「忽忘」だけじゃない!!『花束みたいな恋をした』にぴったりな男女ツインボーカルソング

映画『花束みたいな恋をした』のインスパイアソングとして書き下ろされたAwesome City Clubの「忽忘」。結成7年、バンド最大のヒット曲になっています。2019年のマツザカタクミに続いて、昨年はドラマーのユキエが脱退。これからバンドとしてどうなるのか気になっていたファンにとっても、この大ヒットは本当に嬉しい出来事でしょう。

出典元:YouTube(東京テアトル公式チャンネル）

改めてAwesome City Clubの「忽忘」を聴くと、AtagiとPORINのツインボーカルが立体的で奥の深い作品を作りあげる重要なファクターになっていることに気付かされます。男女両方の目線があって、どちらかだけ美化されることがないから、リアルな表現になる。そう、まるで『花束みたいな恋をした』の世界なんです。今回はそんな視点で『花束みたいな恋をした』にもピッタリな、いま聴いておくべき男女ツインボーカルによる作品をピックアップしていきます。

忽忘 / Awesome City Club

出典元:YouTube(Awesome City Club ‖オーサムシティクラブ)

エモーショナルな歌詞とメロディが聴く人の琴線に響く「忽忘」。歌詞は1コーラス目をatagiが、2コーラス目をPORINが、それぞれの視点で過ぎ去った恋の記憶を辿っていきます。atagiの描く男性視点では〈絵の具を溶かすように君との日々は 記憶の中に滲んでいく〉と二人の関係の終わりを歌い、PORINは〈願いが叶うのなら ふたりの世界また生きてみたい〉と違う視点で、叶わない願いを歌っています。しかもatagiの声がうっすらと聴こえてくるのも切なさを引き出しています。そして「忽忘」に引き込まれるポイントとして効果的に使われているのが随所に入っているギターソロ。様々なギターの音が、二人の気持ちの揺らぎを見事に表現しています。

Memento Mori / Aimer,androp

出典元:YouTube(UNIVERSAL MUSIC JAPAN)

andropの内澤崇仁曰く「andropを結成した頃から、こういう曲を構想していた」というのが「Memento Mori」。この曲はandropとAimerが違うスタジオでレコーディングし、セパレートされた個別の曲を一つにするような手法で作られています。1コーラス目では二人の声を、メロディは完全にLR(左右）に別れて歌われていきます。8分46秒に及ぶ「Memento Mori」ですが、7分あたりまで二人の掛け合いは、セパレートされて聴こえてくる歌とメロディ同様にそれぞれのすれ違いが歌われています。しかし2コーラス目からベースの音が微妙に混じり始め、後半に向かう中で音がLRを行き来し始めるのです。そして少しずつ二人の言葉も交じり合い始めます。ラストでは、二人の感情が解放されるかのように、音は激しく重なりあっていきます。そこには単なる恋愛感情を越えた「生きる」ことを考えさせられる言葉が溢れ出します。とにかくこの曲はヘッドホンで聴いてみてください。「Memento Mori」の世界に引き込まれてしまいます。そう言えば、映画『花束みたいな恋をした』では、麦と絹が一つのイヤホンで音楽を聴いているシーンで「そんな聴き方したら音楽の良さが理解できない」とお説教されるシーンがでてきます。「Memento Mori 」はまさにLR両方の音をちゃんと聴くことで、曲の素晴らしさを理解することができます。

点描の唄 / Mrs.GREEN APPLE,井上苑子

出典元:YouTube(UNIVERSAL MUSIC JAPAN）

若いリスナーの中で定番のデュエットソングになっているのが、井上苑子をフィーチャリングしたMrs.GREEN APPLEの「点描の唄」です。2018年8月に配信スタートし、2020年12年月にはBillboard JAPANストリーミング・ソング・チャート“Streaming Songs”の記録で総再生数1億回を突破、2021年2月には日本レコード協会のストリーミングプラチナ認定を受けるなど多くの人に聴き継がれています。映画『青夏 きみに恋した30日』の主人公2人の心情を、大森元基が男性目線、井上苑子が女性目線の視点で瑞々しい恋愛を歌っています。

出典元:YouTube(Mrs.GREEN APPLE)

〈出逢えたこと自体を幸せに感じられる〉ほど彼女は彼を愛し、〈彼女の夢をみて目覚めたくないと思う〉ほど彼は彼女を愛しています。強い想いを持つ二人なのに、いつかは別れてしまうことを感じている切ない恋。そんな二人の思い出や記憶がタイトルにある「点描」のように、ひとつひとつ描かれている胸に響く名曲です。

大嫌い / 當山みれい,さなり

配信される楽曲は常に上位にランキングされるサブスク時代の歌姫・當山みれい。AbemaTVのオリジナル恋愛リアリティーショー「オオカミくんには騙されない」シリーズに出演しブレイクした新世代のラップアーティスト・さなり。「大嫌い」が発表された2019年当時、當山みれいは20歳、さなりは16歳。いわゆるZ世代のふたりが一緒に作詞・作曲を手がけた、まさに新世代のための男女ツインボーカルソングと言えます。

出典元:YouTube(當山みれい OFFICIAL YouTube CHANNEL)

この曲で描かれているのは男女の圧倒的なすれ違い感です。女性の気持ちや言葉を〈全部嘘に思えてくるね　このまま他の男となんて〉という疑心暗鬼な気持ち、でも〈君が大嫌いなのに 心の奥の方に 君を呼んでいる声は僕の声〉と素直になりきれない感情を隠そうとしません。大好きと大嫌いの間で揺れ動く男心が可愛くもあり、「しっかりしろよ」と声をかけたくなってしまう曲でもあります。

泣き出しそうだよ / RADWIMPS,あいみょん

まずこの曲のタイトル「泣きだしそうだよ」ってとてもエモい感じしませんか？泣き出してしまう予感を感じる瞬間ってどんな感じなのでしょうか？野田洋次郎とあいみょんの声が混じり合うだけで泣き出しそうになってしまいますが、「泣き出しそうだよ」は別れてしまった後でもなお、気持ちを寄せる二人の物語。〈今日も違う誰かを 好きだった人の名前で呼びそうになってしまう〉男性。〈バカなのは私とわかっているけど、好きだった人に言われないとしっくりこない〉と感じる女性。二人の恋愛の記憶はまだ瘡蓋がはがれていないようです。そしてこの曲のエモさMAXポイントは、なんといっても落ちサビパートです。

出典元:YouTube(RADWIMPS)

君の横で甘える人は 僕よりうまくやれているの？

と野田洋次郎が女性の君に問い

君の横で笑う人は 私より君をうまく笑わせているの？

とあいみょんが男性の君に問います。

別れた後でも好きだった人に想いを寄せて「泣き出しそうになる」。こんな気持ちを持ち続けていることができた恋愛って素敵ですよね。もう一度再会して、二人には新たな関係が作れることを願いたいものです。そしてこの曲、実は映画『花束みたいな恋をした』の世界観に見事に繋がっています。映画を観た人はぜひ、そんな楽しみ方で「泣き出しそうだよ」を聴いてみてください。

オススメプレイリスト