感覚ピエロが史上最大規模のライブに挑戦「メモリアルなステージ」 vol.1

  • 邦楽
田山雄士

(L to R;秋月琢登、横山直弘、滝口大樹、西尾アキレス健太)

史上最大規模のワンマンに挑戦するアーティストをフィーチャーした新たな連載企画「メモリアルなステージ」の1回目は感覚ピエロ。幕張メッセイベントホールでの自身最大キャパのアリーナワンマン「感覚ピエロ 5-6th anniversary『LIVE - RATION 2019 FINAL』〜幕張ヴァージンはあなたのもの〜」を11月4日(月・祝)に控える彼らが、それに先駆けてベストアルバム『全裸』を9月4日にリリースする。

初回限定盤には、TeddyLoid、ハヤシ ヒロユキ(POLYSICS)、naotohiroyama(ORANGE RANGE/delofamilia)、ヨコタシンノスケ(キュウソネコカミ)、岡崎体育という錚々たるメンツが彼らの代表曲「O・P・P・A・I」のリミックス音源を収録したCD『O・P・P・A・I Remixes』(“おっぱいの日”8月1日に配信リリース済み)も付いてくる。

そして、幕張メッセでのライブに向けて、同公演のDVD化を目的とした、初の試みとなるクラウドファンディングも9月15日(日)まで絶賛実施中! リターンとしては、ライブDVD、メンバーからのメッセージ動画、限定グッズなどが用意される。また、YouTube番組『感覚ピエロの××TV』も公開中なので、こちらもチェックしてみてほしい。

そんな結成6周年を迎えたばかりの感覚ピエロに、11月の幕張公演に向けて、さらにベストアルバム『全裸』について、たっぷりと語ってもらった。


何倍にもパワーアップできた感覚ピエロを見せられそうです!

−5月から7月にかけてのツアー(「感覚ピエロ 5-6th anniversary『LIVE - RATION 2019』〜奮い立たせてなんぼでしょ〜」)を終えたところですけど(※取材は8月初旬)、幕張メッセ公演が迫ってきた中、バンドとして今どんな手ごたえを感じてますか?

横山直弘(Vo&Gt):7月末で僕ら結成6周年を迎えたんですけど、この6年でいちばんいい状態に来てますね。幕張では、これまで一歩一歩悩んで積み重ねてきた証が見せられそうというか。対バンしたバンドからもめっちゃ刺激をもらったし、たった2ヵ月のツアーとはいえ、感覚ピエロは何倍にもパワーアップできたと思います。

アキレス健太(Dr):仕上がってきたよね。いろいろな時期を経て、メンバー全員が心底ライブを楽しめてるのがわかるんです。ドラマーとしてステージを後ろから見てて、こんなに3人がいい表情でやってるのは初めてだなと感じたツアーだったんですよ。

滝口大樹(Ba):バンド感がより増した気がします。対バンツアーも新鮮でした。僕らは活動の仕方とか一匹狼みたいな側面もあったんで、はじめましてのバンドが多かった中、それでもすごく仲間になれたというか。共演した方々の想いも背負ったと言ったらおかしいかもしれないですけど、またひとつ成長できて幕張に挑めそうです。

秋月琢登(Gt):幅広いジャンルのバンドと共演したもんな。対バンしてるのがイメージしづらい人ともやったんですけど、「感覚ピエロのお客さんってすごくやさしいし、音楽好きっぽいよね」とか対バン相手の方に言ってもらえたのが個人的には嬉しかったですね。お客さんやリスナーは僕らの鏡でもあると思ってるんで。そういう意味でもええツアーやったなと感じてます。


こういう形でリスナーといっしょに作品作りができるのはなかなかない

−幕張公演のDVD化を目的としたクラウドファンディングも始まってますね。

秋月:公演タイトルも「幕張ヴァージン」になってるとおり、今年は初めての試みをいろいろしたいんですよ。クラウドファンディングはお客さんから先にお金を集めるのがどうしても強く出てしまうんですが、DIYな活動をやってる自分たちにとっては信頼を買うような取り組みだと思ってます。だから、参加してくれた人には感覚ピエロの姿勢が100%伝わってるはず。僕らの言い方だったりでまだ巻き込み切れてない難しさもありますけど、こういう形でリスナーといっしょに作品作りができるのはあまりない機会なんで、お互いにいい経験をしてる気がしますね。

横山:お客さんからの愛をすごくダイレクトに感じる企画だなって、やってみて思いましたね。「これからお渡ししますよ」っていうものに対して、「感覚ピエロがそう言うなら応援するよ」って人の声なので。果たしてどのくらい集まるかわからない中で、これだけの人たちが支援してくださってるのがすでに嬉しいんです。その輪を残りの期間で広げていけたら最高だなって。

秋月:ホンマの目標達成率はもっと高かったりするからね。僕らはまだこんなもんじゃないって気持ちもあるので。さらなる豪華なリターンをしたいとも考えてます。

−YouTube番組『感覚ピエロの××TV』が幕張にどう繋がっていくのかも楽しみです。リズム隊の個性が大爆発してましたね。

秋月:ですよね。完全に西尾と滝口のプレゼンテーションなんよ!

アキレス:今のところ、そうなってもうてるな(笑)。

滝口:まさかリズム隊の2人から企画が始まるとは思わないですよね。

横山:あれを観てもらえると、幕張が2倍3倍おいしいんじゃない?

秋月:SNS上だけでは出せない部分、メンバーのキャラ立ちがロング尺でわかるからね。

アキレス:俺はただただ楽しかったよ! やりたいことをして、それをメンバーにも知ってもらっただけやから。

秋月:いちばんウキウキしてたもんな(笑)。

滝口:俺も楽しかったよ。めちゃめちゃインドアな内容やけど。

秋月:あのアクアリウムも幕張でプレゼントしたらええんちゃうかな(笑)。


俺らは隠すほどダサい曲なんて作ってない

−このタイミングでベストアルバム『全裸』をリリースする理由というのは?

秋月:やっぱり、チャレンジする年にしたいんです。でも、幕張のあとに出すのは違う気がしたので、どうせやったら今までの僕らを一枚にギュッとまとめて、それを引っさげて最大規模のライブに挑みたいなと思ったんですよね。この『全裸』を自分たちの新しい名刺にして。

横山:ベスト盤なんですけど、すごくバラエティーに富んでるし、オリジナルアルバムとしても聴けると思うんですよ。一方でバンドの成長の記録がそのまま詰まった、ドキュメンタリーを観るような感じのアルバムでもあって、「感覚ピエロってなんなの?」に対するアンサーとなる一枚をここで用意できたのは、幕張メッセを迎えるにあたってとても大きなことですね。

秋月:今までのリード曲を時系列に並べたシンプルなものになってます。もちろん、他にもリード曲はあるんですけど、最後は「ありあまるフェイク」で終わりたかったので、厳密に言うと2013年から2018年までの曲ですね。

−アルバムタイトルどおり、本当にありのままの自分たちっていう。

秋月:そうですね。ベストアルバムだとリテイクをするバンドも多いと思うんですけど、僕らは当時のままの音源を出したくて。そこも含めて、ありのまま曝け出してます。

横山:録り直してはみたんだよね、全曲。でも、それを採用しなかった。

秋月:リテイクしたものを聴いたとき、自分たちに嘘をつくじゃないですけど、過去を消しちゃうような感じがあったんよな。そうじゃなく、感覚ピエロが歩いてきた軌跡をちゃんと全部見せたいなと思ったんですよね。

滝口:リテイクしたのとオリジナルを聴き比べると、けっこうギャップを感じたというかね。

アキレス:最初は小っ恥ずかしいところもあったけど、元のまま並べて聴いてみたら「俺ら隠すほどダサい曲なんて作ってないな」「当時からかっこええことやれてたんやな」って思ったんで。

秋月:リテイクしたバージョンが何回聴いても耳に馴染まんかったですよね。これはきっとリスナーもそうなんちゃうかなと思って。音楽的には録り直すほうが正解かもしれないんですけどね。ライブを重ねて技量が上がってる部分はあるやろうし。でも、いい音で録れたのをOKとするよりは、あの頃の勢いや感情も全部詰まったものをベスト盤に残したほうがええなと。

横山:「ここミスってんな〜」とか、ニヤッとしちゃうポイントもあるんですけどね(笑)。でも、もしカート・コバーンが今生きてたとして、ニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」を2019年に録り直してベストに入れるとなったら、リスナー的にOKじゃない気がするじゃないですか。あの時代の彼らだからこそのかっこよさがあると思うんで。それと同じで、過去のどの曲もあの頃の僕らが演奏してるから素晴らしいんだろうなって感じたんです。この採用をした意味を踏まえて、順番に聴いてもらえると、アルバムの楽しみ方がより増えるんじゃないかな。


昔は誰も受け入れてくれなかった「O・P・P・A・I」

−全16曲のラインナップを見て、あらためて自分たちのことをどういうバンドだなと感じますか?

横山:「やりたいことやってんなー!」って感じるよね。

秋月:捻くれてるよなあ(笑)。「この曲とこの曲って同じバンドなの?」と思われるかもしれないんですけど、僕ら4人で演奏すれば感覚ピエロになるという強さは出てる気がしますね。考え方ややりたいことが変わっていく様子もちゃんと表われてるし。

−いろんなものに抗ってきた感じも出てますよね。憤りや反骨心が原動力になってるというか。J-POPに宣戦布告するような「Japanese-Pop-Music」だったり、4つ打ちダンスロックブームを皮肉った「A-Han!!」だったり。

横山:ジャンルで括られたくない捻くれた部分があるんでしょうね。カテゴライズしたほうがリスナーにとってはわかりやすいんだろうし、だから取っつきにくいところもあると思うんですけど、僕らはそれを旨味に変えていける感じもしてるんですよね。

−今となっては、取っつきやすいバンドのイメージもありますよ。

全員:あはははは!(笑)。

秋月:「O・P・P・A・I」なんかは今やフェスでも歓迎してもらえますけど、昔はライブで誰も受け入れてくれなかったですから! よく心折れずに……まあ、かなり折れてたか。ようやって来れたなっていう曲ですよ(笑)。もしかすると、捨ててもええ曲になってたかもしれん。

滝口:「セイ!」とかお客さんに振っても、シーーーンとしてたもんなー。

横山:もう、無だったね。反応ゼロ。心ガンガン折れてたわ(笑)。

アキレス:つらかったなあ。

秋月:でも、やり続けるのって大事やな。そんな感じでずっとやってる曲なので、もう1回スポットライトを当ててあげたいなと思って。いろいろなクリエイターさんが「O・P・P・A・I」を面白がって、リミックスをしてくださったのは嬉しい限りでしたね。


「拝啓、いつかの君へ」で丸くなったなんて思ってない

−バンドのターニングポイントとなった曲はどれだと思いますか?

横山:「拝啓、いつかの君へ」ですね。あそこで見られる数がグンと変わりましたから。ドラマ『ゆとりですがなにか』の主題歌に使ってもらった上に、曲が流れるときにまさか僕らの姿が映るっていう、それ以前もそれ以後も聞いたことがないような試みをやっていただいて、愛情もすごく感じたし。もともとドラマに対して書き下ろした曲じゃないのに、そのために作った曲に聞こえる神懸かり的なハマり方もあって、バンドを続けてるとこういうめぐり逢いがあるのかって。これまで200〜300人のライブハウスで感覚ピエロを観てきた人よりも、何倍もの人たちが自分たちを見てる実感が湧いたので、何かと印象深い曲です。

秋月:初めてまこっちゃん(田中真琴)がミュージックビデオに出てくれた「A-Han!!」も初期のインパクトある出来事でしたね。今は女優さんになりましたけど、当時はフリーの学生で、彼女といっしょに作品を作ったあのタイミングでこれまでにない反応をいろんな方がしてくれたんです。で、その後もたくさんのミュージックビデオに出てもらってるんで。

−「拝啓、いつかの君へ」のあたりから、「感覚ピエロってこんな曲も作るんだ!」というリアクションが増えていきましたよね。

秋月:そうですね。「拝啓、いつかの君へ」を聴いた人が、「O・P・P・A・I」「メリーさん」「A-Han!!」とかを掘り下げてくれて、「なんや、このバンドは!?」みたいな感じになっていった流れもありました。

横山:角度を変えた尖り方が出てきたんじゃないかな。それまではムカつくことに対して、殴りかかりに行くようなスタイルだったけど、「俺らはどうなんだ?」って内側に向けてパンチしてる感じ。言葉の説得力が増して、より牙が鋭くなった。「ただフザけてるだけじゃないんだぞ」というのも伝わっただろうし。だから「拝啓、いつかの君へ」で丸くなったとは決して思ってないですね。

−むしろ、どんどん鋭くなっていってますよね。アルバムの最後の「ありあまるフェイク」がいちばん尖ってると思うので。

アキレス:ぜんぜん丸くなってない(笑)。

滝口:(歌詞で)「てめぇで考えろボケ」言うてるしな!


付き合ってた子をフッたことがきっかけで書けた曲

−個人的に思い入れの深い曲も教えてください。

アキレス:『全裸』の中でですか?

秋月:えっ、それ以外で挙げようとしてんの!?

全員:わはははは!(笑)

アキレス:60曲くらい候補あるなって思った。

滝口:何言うてんの?(笑)。

秋月:ベスト、買ってもらえんようになってまうやん!

横山:強いてあげるなら「Japanese-Pop-Music」かな。というのは、ぶっちゃけ当時KANA-BOONにライバル意識があったんですけど、そのKANA-BOONの(谷口)鮪さんがラジオでこの曲をかけてくれて、「すごくメロディーがいい」と言ってもらえたのが嬉しくて、記憶に強く残ってますね。今もあのときと同じ熱量を込めて歌える曲なんですよ。「俺らがやってるのがJapanese-Pop-Musicだ」ってことに嘘偽りはないから。

アキレス:難しいなあ。でも、「A BANANA」ですかね。僕が歌詞を書いた曲で初めてミュージックビデオになったんですよ。いろいろ問題(過激すぎる内容のため、YouTubeで年齢制限が設けられた)も起きましたけど(笑)。ライブでお客さんとひとつになれる最高の夏曲ですしね。

滝口:俺は「ありあまるフェイク」かな。横山からデモをもらったときに「好きに弾いていいよー」って言われたんですよ。その言葉を受けて、当時の等身大をスッとベースラインに落とし込めた感覚があって。あまり迷わず自分の中に入ってきた曲という意味で印象深いんです。結成当初の「メリーさん」の頃とはだいぶ違う、このバンドを続けてきてひとつ納得行くものが出せた気がします。

秋月:僕は「さよなら人色」ですね。フルアルバムの『色色人色』を作ってたときで、あと1曲だけ収録曲の枠があって。面白い部分もかっこええ部分も際立つ楽曲が揃ってる中、なんかひとつ足りないところで悶々とした末、できあがった曲なんですよ。個人的に初めてラブソングチックな内容を書いて、「ラブソングってどうやって書いたらええんやろ?」と悩んだりもして。結局、当時付き合ってた子をフッたのがきっかけになって、歌詞がスラスラ出てきたんです。やっぱり自分の体験というか、ホンマに思ってることしか書けへんのやなと。そんな発見もあったので。


ステージに立ってる瞬間は誰よりもNo.1でありたい

−最後に、あらためて幕張メッセ公演に触れましょうか。自身最大キャパのワンマンに向けて、挑戦だと感じる部分は?

秋月:ああいう広い会場だとお客さんとの距離が遠くなっちゃうんで、後ろの人までどんな見せ方と楽しませ方ができるかですよね。楽曲が映えるような演出を含めて、臨場感や一体感を作るのは大きな挑戦です。いろいろ考えてますよ。

横山:ステージの上で頂点であるのがエンターテイナーだと思うんです。ミッキーマウスがそうであるように。俺、この前初めてディズニーに連れていってもらって、超感動したんですよ。

全員:あはははは!(笑)。

アキレス:ツアー前に、メンバー全員でな!

横山:「タートル・トーク」とか観て、いろいろ学んだからさ。

滝口:どこで感銘受けてるん?(笑)。

秋月:横ちゃんに新たな意識も生まれたことやし。幕張ワンマン、成功させるしかないな!

横山:成功させます! ただ単純にビッグマウスなんじゃなくて、ステージに立ってる瞬間は誰よりもNo.1でありたい。お客さんにエンタメと感じてもらうために、幕張メッセは「感覚ピエロが日本でいちばんかっこいいロックバンドなんだぜ!」ってことを目の当たりにしていただけるライブにしたいです。


(撮影:にしゆきみ)

田山雄士

フリーのライター。元『CDジャーナル』編集部。日本のロックバンド以外に、シンガーソングライター、洋楽、映画も好きです。

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