Mayday、3度目の武道館を「歌詞の世界」とともに振り返る
台湾のスーパーバンド、Mayday(五月天)が、結成20周年の節目の年である2017年3月に台湾・高雄からワールドツアー「LIFE」をスタートさせ、待望の日本公演が去る5月19日、20日に日本武道館で開催された。2年連続、彼らにとって3度目の武道館公演だ。
写真:Viola Kam (V'z Twinkle)
最新作『自伝』は、『人生は有限。しかし、友情や家族愛など、人生を通して描かれる「自伝」には無限の可能性がある。』というコンセプトを持っており、今回の武道館公演も、「人生」という壮大なテーマを軸に構成されていた。ステージの両サイドに設置されたスクリーンには歌詞の字幕が映し出され、殆どの曲で日本語訳も同時に出ていたので、たとえ中国語(や、台湾語)を全く理解できなかったとしても、歌詞を味わいながら彼らの音楽を楽しむことができる。
ここでは、多くの人の心を掴んで離さないMaydayの「歌詞の世界」にも触れながら、5月20日のライヴを振り返っていきたい。
取材・文 / 岡村有里子
人生無限公司と題されたワールドツアー
写真:Viola Kam (V'z Twinkle)
開演予定時刻の1分前に会場が暗転。メンバー5人と、長官役のホアン・ボー(中国の俳優/歌手)などが出演する「ヒーローもの」の映像が、これから始まるライヴへの期待感を煽る(映像は、この後もライヴの内容に沿いながら曲間で3回挟み込まれた)。ステージの両サイドでダイナミックにパイロが上がると、1曲目の「Party Animal / 派對動物」がスタートした。ステージ前方左から、MONSTER(怪獸/G)、MASA(瑪莎/B)、ASHIN(阿信/Vo)、STONE(石頭/G)の4人が並び、後方、少し高い位置にMING(冠佑/D)がいる。ステージ奥と両サイドに大きなスクリーンが設置されているだけのシンプルなステージだが、お馴染みの(色や点滅を無線制御できる)ペンライトが会場中を彩り、レーザーが縦横無尽に飛び交う派手な照明演出に、聴覚のみならず視覚も刺激される。
写真:藤川正典
「OAOA」では、MONSTERとSTONEがステージ両端からアリーナに向かって坂になっている花道を下り、畳み掛けるように次の曲、「出陣の歌 / 入陣曲」へ。バンドと観客との一体感も凄まじく、会場のボルテージは早くも最高潮に達していた。
「君は幸せじゃないのに / 你不是真正的快樂」、「乾杯」のあとは、ジャズ・アレンジが印象的な「兄弟」、「人生有限会社/人生有限公司」へ。この2曲はアルバムの流れと同様に連続で演奏され、「人生有限会社/人生有限公司」では、「命をどう使うか、それが使命」、「人生の可能性は無限」と歌われる。
写真:Viola Kam (V'z Twinkle)
心を掴んで離さないMaydayの「歌詞の世界」
ライヴ中盤、「成功間近 / 成名在望」はMASAのピアノと歌からスタートした。「満ち足りた想い出 / 知足」のイントロが聞こえてくると観客はスマートフォンのライトをかざし、間奏ではお約束の「キラキラ星」を(中国語で)合唱。
「頑固」では、レオン・カーフェイ(香港の俳優)が出演しているこの曲のミュージック・ビデオがスクリーンに流れ、その相乗効果で曲に込められたメッセージがより心に沁み入った。
「頑固」
一度また一度 涙を飲み 打ち砕かれた自分の欠片を繋ぎ合わせる
一日また一日 心の奥にいる あの頑固な自分を 信じているかい
「人生、思うようにいかないこともあるかもしれない。でも自分が成し遂げたいと思っていること、自分が描いていた夢を思い出して。自分を信じて、諦めないで」と、背中を押してくれているようだ。行間にも感情が溢れ出ている。
出典元: YouTube(相信音樂BinMusic)
終盤、「I will carry you」では照明も、ペンライトの光も、会場全体が真っ赤に染まる。ASHINがステージ両サイドの花道を下り、STONEとMONSTERが上昇したリフトの上でギター・ソロを披露した「瞬間少年ジャンプ / 離開地球表面」。MASAがASHINに促され、ドラえもんの声真似で曲紹介をし、5人で歌った「どこでもドア / 任意門」。そして本編ラストは、「人生は海のよう / 人生海海」だった。
写真:Viola Kam (V'z Twinkle)
今回の公演は、観客が「人生有限会社」の「武道館支社」に「出勤」しているという設定になっており、本編終了後は、アンコールを求め「加班!(残業という意味の中国語)」コールが会場中から沸き起こった。5人がステージに戻ってきたあとは、なんと、GLAYのメンバーがサプライズで登場して「Dancin’ Dancin’」が披露され、会場は更にヒートアップ!
写真:Viola Kam (V'z Twinkle)
今年3月、GLAYの台北アリーナ公演にMaydayが出演した際、「5月の武道館公演にゲストとして出ていただけませんか?」と、ステージ上でお願いしたことからこの共演が実現したという。今回、武道館のステージ上では「対バン」の約束が交わされていた。
写真:Viola Kam (V'z Twinkle)
「青春の彼方 / 盛夏光年」が始まると会場からは歓喜の声が上がり、ライヴが終わりに近づいてきていることを予感させる「あっという間 / 轉眼」へと続いていった。
「あっという間 / 轉眼」
私の時代にはまだレコード店があって 博物館みたいに希望で溢れていた
ビートルズとガンズ 愛と悲しみの歌が 誇り高く鳴り響く成功はまるで砂の城 命は波のよう 全ての幻を時代の波がさらっていく
預金とビル 苦闘と渇望 そして終演よろめき歩く姿を 誰かが笑って思い出してくれるかな
平凡な日々や 小さな夢が いちばん大切だと いつか気づくだろう誰か 真実を教えてくれないか 時間は 壮大な嘘だと
日々は諸行無常で 生命の正体は 実は ただの幻だったと
この曲は、「自伝」の最終章として改めて人生を振り返り、人生で直面した現実、やるせない気持ち、孤独、人生の最期が近づいてきたときに誰もがきっと心の中で感じる恐れなどがストレートに綴られている。スクリーンに流れていた、歌詞の内容とリンクしたペーパークラフト・アニメーションの映像が秀逸で、涙を流す姿も多く見られた。
メンバーは肩を組み、一列に並んでファンに別れを告げたものの、残業(アンコール)を求める声が鳴り止まない。それに応じて、台湾語曲の「馬鹿 / 憨人」、そして「僕は僕に嘘をつかない / 倔強」が(最後のサビから)歌われ、満員の観客によるシンガロングで大団円を迎えた。
出典元: YouTube(相信音樂BinMusic)
「僕は僕に嘘をつかない / 倔強」
僕と僕の最後の意地 両手をぎゅっと握り締め 絶対に放さない
次の場所は天国か たとえ失望しても絶望しちゃいけない
僕と僕の誇るべき意地 風の中 大声で歌う
これは自分のための挑戦 これが僕と僕の意地
Maydayの歌とともに、過去〜現在〜未来と時間旅行した約2時間半。まるで一本の映画を観終えた時のような充足感でいっぱいになり、その余韻を今も楽しんでいる。