AIとMJ116のアジアを繋ぐスーパーコラボについて

  • 邦楽
丸屋九兵衛

知人に、MJ116が台湾で一番いけてるアーティストだっていうのを聞いてから、いろいろ調べてすごくかっこいいなと思って。「こんなアーティストがいたの?もっと早く知りたかった!」と思ったね。

台湾のヒップホップ・グループ「MJ116」を語る時、AIは賛辞を惜しまない。「痩子」ことE-SO、「小春」ことKenzy、そして巨漢の「大淵」ことMutaからなるMJ116は、あの台北アリーナで3日間連続公演するほどの大物であり、知られざるヒップホップ大国・台湾のシーンでも屈指の人気グループだ。こうしてMJ116という存在を知ったAI。そこからコラボの話はトントン拍子に進み、やがて完成したのが名曲「You Never Know」である。


そんなAIと、サマーソニックでの共演のために来日したMJ116との合同インタビュー。なお、MJ116の発言はメンバーの総意として「MJ」名義で表記した(大半の質問にはリーダーE-SOが回答)。

—MJ116の皆さんは事前にAIを知っていましたか?

MJ:もともとAIさんの曲は聴いていて、素晴らしい先輩アーティストとして尊敬していた。だから、今回の話をもらった時点で、すぐにOKと。コラボレーションできたことに興奮しています。

AI:嬉しすぎる!

—AI以外に知っている日本のアーティストといえば?

MJ:台湾レッドブルの関係で共演したAKLO。あとはAK-69やDS455。

— 一方、AIが知っている台湾のアーティストといえば?

AI:アーメイさん(張惠妹)。2004年くらいにMTVの企画で安室奈美恵さんと一緒に台湾に行った時に存在を知りました。その時にいろいろ聴いて「ああ、台湾にもいろいろなアーティストがいるんだな」と。台湾に限らずアジアの人たちとコラボしたいしたいとずっと思っていました。


—MJ116は、2018年に「台湾グラミー」こと金曲獎で最優秀グループ賞を獲得していますよね。

AI:それはヒップホップの人たちもよく受賞するもの?

MJ:そんなにいないかな。ヒップホップだと、過去にはMC HotDogとMissKoくらい。ただ、今年は例外的にヒップホップ・アーティストが多くて、OziやLeo王も

—MJ116は大陸でもツアーしてますよね。大陸での反応は?

MJ:この1〜2年でやっとヒップホップが流行っただけあって、大陸のオーディエンスはまだまだ発展中。例えば台北とは全然違います。台北だとヒップホップが当たり前なので客層は慣れた感じだけど、大陸のお客さんはテンションが高くて、エネルギーをもらえます。大陸のツアーは新鮮で良い経験でした。

—そんなMJの皆さんは、日本の音楽シーンをどれくらい知っていますか?

AI:正直にね!(笑)


MJ:僕たちが若い頃、台湾のメディアは日本の音楽をたくさん取り上げていたから、日本のヒップホップ系アーティストをよく聴いていました。DS455とかNITRO MICROPHONE UNDERGROUNDとか、ZeebraとかD.Oとか。だけど、今は韓国の音楽の方が強い。だから日本の音楽がどんどん流れなくなっているのもあるし、自分で調べるとしても自分が知っているアーティストばかりになってしまう。古いアーティストの中には、もう活動していない人もいるし、情報がどんどん少なくなっている、という状況ですね。

—このコラボレーションが実現するまで、AIはアジアのアーティストをいろいろ調べたとか。

AI:コラボ相手を探して、いろんな国の音楽を聴いたんですよ。タイとかフィリピンとか大陸とか韓国とか。台湾以外の国にもいいものはあった。特に韓国には好きなアーティストがいるけど、そういう人に限って、もうあまり活動していなかったり。でもMJの曲を聴いた時に、やっと出会えたと思いました。


言葉がすんなり入ってくるし、何言っているかわかんないんだけどかっこいい!みたいな。「コラボしたい」と言うと、売れている人や超有名アーティストを薦められるじゃないですか?そういう人たちは全然良くないわけですよ。でも、彼らを聴いたときにカッコいいなと思ったよね。やばいなと。

—「You Never Know」を作るまでの経緯は?

AI:直接は会えないから、とりあえずテレビ電話で挨拶をしよう、と。お互い顔も見たことないし。それでいろいろ喋って、曲に対するパッションを伝えたの。でも、こういうメッセージがある曲って、かっこいい人たちはなかなかやらないじゃないですか?だから「そんなのやらねえよ」って言われるかもしれない。でも彼らはわかってくれたので、この人たちとは心で通じ合えるなと思いました。

MJ:若い時にはパーティー系の曲をたくさん作っていたけど、いろんな人と出会って、いろいろな経験を重ねてきました。そんな今、僕たち3人が表現したいのも、まさに愛になっている。だからAIさんがもし「パーティーの曲を作ろうよ」って言ってきたらどうしようと思っていました。

AI:わたしも昔は、パーティーでシャンパン空けて…みたいな曲もやっていたけど、大人になると世界の様々な問題に興味が出てきて。彼らの歌詞を見た時、「言いたいことはまさにこれ」と思いました。しかも、わたしは日本人で、皆さんは台湾人だけど、この曲を一緒にやるということにすごく意味があると思うんですね。もちろん、わたしが他の日本のアーティストとやってもいいんだけど、育った場所や言葉が違う人たちとつながれるということ。やっぱり、それがメッセージとして、とても意味があります。


AI曰く「LAから呼んできたバンドに、シンガー3人、ダンサー9人」という大所帯で臨んだサマーソニックでのステージ。後半、AIに紹介されて登場したMJ116が自曲「走跳」を披露してから、AIとMJ116で「You Never Know」をパフォームした。両者が醸し出す抜群のケミストリーは、月末、台湾・新北市で開催される貢寮国際海洋音楽祭(Hohaiyan Rock Festival)でも発揮されるに違いない。


丸屋九兵衛

丸屋九兵衛 QB Maruya(まるや きゅうべえ) 台北を「away-home」と呼ぶ男。音楽評論家/コラムニスト/翻訳家/トーカー/歴史コメンテーター。長年、超ニッチなカテゴリーから学術的分野にまで及ぶ知識で人々を混乱させてきたが、近年はエスカレートしトークライブを展開している。『SFマガジン』『韓流旋風』『サイゾー』『水道橋博士のメルマ旬報』等で連載中。 https://twitter.com/QB_MARUYA

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