菅田将暉デビューアルバム『PLAY(Special Edition)』全曲解説

菅田将暉デビューアルバム『PLAY(Special Edition)』全曲解説
柴那典
柴那典

菅田将暉がデビューアルバム『PLAY』をリリースした。

先日には映画『あゝ、荒野』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞し、名実ともに日本を代表する俳優の一人となった彼。昨年には他にも『帝一の國』『火花』など数々の話題作で主演をつとめてきたが、その一方で、「見たこともない景色」でCDデビューを果たし、音楽活動も意欲的に繰り広げてきた。

アルバム『PLAY』は様々なアーティストが楽曲を提供し、菅田将暉自身が作詞や作曲を手掛けるナンバーも収録した一枚。バラエティあふれるスタイルで、歌手として、アーティストとしての鮮烈な才能が開花している。

その内容を一曲ずつ解説していこう。

1. さよならエレジー



自身も出演するドラマ『トドメの接吻』の主題歌としてシンガーソングライターの石崎ひゅーいが書き下ろした一曲。力強いアコースティック・ギターのフレーズから始まる疾走感たっぷりのナンバーだ。石崎ひゅーいと菅田将暉は雑誌の対談をきっかけに出会い意気投合、昨年には共に時間を過ごす中で10曲以上を作り上げたという。「そばにいるだけで本当幸せだったな」という一節が印象的な歌詞には、ドラマの内容だけでなく、菅田将暉が若い頃から親交が深く『トドメの接吻』でも主演をつとめた俳優、山崎賢人との関係も織り込まれている。

出典元:Sony Music (Japan)


2. いいんだよ、きっと




「さよならエレジー」と同じく石崎ひゅーいが作曲を手掛けた一曲。作詞は菅田将暉自身によるものだ。「夏の暑さを誤魔化しにビルの中に逃げ込んで日陰で涼む君の目はとても暗い」という歌い出しから始まる歌詞の内容は、実際に彼が見かけた眼鏡姿の少年の様子を描いたもの。ゆったりとしたフォークロックの曲調には、大ファンである父親の影響で小さい頃から聴いて育ったという吉田拓郎を彷彿とさせるものがある。


3. 見たこともない景色




デビューシングルとしてリリースされた「見たことのない景色」は、自身も「鬼ちゃん」として出演するauのCM「三太郎」シリーズ「応援」篇のために作られた一曲。2018年ロシアワールドカップに向けて予選を戦っていたサッカー日本代表の試合中継のCMとしてオンエアされ、そこでも歌っていた力強いロックナンバーだ。


4. ピンクのアフロにカザールかけて




忘れらんねえよの柴田隆浩が提供した直情的なパンクロックナンバー。菅田将暉自身が書き下ろした歌詞は、「僕のパスポートの職業の欄に何を書きゃいいんだよ」「自由に自由にやらせてよ そしたら最高の形にしてみせるから」「これだけは言わせてよ 僕の人生は僕のものなんだ」と、日々のフラストレーションを真っ直ぐにぶつけたような内容。無骨なバンドサウンドと共に彼の叫びが勢いよく放たれている。


5. 風になってゆく




黒猫チェルシーの渡辺大知が作詞作曲を提供した一曲。演奏も黒猫チェルシーが担当し、彼ららしいヴィンテージ感あるロックンロールを形にしている。バンドのヴォーカリストとしてキャリアをスタートさせつつ俳優としてもキャリアを重ね、映画の監督や脚本も手掛けるなどマルチな活躍を見せる渡辺大知は、菅田将暉と通じ合う感性を持つ相手と言えるだろう。


6. 台詞




石崎ひゅーいが作詞作曲を手掛けた一曲。アコースティックギター主体のスローテンポでじっくりと感情がこみ上げてくる曲調は、まるで映画のワンシーンを思わせるようなもの。「俺をふるなんてたいした女だな しかも雨が降るなんて映画じゃあるまいし」という歌い出しの歌詞も、俳優である菅田将暉が歌うことで独特の味わいが生まれている。


7. スプリンター




amazarashiの秋田ひろむが作詞作曲を担当した一曲。公式HPの特設サイトでは「理想に向かって走り続ける愚直な青年をイメージして作りました」と秋田ひろむがコメントしているが、まさに彼らしい熱くドラマティックな一曲になっている。どこかamazarashiを彷彿とさせる菅田将暉の歌声も印象的だ。


8. ゆらゆら




このアルバムの中では唯一、菅田将暉が作詞作曲を担当した一曲。2016年公開の映画『何者』に出演し、バンド「OVER MUSIC」のヴォーカルとギターを担当するバンドマン役を演じた菅田将暉。その時に出会った元「カラスは真っ白」のシミズコウヘイ(ギター)、オチ・ザ・ファンク(ベース)、タイヘイ(ドラム)がその後もライブなどでサポートをつとめてきたのだが、この曲は彼らと共にスタジオでアレンジを練っていったという。曲後半でグッと盛り上がっていく展開が聴き所。


9. 呼吸




セカンドシングルとしてリリースされた「呼吸」は、菅田将暉が初めて作詞を手掛けた一曲。思い通りにいかない恋愛を描いた歌詞には自身の実体験が反映されている。センチメンタルなラブソングでもあり、「誰かのために生きる」ということをテーマにした愚直なロックナンバーでもある。

出典元:Sony Music (Japan)


10. 浅草キッド




又吉直樹のベストセラー小説を映画化した『火花』の主題歌となった、ビートたけしの名曲「浅草キッド」のカバー。ダブル主演をつとめた桐谷健太と共に、劇中でお笑い芸人を演じた2人が、いつか売れる日を夢見てもがく青春の日々を情感込めて歌っている。


11. 茜色の夕日




菅田将暉が音楽の道を志すきっかけになったというフジファブリックの名曲「茜色の夕日」を弾き語りでカバー。本格的にアーティストとしてデビューする前から歌っていたというこの曲は、ライブなどでも度々披露している彼にとって大事な曲の一つだという。生々しい歌声が刻み込まれている。


12. さよならエレジー(Acoustic ver.)




シングル『さよならエレジー』のカップリングに収録されたアコースティック・バージョン。疾走感あふれる表題曲に対して、こちらはアコースティック・ギターの弾き語りのスタイルで、優しく丁寧に歌っている。


13. ばかになっちゃったのかな




デビューシングル『見たこともない景色』のカップリング曲。好きな人に思いをつのらせる男を主人公にしたラブソングだ。恋い焦がれる切なさ、ふがいなさ、情けなさを「ばかになっちゃったのかな」と歌い、「ばかみたい」「らしくないよな」と言いつつ、ストレートに恋心を歌い上げている。


14. 雨が上がる頃に




セカンドシングル『呼吸』のカップリング曲「雨が上がる頃に」は、オルガンをフィーチャーした爽やかでブルージーな一曲。「バカな話しようぜ、ずっと 一晩中 いつも通り」と、青春時代を共に過ごした仲間との友情や絆が描かれている。菅田将暉の楽曲の中でも明るくハートウォーミングなテイストの強いものになっている。


Bonus:灰色と青 (+菅田将暉) / 米津玄師


米津玄師のアルバム『BOOTLEG』に収録された一曲。米津玄師からのラブコールでデュエットが実現したこの曲のモチーフになったのは北野武監督の映画『キッズ・リターン』。幼少時代を共にした友人同士の青春の日々、そして大人になりすれ違う日々の中で離れていても奇跡的に重なる瞬間が描かれている。
※ストリーミングアルバムには未収録です。


柴那典
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