DISH//のニューアルバム「X」を骨太に解説してみた

DISH//のニューアルバム「X」を骨太に解説してみた
森朋之
森朋之

「猫 〜THE FIRST TAKE ver.〜」(作詞・作曲/あいみょん)がストリーミング再生回数1億回を突破し、レコード大賞優秀作品賞を受賞するなど、一気に知名度を上げたDISH//。2011年に結成され、2013年にシングル「I Can Here」でメジャーデビューを果たした彼らは、北村匠海(Vo/G)、矢部昌暉(Cho/G)、橘柊生(DJ/Key)泉大智(Dr)によるダンスロックバンド。これまでに通算5度の日本武道館公演を成功させ、2019年4月にリリースしたアルバム「Junkfood Junction」がオリコンウィークリーチャート2位を獲得するなど実績は十分だが、“演奏しながら、歌って踊る”というジャンルの壁を超えたスタイルのせいか、音楽的な評価が付いてこなかった印象もある彼ら。それを覆したのが、「猫 〜THE FIRST TAKE ver.〜」における、北村のボーカル表現の素晴らしさだったというわけだ。


出典元:YouTube(DISH// official YouTube channel)

テレビ出演、配信ライブなど2020年の活動を通して、ツインギター、DJ/キーボード、ドラムという個性的な編成を活かした自由度の高いサウンド、そして、ロックバンドとしての強さとダンスグループとしてのエンタメ性を兼ね備えたパフォーマンスの魅力もさらに浸透。そしてニューアルバム「X(クロス)」からも、現在のDISH//の充実ぶりが伝わってくる。

「猫 〜THE FIRST TAKE ver.〜」、はっとり(マカロニえんぴつ)作詞・作曲による「僕らが強く。」のほか、Nulbarich 、緑黄色社会、くじら 、GLIM SPANKYといった各シーンを代表するアーティストの提供曲、さらに北村匠海が作詞・作曲した「あたりまえ」、メンバー全員で作詞・作曲した「ルーザー」などを収めた本作。そこにはメンバー4人の音楽的感性、自分たちのビジョンを具現化させる情熱とセンスが刻まれている。ここでは新曲を中心に、骨太な音楽集団としてのDISH//の魅力が伝わるナンバーを紹介したい。


ルーザー

出典元:YouTube(DISH// official YouTube channel)

アルバムの冒頭を飾るのは、作詞:北村匠海、作曲:DISH//によるミディアムチューン。ブラックミュージックとロックが絡み合うバンドグルーヴとともに<惨敗続きも悪くない/されど宣戦布告はやめれない>という歌詞が響くこの曲には、音楽性、精神性の両面で、現在のDISH//の姿勢が強く示されている。生々しいライブ感をたたえたメンバーの演奏にも注目してほしい。


QQ(Nulbarich提供×橘柊生ディレクション)

オルタナ・ヒップホップ、ネオソウルの系譜を感じさせるしなやかなトラック、「愛だって 相まった 繋がり巡って楽しな年中」に象徴される美しいライムが一つになったシックなダンスチューン。ダンスグループとしてのDISH//の魅力をクローズアップすると同時に、最新鋭のビートとJ-POPをナチュラルにつなげる橘柊生の確かなディレクションに驚かされる。


ニューノーマル(緑黄色社会提供×矢部昌暉ディレクション)

現在ブレイク中の緑黄色社会のボーカリスト・長屋晴子が手がけたこの曲は、きらびやかなシンセ、心地よく疾走するビート、鋭利なギターリフが共存するアッパーチューン。長屋の楽曲にある“エモいポップ感”、そして、DISH//の力強い表現力によるケミストリーの素晴らしさを「もう普通に逃げるな/そんなつまらないものこの世にはない」というラインが証明している。


猫〜THE FIRST TAKE ver.〜

出典元:YouTube(THE FIRST TAKE)

YouTubeチャンネルTHE FIRST TAKEで2020年3月に公開され、1年を待たずして1億再生を突破。北村匠海というボーカリストの実力、そして、DISH//の存在をさらに多くのリスナーに知らしめるきっかとなった“一発録り”のアコースティック・バージョンだ。作詞・作曲は、あいみょん。ノスタルジックな旋律とともに別れてしまった恋人への思いを綴った、切なくも愛らしいバラードだ。


あたりまえ

出典元:YouTube(DISH// official YouTube channel)

アコースティックギター、ピアノ、ストリングスなどを軸にした有機的な音像、懐かしい手触りをたたえたメロディラインが徐々に大きな感動へとつながる「あたりまえ」は、北村が作詞・作曲、DISH//がベーシックアレンジを手がけた楽曲。当たり前のようにそばにいた“君”への思いをまっすぐに伝えるボーカル、歌に寄り添いながら心地よいダイナミズムを描き出す演奏も絶品だ。


Seagull

「海とロックンロール」という冒頭のフレーズとともに疾走を始めるロックチューン。00年代のロックンロール・リバイバル、10年代の邦楽フェスシーンの中心だったダンスロック、さらに歌謡曲的なメロディを加えたハイブリッド感が絶妙。作詞・作曲は、DISH//の音楽活動を支え続ける新井弘毅。


rock‘n’roller

歪んだギター・リフ、スクラッチとともに走り出すビートによって一気にテンションが上がるミクスチャー系ロックチューン。“信じるものを曲げず、光に向かって手を伸ばせ”という強いメッセージを放つリリックには、メンバー自身のリアルな感情が刻まれている。ヘビィロック的なサウンドメイク、橘柊生の攻撃的なラップもインパクト十分。


NOT FLUNKY

出典元:YouTube(DISH// official YouTube channel)

2019年に配信リリースされた「NOT FLUNKY」は、昭和の歌謡ロックを想起させるアッパーチューン。単なる回顧主義ではなく、緻密に構築されたリズム、洗練されたシンセ、ギターのサウンドなどを含め、しっかりと現代的なポップミュージックに昇華されている。言葉遊びに溢れた歌詞も楽しい。


君の家しか知らない街で(くじら提供×北村匠海ディレクション)

yamaの「春を告げる」を手がけたことで大きな注目を集めているクリエイター・くじらの作詞・作曲・編曲による、切なくも愛らしいラブソング。「君の家しか知らない、君と歩いた道しか知らない」などの心情と情景が重なる歌詞、そして、心地よいフロウと豊かな感情情表現を結び付けるボーカルに揺さぶられる。


僕らが強く。

出典元:YouTube(DISH// official YouTube channel)

「君の正義は君が信じ抜いてあげてね」というフレーズが胸を打つ、渾身のロックバラード。作詞・作曲は、はっとり(マカロニえんぴつ。)。DISH//のメンバーの思いを汲み取りながら、コロナ禍で大切な人と会えない現状、バンドとファンの関係性が強く反映されている。エモーショナル全開のボーカルも最高だ。


未完成なドラマ(GLIM SPANKY提供×泉大智ディレクション)

ワウ・ギターが生み出す“揺れ”が気持ちいい、グルーヴィーなロックナンバー。激しさと官能性をぶつけるような北村の歌はもちろん、しなやかさと力強さを兼ね備えた泉大智のドラム、矢部昌輝のギタープレイなど、メンバーのプレイヤビリティもしっかりと味わえる。


バースデー

出典元:YouTube(DISH// official YouTube channel)

ゲームアプリ「金色のコルダ スターライトオーケストラ」主題歌に起用された楽曲。ドラマティックな旋律、重厚なストリングス、生々しいバンドサウンドがぶつかり合い、壮大なロックチューンに結びついている。「小さな一歩が大いなる旅立ちの始まり」に象徴される、聴く者の背中を押す歌詞も心に残る。



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