとは、としまえんに行ったりしていますね。ボールのプールみたいな遊び場があって、それを子どもがすごく好きなので。

ー歌手活動と子育ての両立は、大変じゃないですか?

大森:うーん……でも、男性は普通に働いて、家で子育てをしてるので、一緒かなって思います。夫と2人で「できることを、できる人がやる」という感じでやってますね。

ー他のクリエイターやアーティストを取材していると、子どもができると自分の感動するものや面白いと思うものが変わって、創作のモチベーションやベクトルも変わったという話を聞いたりします。大森さんは、いかがですか?

大森:人間って、「増える」ものじゃないですか。自分が生きてきたものから子どもが生まれて、それでまた自分の世界が増えて……そうやって「増えていく」ものだと思うから。子どもができたらそれまでの経験がなしになるとか、母親というものになったら、他のものじゃなくなるとか、将棋の駒がひっくり返るみたいに全然違う世界へコロンってなっちゃうような感覚は、「いつの時代の話だろうか」と思う。

どういうファッションが好き?

ー「私服」に関しても聞かせてください。“GIRL’S GIRL”では<可愛いまま子育てして何が悪い>と歌っていますが、普段大森さんはどういう基準で服を選ばれますか?

出典元:YouTube(大森靖子 Youtube Channel)

大森:衣装にできるような服を買っちゃうんですよね。「このライブで、これ着たいな」という感じで選ぶことが多いです。「このツアーはこの色がいいな」とか、「ライブハウスだと後ろが黒いから、赤、ピンク、白がいいな」「外のライブだったら、黒でもいいかな」って。スカートの丈とかも結構気にしますね。スカートの裾を持てるほうがステージ上でいろいろ表現ができるので、広がるものがいいです。あんまりブリブリ見えても違うし、でもヒラヒラしたいし、「かっこいい、けどかわいい」みたいな絶妙なものを選びたいんですけど、それって意外に難しいんですよ。

ーライブで着られている服は、「衣装」ではなく「私服」が多いんですね?

大森:CDジャケット用に作った衣装をツアーで着ることはあるけど、ライブ用に衣装を作ることはないですね。基本、ライブの服は自分で買ったものです。

ー今日の服は、どこで買われたものですか?

大森:ネットのセール(笑)。サンダルも「BUYMA」で、全身ネットですね(笑)。あ、でもネックレスは、『SAYUMINGLANDOLL~宿命~』の帰りに東京駅の近くで買いました。おばあちゃんの遺産で買ったんです(笑)。おばあちゃん、オシャレだったし、そういうお金って知らないうちに使っちゃってたってなるのは嫌だから、アクセサリーを買おうと思って。この指輪もおばあちゃんの遺産で買って、わりとずっと着けてます。



オフの日に聴きたい曲


ー今回は「オフの日に聴きたい曲」を9曲、大森さんに選んでいただきました。

大森:基本、BGMは無音がいいんですよ。音楽を聴きながらなにかをやる、ということが苦手で。なので、カラオケで歌いたい曲と、現場で聴く曲と、子どもと歌ってる曲を選びました。“ハッピーバースデートゥーユー”は、毎日息子が歌うんですよ。

ーええ、かわいい(笑)。“アンパンマンたいそう”を久しぶりに聴き返したのですが、めちゃくちゃいい歌ですよね。「元祖・全肯定ソング」と言ってもいいんじゃないかと思いました。

大森:歌詞がめっちゃ泣けますよね。世界平和の歌ですもんね。哲学家ですからね、やなせたかしさんは。“私はドキンちゃん”も、歌詞がすごくいいんですよ。私が歌ってるほうの女の子の曲というか。お金もほしいし、幸せになりたいし、わがままでいたいし、「それのなにが悪いの?」みたいな歌詞なんです。

ーDA PUMPの“U.S.A.”は大ブレイク中ですが、大森さんはどう聴かれましたか?

大森:曲を聴いたときに感銘を受けて。洋楽のリズムを立たせたまま日本語詞を乗せるやり方って、桑田佳祐さんっぽくするか、宇多田ヒカルさんっぽくするか、つんく♂さんっぽくするかの3パターンしか、今のところ開発されてないと思っているんですね。そのなかで、この曲は完全につんく♂さんのやり方なんです。発音を無理やりねじまげて、洋楽に近づけるというか。それを宇多田さんは文節の切り方でやっていて、桑田さんは「桑田法」みたいな滑舌でやるんですよね。あとは、真剣にバッキバキに踊ってる感じとか、ISSAさんの実力が生かされているところもかっこいいなと思って、ハマって聴いています。

ー浜崎あゆみさんは、歌手として憧れる部分もありますか?

大森:ありますね。だって、浜崎さんもブレないから。ブレない人が好きです。キャラが変わる人は嫌です(笑)。浜崎さんの歌はカラオケでもめっちゃ歌うし、ライブも観に行ってます。かっこいいんですよ。“SURREAL”は、すべての人が抱えた孤独を歌ってる曲なので、誰もが共感できると思う。

最新アルバム『クソカワPARTY』について

ー最新アルバム『クソカワPARTY』は、「私小説」とも言えるような、大森さん自身のことを生々しく歌った曲が並んでいますね。

大森:自分の奥底のことを書く分、バランスはすごく気をつけたくて、わかりやすい言葉で書こうと思いました。自分の心理と向き合うときに出てくる言葉って、他人が読むとなにが書いてあるのかわからないようなものが多いじゃないですか。それをそのまま曲にするのも好きなんですけど、今回はちょっと説明的になるくらいまでわかりやすく書きました。売れてるものは大体そうなので。売れたいですからね。売れないと意味ない。

ーアルバムのなかで一番最初にできたのは、1曲目“死神”だそうですね。ご自身のことを歌いながらも、歌手である大森さんからリスナーへのラブソングとも捉えることのできる1曲だなと。

大森:これは、インターネットで炎上して死にたくなったから書きました(笑)。完全に自分を救うためだけに書いたんですけど、「救われた」とか「自分のことを歌ってくれてる」って言ってもらえたので、「自分のことを突き詰めて書いても、ちゃんとわかりやすく書けば寄り添えるんだな」と思って、他の曲も作っていったんです。

出典元:YouTube(大森靖子 Youtube Channel)

ージャケットには、世界を操ることができると言われている「ジョーカー」に扮した大森さんが写っています。大森さんが「ジョーカー」になれたら、どんな世界に変えたいですか?

大森:全員が面白くていい。私、一番問題があるのは教育だと思っているんですよ。人をつまんなくするための教育が施されてるようにしか見えなくて。私が必要だなって思ってるコミュ力とは違う、「傷付かずに済むためのコミュ力」しか形成されない。だけど、それって本当は一番「自分」というものを殺しているんですよね。そのやり方しか教えてもらえないけど、別にそうする必要はない。

ー個性を削って、みんなに同じ正解を持たせようとする教育というか。

大森:ちゃんと考える人のほうが、絶対面白いに決まってますからね。それに、悩んだ先に手に入れた幸せのほうが絶対にはがれない。結婚とか親になることだって、それが幸せとされてるからそうするっていうのは、自分で掴んだ幸せではないじゃないですか。悩んだ末でそれだったら全然いいと思うんですけど。

ー「孤独」という言葉には、どちらかというとネガティブなイメージがあると思うんですけど、大森さんは決してネガティブには使っていないですよね。そして、アルバムに寄せたコメントには「孤独を孤立させないで」と書いてある。大森さんが考える「孤独」と「孤立」の違いってなんですか?

大森:「私はこういうところでは誰ともわかりあえない」とか「これだけは自分の大事なものだから譲らない」と思ってたら、孤独になるじゃないですか。それはいいんですよ。でも、「お前の考えはおかしいからどっか行け」みたいな感じは違うと思うんです。「こいつ、なに言ってるかわかんない」みたいな人もいるけど、勝手にそっちはそっちでやっててもらえばいいというか、「両方大事でいいじゃん」っていうふうに、お互いが尊重し合うようにすればいいだけで。違う意見があったら「そうなんだ。それはなんで?」ってならないとダメだと思う。「なんで?」が足りてないと思うんですよね。

ー今の世の中では、「正解」とされているものからはみ出たものは全部「黒」とするような言い合いが増えていて、それぞれが自分の意見や考えを殺すことを無意識に受け入れてしまっている部分が多いなと感じます。

大森:考え方が違ったからといって、否定し合ったり論破し合ったりする必要はないと思うんですよね。でも、無理やり共存する必要もない。「生きている限りは生きる」という同じ目標があるわけで、そこに向かっていくことだけが正論だと私は思ってるから。

ーこの先も、私小説のようなアルバムの作り方が続いていきそうですか?

大森:『洗脳』の次に、陰に寄った『TOKYO BLACK HOLE』があって、その次は『kitixxxgaia』を作って、アルバムごとに、ざっくり言うと「韻」と「陽」を順番に見せてきたので、これからも多分逆転し合っていくような作り方になると思います。飽きちゃうので。

(写真:にしゆきみ)

矢島由佳子

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