東京を歌う曲になぜ名曲が多いのかを改めて考える。【前編・外から見た東京】

東京を歌う曲になぜ名曲が多いのかを改めて考える。【前編・外から見た東京】
柴那典
柴那典
「東京」をテーマにした曲には名曲が多い。沢山の人がそう語る。もはやそのことは日本の音楽シーンの定説の一つになったと言ってもいいだろう。でも、果たしてそれは何故なのか? 改めてその理由をいくつかの切り口から分析していこうと思う。 最初のキーワードは「外から見た東京」。つまり、地方出身者だからこそ「東京」という言葉に強い思いを重ねあわせることができるのではないか?という説だ。いくつかの曲を紹介しよう。
今夜ちょっと君に電話しようと思った
出典元:(YouTube:くるり) ▼くるり「東京」 くるりの人気を決定付けた98年のメジャーデビュー曲。作詞作曲を手がけた岸田繁は、この曲を書いた当時、まだ京都に住んでいる一人の大学生だった。そんな彼が豪雨に見舞われた97年のフジロックの後に訪れた東京で感じた思いを率直に書き留めたのがこの曲。漠然とした将来の不安や、離れた恋人への愛しさや、いろんな感情が渾然一体となって湧き上がる。
あなたに出逢えたこの街の名は
出典元:(YouTube:UKPROJECTofficial) ▼きのこ帝国「東京」 2014年にリリースされたきのこ帝国の代表曲。作詞作曲を手がけた佐藤千亜紀は岩手県出身。曲を作るときに、彼女はすでに「東京」というタイトルの曲に名曲が多いことをよく知っていたという、それでも「自信を持って『東京』って名付けられる曲がようやく出来た」と言っていた。この曲が描くのは、東京という街がもたらした出逢い。愛する人を真っ直ぐに思う気持ちをストレートに描いている。
ハチの巣みたいだ東京
▼チャットモンチー「東京ハチミツオーケストラ」 上京したばかりの女の子が夢見る新生活の希望がフレッシュなセンスで描かれているのがチャットモンチー「東京ハチミツオーケストラ」。実際、デビューが決まった3人が徳島県から東京に拠点を移したばかりのタイミングで描かれた一曲だという。「ハチの巣みたいだ 東京 働きバチの行列だ」という歌詞の一節は、まさに地方出身者ならではの「外から見た東京」を的確に言い表したフレーズかも。
ふたりの思い出が東京の空に吸い込まれて
▼銀杏BOYZ「東京」 痛切な失恋ソング。曲を書いた峯田和伸は山形出身で、実在する元彼女の「チヒロちゃん」をモデルにした一曲だ(続編の「東北新幹線はチヒロちゃんを乗せて」という曲もある)。「君は仕事を辞めて 新幹線に乗って郡山へ帰った」という一節が象徴するように、東京で出会った二人の恋の思い出と、失恋の切なさを真っ直ぐに歌い上げている。 他にも、サカナクション「モノクロトウキョー」や雨のパレード「TOKYO」など、地元で結成してから上京したバンドやアーティストが描く「東京」は、様々な意味での人生の変化や喜怒哀楽を象徴するようなものになっていると言えるだろう。 【外から見た東京 ソングリスト】 ・ くるり「東京」 ・ 銀杏BOYZ「東京」 ・ きのこ帝国「東京」 ・ チャットモンチー「東京ハチミツオーケストラ」 ・ サカナクション「モノクロトウキョー」 ・ Cocco「Tokyo Happy Girl」 ・ フジファブリック「東京炎上」 ・ 雨のパレード「TOKYO」 ・ 大森靖子「TOKYO BLACK HOLE」 ・ Nico Touches the Walls「TOKYO DREAMER」 ・ ピチカート・ファイヴ「東京は夜の七時」 ・ 福山雅治「東京」 ・ 矢沢永吉「東京」 ・ KANA-BOON「東京」 ・ 倉橋ヨエコ「東京」
柴那典
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