川谷絵音 オフに聴く10曲とファッション&休みの過ごし方

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矢島由佳子

ミュージシャンの「オン」と「オフ」を覗く、連載『至福なオフ』。「オン」のモードで作り上げた作品についてはもちろん、休みの日に聴いている音楽や私服のこだわりなど、「オフ」のことも伺います。今月のゲストは、8月29日にニューアルバム『好きなら問わない』をリリースする「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音さんです。ゲスの極み乙女。の他、indigo la End、ichikoro、ジェニーハイ、DADARAYとしても活動し、「丸一日オフの日はあんまりない」と言う多忙な川谷さんにとって、「オフ」の概念とは? 音楽だけでなく、ファッションやデザインに対する感性についても伺いました。


オフの日、なにしてる?

—もし明日が丸一日オフになったら、なにしたいですか?

川谷:そういうときは、温泉に行っちゃうんですよね。このあいだも、曲を作るために小さいクラシックギターを持って、一人で温泉に行きました。でも全然はかどらなくて。お酒飲んで、温泉入ったら、そのまま寝ちゃいました(笑)。結局できたんですけどね。

曲を作ることは仕事だと思ってないというか。曲を作ってない時間のほうが、自分の存在意義を感じないし、オフになったからといってなんにもしないのは、逆にストレスになっちゃう。誰にも強制されない時間が「オフ」だと思ってますね。

—『TVBros.』の連載「ブレないから、やるせない」で、最近はいろんな業界の人と会っていると書かれていましたよね。どういう人と遊びに行くことが多いですか?

川谷:ファッション系、デザイナー、映像系、あとは俳優さんとか。音楽好きも多いので、「誰が来日するよね」とか、普通に音楽の話もします。ミュージシャンだとそうじゃないところの音楽の話になっちゃうので、あんまり会わないようにしているんです。岡村ちゃん(岡村靖幸)か、米津(玄師)くらい。バンドマンと「どうやって曲作ってるんですか?」みたいな話するの、なんかめんどくさいじゃないですか。


—お酒はなにが好きですか?

川谷:最近はワインしか飲まないようにしてます。ほな・いこかが、体のことに気を使っているなかで、「ワインしか飲んでない」と言っていて。あと、岡村ちゃんもワインばっかり飲んでて、「ワイン飲んだら次の日調子いいんですよ」って言ったので、僕もワインを飲むようにしたんです。たしかにワインだと、他のお酒より飲みすぎても次の日わりと大丈夫だし、声も出るんですよね。


どういうファッションが好き?

—SNSに載せられている写真などを見ると、いつも私服がおしゃれですよね。ファッションに興味を持ったのはいつから?

川谷:好きなんですよね、服。でも、大学生のときは全然お金がなかったので古着とか着てたし、服がどうでもよくなった時期もありました。人に見られる仕事をやり始めて、スタイリストやデザイナーと出会うことも増えたので、いろんなブランドを知って「こういうの着たいな」と思うようになった感じですね。

—川谷さんにとって、ブランドやデザインに対する「ダサい / ダサくない」の基準ってなんですか?

川谷:僕、結構テリトリーが広いんですけど、面白い服作ってる人とか、もしくは、すごくシンプルだけど着心地がいいものに惹かれますね。たとえばBlackEyePatchは、「取扱注意」って書いてるロゴの服とかを作っているんですけど、本当に面白い。もともとステッカーを貼る集団だった人たちがデザイナーになって服を出しているんですよ。

でも僕自身、最近はシンプルなものに回帰していて。たとえばAlexander Wangって、同じ黒Tとデニムを、50着持ってるんですよ。で、毎日同じ服を着ている。デザイナーの人って、会うとみんなすごくシンプルなんですよね。行き切ると、やっぱりそこになるんだなって。

—デザイナーの姿勢に共感して、そのブランドを好きになることが多いのでしょうか?

川谷:そうですね。Dries Van Notenのドキュメンタリー映画を見たとき、Driesにすごく共感できて。もともと好きだったんですけど、映画を見てさらに好きになりました。音楽もそうだと思うんですけど、その人を知って好きになることは結構ありますね。

—今日の服は、どこのものですか?

川谷:シャツはCOMME des GARÇONSで、パンツはN.HOOLYWOOD。靴はNIKEのAIR MAX 1/97 SEAN WOTHERSPOONVAPORMAXです。



オフの日に聴きたい8曲

ーKKBOXのプレイリストを作るにあたって、「オフの日に聴きたい曲」をテーマに10曲選んでいただきました。


Blaenavon / Orthodox Man(Acoustic)

Blood Orange / Charcoal Baby

Billie Eilish / my boy

Analogfish / Ring

Anderson .Paak / Bubblin

Vance Joy / Georgia

Chilly Gonzales / Gogol

Feist / The Limit To Your Love

ミツメ / エスパー

藍坊主 / 不滅の太陽


川谷:Chilly Gonzales(以下、ゴンザレス)は、聴かない日がないくらいですね。“Gogol”は、最初に聴いたゴンザレス曲で。昔、車で移動してたとき、山道に入って、暗くて、一見遭難してる感じだったんですよ(笑)。そのときに、たまたまマネージャーがかけたのがこの曲で。普通、遭難しかけたらテンパるじゃないですか。でも、その雰囲気にこの曲が合いすぎてて、「このままでいいんじゃないかな」って思うくらいで。そこからハマって、ずっと聴いていますね。

Feistの“The Limit To Your Love”は、ゴンザレスがFeistと一緒に作った曲で。Feistはもともと好きで、この曲をゴンザレスと作ってるって知らないで聴いていたんですけど、なかでもこの曲がめっちゃ好きで。やっぱり俺、ゴンザレスが好きなんだなって。

Blaenavonは、イギリス・ハンプシャーのバンドで。オルタナティブなんですけど、1枚丸々アコースティックバージョンのアルバム(『That's Your Lot - The Bedroom Tapes』)を出していて、それがすごく落ち着くんですよ。声がめちゃくちゃ好きで、最近よく聴いてますね。


出展元:Blaenavon

—音楽はサブスクで聴くことが多いですか?

川谷:サブスクかレコードでしか聴かないですね。日本って、いまだにCDが売れてるし、「CDで聴くことが美しい」みたいな、よくわかんない流れになってると思うんですけど。CDとか配信って、「この人にお金を払ってあげるよ」みたいなファン心理とか、音楽とは違う部分の心理が働くせいもあって、その曲しか聴かなくなる。

でも、サブスクだといろんなアーティストが知れるし、「月額なんだったら、たくさん聴いてみよう」って思うじゃないですか。僕が高校生のときにサブスクがあったら、もっといい音楽人生が送れてたのになと思いますね。ただ、このあいだ聞いたんですけど、日本人って、サブスクに入ってても自分の好きなアーティストしか聴かないユーザーが多いらしくて。それって、すごく損してるなと思うし、いまいち日本でサブスクが広がってない理由なのかなとも思いました。

—サブスク時代におけるCDの役割・価値を、川谷さんはどう考えていますか?

川谷:CDの役割って、もうないですよね。だって、レコードとサブスクがあったら、CDは一番中途半端な位置じゃないですか。CDって、レコードに入ってる音のなかから、人間が聴こえない部分を削ぎ落として作ってるわけで。でもレコードにはその削ぎ落とした部分があって、それが聴こえないはずなのに、なぜかいい感じになってるんですよね。

みんなレコードを聴く環境がないのかもしれないけど、めっちゃ安いレコードプレイヤーもいっぱいありますからね。レコードがもっと普及して「一家に一台レコードプレイヤーがある」ということになればいいなと思って、そのための動きを最近考え始めているんです。



最新アルバム『好きなら問わない』について

ー最新アルバム『好きなら問わない』は、ご自身としては、どういうアルバムに仕上がったという感覚ですか?

川谷:こないだ、ちゃんMARIがインタビューで「私は今までで一番好きなアルバムです」ってストレートに言っていて。メンバーがそう思ってるのは、僕としては一番嬉しくて。簡単に言えば、『両成敗』(2016年1月発売、2ndアルバム)と『達磨林檎』(2017年5月発売、3rdアルバム)のいいとこどりみたいな感じですね。

—クラシックの要素がバンドサウンドにがっつり入ってきていたり、ストリングスや管楽器も鳴っていたり、その一方ではミニマルなサウンドに仕上がっている部分もあったりと、ゲスの極み乙女。が持っている音楽的な多面性が色濃く表れているアルバムだなと思いました。

川谷:派手さもあるし、音楽的にすごく深い部分もあって。キャッチーというだけじゃなくて、すごくドロドロとした部分や、ものすごく暗い曲もある。それら全部が「ゲスの極み乙女。」というか。

僕らのイメージって、多分、すごくキャッチーな感じだと思うんですよ。リード曲とかタイアップ曲になるものって、派手なやつなので。そのイメージを払拭したいなっていつも思ってるんですけど、タイアップ曲やリード曲を聴かれると、そのイメージがまたついちゃう、というジレンマを抱えていて。でも、サブスクだと、全曲聴けるじゃないですか。CDを買わない人は、PVで出てる曲しか知らなかったり、チャートの上位にある曲しか聴かなかったりするけど、サブスクだったらアルバムで聴けるから。

このアルバムは全部聴いてほしいから、サブスクが台頭してるなかで出すアルバムとしてはいいのかなって思いますね。indigo la Endでこの前出したアルバム(『PULSATE』)は、リード曲じゃない“煙恋”が、サブスクで一番聴かれているんですよ。リード曲やタイアップ曲じゃなくても日の目を見る時代になってきたのかなと思って、僕らとしては、それはすごくいいなって。


—ジャケットのアートディレクターは木村豊さん(Central67)ですね。ジャケットって、アートディレクターの方にお任せするタイプのミュージシャンと、アイデアを積極的に言うタイプがいると思うのですが、川谷さんはいかがですか?

川谷:これはしっかり打ち合わせしました。Twitterで、あるところで事故が起こっていて、あるところでは結婚式してるみたいな、情報量が多い画像を見たときに、アルバムの情報量もめちゃくちゃ多いから、情報量が多い写真にしたいと思って。それで、初回限定盤のジャケットはこういう感じになりました。実は、レコード会社のスタッフも写ってるんですよ(笑)。

パチンコ台は、Arctic Monkeysの新譜(『Tranquility Base Hotel & Casino』)で変な機械がジャケットになっていて、それがすごくかっこいいなと思ってたんです。それで、「変なものを作りましょう」と言って、光るパチンコ台になりました。このジャケットでレコードを作ったら、かっこいいですよねえ。



ゲスの極み乙女。プロフィール

2012年5月にindigo la Endのボーカルでもある川谷絵音を中心に結成。高い演奏技術を駆使した何が起こるかわからない曲展開に全てを飲み込んでしまう声。プログレ、ヒップホップを基調とし、独自のポップメロディを奏でる4人組バンド。メンバーは、川谷絵音(Vo,Gt)、休日課長(Ba)、ちゃんMARI(Key)、ほな・いこか(Dr)。

(写真:関口佳代)

矢島由佳子

編集者・ライター。主に音楽・エンタメ関係に携わる。大学卒業後、大手芸能事務所にてアーティストマネージャーを務める。現在、カルチャーサイト「CINRA.NET」編集部に所属しながら、フリーランスとしても活動中。 https://twitter.com/yukako210

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