フジファブリック・金澤ダイスケにとっての「至福なオフ」ーオフに聴く10曲と、ファッション&休みの過ごし方

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矢島由佳子

ミュージシャンの「オン」と「オフ」を覗く、連載『至福なオフ』。「オン」のモードで作り上げた作品についてはもちろん、休みの日に聴いている音楽や私服のこだわりなど、「オフ」のことも伺います。今月のゲストは、フジファブリックのキーボード担当・金澤ダイスケさんです。自身のカメラで撮った写真を配信シングル『Water Lily Flower』のジャケットに活かしたり、バンドグッズの制作ではお気に入りのファッションブランドやコーヒーショップとコラボしたり、料理のレシピ本を出したりなど、多趣味な金澤ダイスケさん。穏やかな口調で、ユーモアも交えながら、音楽・ファッション・休み方などについての考え方を語ってくれました。


オフの日、なにしてる?

—金澤さんは、オフの時間をどのように過ごしていますか?

金澤:いくつかのパターンがあるんですけど、「心が満たされるなあ」と思えたり、あわよくば少し心が動かされたり感動できたりするものを、オフのときには求めているのかもしれませんね。

ひとつは、自然を見に行くパターン。海や山へ車で行って戻ってくるだけという日もあります。たとえば海へ行っても、潜ったりしませんし、砂浜に行かないときもありますし、車から降りないこともあるくらいです。今いる場所から別の場所へ行って気分を変えると、楽になるんですよね。子どもの頃は、実家がレストランだったので駐車場が広く、しかも田舎なので星がたくさん見えて、よく空を見ていたんですよ。「流れ星がいっこ見えるまでずっと見上げていよう」って、外に布団を敷いたりとかして。そういうことの延長なんでしょうね。

あとは、僕、ご飯が好きなので、美味しそうなご飯屋さんへ行ったり、美味しいワインを買って家で料理をしたり。最近は……いろいろ作っているんですけど、茄子を素麺状にした一皿を作りました。包丁ですーっと素麺みたいに細く切って、片栗粉まぶして茹でるっていう。秋茄子が美味しい季節なので、今ぴったりですよ。


—勝手なイメージなんですけど、金澤さんって、いろんなことを許せるような大きい懐を持っている方かなと思っていて(笑)。どういうときにストレスを感じますか?

金澤:中学生の頃から、懐が大きいって言われてましたね(笑)。でも、たとえば仕事のスケジュールがいっぱいになって、「これをしなければいけない」というような義務がものすごく増えてきてしまったときに、ストレスフルになる可能性はあります。「いつまでにやらなきゃいけない」という仕事があるときは、締め切りが近くなればなるほど義務感が増してしまうので、できるだけ締め切りよりも前、自分がワクワクする状態のときに終えることが一番だなと思っています。それが詰まっているときに、ちょっと窮屈になって、海や山へ逃げ出したくなることがありますね。


どういうファッションが好き?

—どういった服、ブランドを好みますか?

金澤:僕、完全に日本人体型なんです。なので、日本人のデザイナーが作ったものとの相性がすごくよくて。たとえば海外ブランドのジーンズを履くと、足がすっごく余っちゃって、裾を捲ったり切ったりしなきゃいけないんですけど、そうするとパンツとしての全体のバランスが悪くなるんですよね。体格に合うものを選ぼうとすると、日本人デザイナーの方が作ったものが自然と多くなる。体格に合わない服を着ると、バランスが崩れるような気がするし、身体が違和感を感じるので、自分に合うものを選ぶことは必要なのかなって思いますね。

—今日の服は、どちらのものですか?

金澤:靴は、chausser(ショセ)です。恵比寿にお店があるんですけど、これも日本人のデザイナーの方が作っているブランドで、日本人用の木型とかがいくつかあって、足に合うんですよね。

パンツは、sawa takai。デザイナーの高井佐和ちゃんは、今ニューヨークに住んでいるんですけど、日本でも売っていて。デザインがとってもきれいで、やっぱり僕の体型には合っているので、重宝させてもらっています。

シャツは、Scye(サイ)ですね。僕、半袖のシャツって、ずっと違和感があったんですよ。「袖が切れてるし、でも襟があるし、なんかちょっとバランスが悪いな」とか思っちゃってたんです(笑)。でも、このScyeの半袖のシャツは自分の身体のバランスに合うし、すごくきれいに見えるし、どんなところでも着られます。


オフの日に聴きたい10曲

ーKKBOXのプレイリストを作るにあたって、「オフの日に聴きたい曲」をテーマに10曲選んでいただきました。

Waltz for Debby, Pt. 1 / Bill Evans

In a Sentimental Mood / Duke Ellington & John Coltrane

That Old Feeling / Chet Baker

I'm The Girl / Roberta Flack

Places We Won't Walk / Bruno Major

Shenandoah / Keith Jarrett

It's All Right〜For Sentimental Reasons / Sam Cooke

Sing Sing Sing / Benny Goodman

Superstition / Stevie Wonder

Too Much / Sufjan Stevens


—全体的に、ジャズ系の楽曲が多いですね。

金澤:ここ半年〜1年くらいで、音楽を聴くようになりまして(笑)。ミュージシャンって、みんな音楽の歴史とかにまで詳しかったりするけど、僕はそれほど音楽の知識を入れないようにしていたんです。でも、そろそろ入れてもいいかなと思って、ジャズとか、最近ではソウルとかのルーツを毎日1枚聴いたりしています。あと、毎週リリースされる新譜はサブスクで聴いていますね。


—休みの日にジャズが聴きたくなるのは、どうしてだと思いますか?

金澤:たとえばChet Bakerとか、音楽を聴くだけで、すごく豊かにご飯を食べている気持ちになれるんですよ。フォークとナイフが触れる、カタカタという音との相性もとってもよくて。それだけで僕は満足する。「今日はいつもよりもちょっと贅沢に花を飾ってみようかな」くらいの感覚に近いですね。


—10曲のなかでSufjan Stevens「Too Much」だけが、かなり異彩を放っていますね。

金澤:この曲は、フォーキーな部分と、シンセの部分と、生楽器の弦や木管などの絡みが、僕のなかでベストマッチで。Too Muchなくらいベストマッチなんです(笑)。なので、これを聴くと、「僕も頑張ろう」っていう気分になるんですよね。オフの日って、リラックスする以外に、一瞬でも緊張感をピリッと入れておいたほうが、その日1日がいいものになるような気がして。そのピリッとする、スパイスみたいなものです。


—Sam Cookeは、あえてライブバージョンを選ばれています。Sam CookeがMCも交えながら語りかけるように歌っていて、オーディエンスも合唱しているのが、めちゃくちゃいいですよね。

金澤:ああいうライブができたらいいなって思うんですよね。あのライブはもう、お客さんと会場がひとつになる、最高の形だなと思って。こういうことができたらいいなっていうワクワク感を感じるんです。



最新ミニアルバム『FAB FIVE』、映画『ここは退屈迎えに来て』について

ー映画『ここは退屈迎えに来て』(10月19日公開)で、フジファブリックは初めて劇伴を手掛けました。劇伴を作る経験は、いかがでしたか?

金澤:非常に難しい部分と、やりがいがあるなっていう部分と、ものすごく新鮮な部分がありました。自分たちの音楽を作ることとの一番の違いは、音楽の場合はそれだけで完結するけど、劇伴の場合は、音楽ですべてを語らなくてもよかったり、語りすぎちゃいけなかったりもすることで。たとえばリズムを抜いたりして、「これ、音だけで聴いたらつまんないと思うかもしれないな」というものでも、映像と一緒だといい感じになったり。一つひとつが新たな発見で、非常に勉強になったし、またやりたいなと思いましたね。

出典元:YouTube(KADOKAWA映画)


—主題歌「Water Lily Flower」は、これまでのフジファブリックにはなかった、新鮮な1曲だと思いました。冷たい、曇ってるようなところから始まって、だんだん熱を帯びていくような曲構成というか。

金澤:ああ〜、そのパターンっていうのは、確かにこれまでないですね。頭から流れているギターリフがしっかりとしたいいリフなので、その雰囲気を最後まで、熱量を帯びながら鳴らせて。温まって、そして最後に少し冷めていくみたいなところが、確かに新鮮ですね。タイトルに3つの言葉がつくのも、初めてのような気がします。

出典元:YouTube(フジファブリック Official Channel)


—ミニアルバム『FAB FIVE』(10月3日発売)に収録されている「かくれんぼ」と「Water Lily Flower」を並べて聴くと、「かくれんぼ」の続編が「Water Lily Flower」であるかのようにも聴こえました。「かくれんぼ」で自分の気持ちをうまく伝えられなかった主人公が、「Water Lily Flower」では大切な人と一緒になれた、みたいなストーリーが想像できたりして。歌詞も<太陽が逃げていく>(「かくれんぼ」)と<太陽を追っていたんだよ>(「Water Lily Flower」)と重なる部分がありますよね。

金澤:上手いこと言いますね……新たな発見を聞いたような気がします。いただいた、それ! メモメモ……(笑)。


—作り手としては、完全に無意識ですね?(笑)

金澤:無意識です(笑)。「かくれんぼ」は……自分の気持ちのなかでも、見えなくなってる部分とか、わざと自分で隠している部分があったりするじゃないですか。そういうもどかしさとかモヤモヤ、微妙なところを表現できたらいいなというふうに思っていました。


—来年は結成15周年を迎え、年明けにはフルアルバム『F』のリリースも決定しています。どういったアルバムを作りたいと考えていますか?

金澤:『FAB FIVE』や、前作『STAND!!』とはがらりと変わって、より大きなものができるんじゃないかなと思っています。来年15周年を迎えるにあたって、「フジファブリックってどういうバンドだったっけ?」ということを自分のなかで考えたりして、「だったらこういうことをやろう」とか、いろいろ試行錯誤しながらやってるところです。「聴いたことないけど、なんか心にストンと落ちる」という感じの曲ができたらいいなと思っていて、そういう大きなアルバムが作れることを期待しています。


(写真:にしゆきみ)

▼フジファブリックプロフィール

2000年、志村正彦を中心に結成。2009年、志村が急逝し、2011年夏より山内総一郎(Vo/Gt.)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(Ba)の新体制で本格始動。叙情性と普遍性と変態性が見事に一体化した、シーン屈指の個性派ロックバンド。「銀河」、「茜色の夕日」、「若者のすべて」などの代表曲を送り出し、2010年にリリースしたアルバム『MUSIC』収録曲「夜明けのBEAT」が「モテキ」TVドラマ版(2010年)主題歌、映画版(2011年)オープニングテーマとして連続起用された。更には「つり球」「宇宙兄弟」「銀の匙 Silver Spoon」「アオハライド」「マギ シンドバッドの冒険」と数多くのアニメ主題歌も担当。シングル「カンヌの休日 Feat. 山田孝之」は俳優・山田孝之氏がボーカルで参加し、疾走感に溢れ力強い印象的なサウンドとインパクトのある歌詞が話題になった。来年2019年に結成15周年を迎え、同年10月には”フジファブリック 15th anniversary SPECIAL LIVE at 大阪城ホール2019「IN MY TOWN」”を開催する。
http://fujifabric.com/

矢島由佳子

編集者・ライター。主に音楽・エンタメ関係に携わる。大学卒業後、大手芸能事務所にてアーティストマネージャーを務める。現在、カルチャーサイト「CINRA.NET」編集部に所属しながら、フリーランスとしても活動中。 https://twitter.com/yukako210

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