フィギュアスケート日本代表の見どころと華麗な音楽

フィギュアスケート日本代表の見どころと華麗な音楽
山本雅美
山本雅美

2022年北京オリンピックが、いよいよ2022年2月4日から2月20日までの17日間にわたり開催されます。
前回の平昌オリンピックで日本は金4、銀5、銅4の計13個と過去最多のメダルを獲得し大いに盛り上がりました。今大会でもスピードスケートや、スキージャンプ、スノーボード、カーリングと前回以上に期待のかかる競技がたくさんあります。その中でもフィギュアスケートは芸術性と競技性、優雅さと力強さを併せ持つ、冬季オリンピックの華と言えます。音楽に乗って広い氷上で、選手たちが繰り出す様々な演技に、息を飲むほど魅了させられます。今回のコラムでは、活躍が期待されるフィギュアスケート日本代表のプログラム曲を紹介します。これを読めば、フィギュアスケート競技をさらに楽しめるはずです。


◉羽生結弦

ソチ、平昌で金メダル2連覇を達成した羽生結弦。今回の注目点はなんと言っても、94年振りとなる金メダル3連覇獲得なるかということでしょう。そしてもうひとつ注目すべきは、前人未到の4回転アクセル。2021年12月に開催された全日本選手権で挑戦しつつもダウングレード評価となった4回転アクセルを成功させることができるかということでしょう。

出典元:YouTube(フジテレビ SPORTS)

4回転アクセルはフリープログラムの冒頭すぐのジャンプとなります。プログラム曲となる「天と地と」は、50年以上前に放送されたNHK大河ドラマのテーマ曲で、世界的演奏家の故・富田勲によるものです。物語の主人公は「軍神」と評される上杉謙信。武力を己の野心のためではなく、人や正義といった義を重んじた人物として知られ、現代でもファンの多い戦国武将です。羽生自身が選曲した理由として「悟りの境地のようなところまでいった謙信公の価値観とちょっと似ているのかなと思って」と語っています。謙信と重ね合わせるような気持ちで臨むフリープログラム。思いの込められた「天と地と」の音楽に乗って、是非とも4回転アクセルが成功することを祈ってます。

〈SP〉序奏とロンド・カプリチオー/ サン・サーンス

〈FS〉天と地と


◉宇野昌磨

「自分の代名詞と言っていただけるプログラムにしたい」

そんな思いを込めたのは今シーズンのフリープログラムの「ボレロ」。その見どころは5回の4回転ジャンプです。冒頭の4回転ループに始まり、4回転サルコー~4回転トゥループ~トリプルアクセル。後半の4回転フリップ~4回転トゥループ~トリプルアクセル+オイラー+3回転フリップというジャンプという構成となっています。全日本選手権では5本中でひとつ着氷ミスがありましたが、自己最高の総合得点を記録、北京オリンピックでの活躍が期待されています。

出典元:YouTube(フジテレビ SPORTS)

プログラム曲であるモーリス・ラヴェル作曲の「ボレロ」は、フィギュアスケート界でも数々の伝説を残してきたクラシックの名曲。34年前のサラエボ大会でアイスダンスのジェーン・トービル&クリストファー・ディーン組(イギリス)が披露した『ボレロ』は、オリンピック初の「芸術点オール満点」をマークするなどの伝説を残し、今大会でもメダル獲得濃厚なロシアのカミラ・ワリエワ選手のフリープログラム曲にもなっています。宇野昌磨が数ある「ボレロ」の中から選んだのは、東京オリンピック閉会式で歌声を披露したソプラニスタの岡本知高の「Boléro IV ~New Breath~」。岡本知高は2006年に発表した「ボレロ」からこれまでに3回のリニューアルがあり、今回が第4弾目となります。そして岡本自身「今回のボレロが一番難しく、力を出し切らないと歌えない」と言っています。プログラムで流れるのはインストゥルメンタルバージョンですが、岡本さんの歌声の如く全身全霊の演技を見せてくれることでしょう。

〈SP〉Oboe Concerto (Concerto In C Minor For Cello)

〈FS〉Bolero IV ~New Breath~ (Instrumental)/ 岡本知高


◉鍵山優真

鍵山優真は昨年シニアデビュー、2月の世界選手権で銀メダルに輝き一躍脚光を浴びた18歳です。オリンピックに向けた直前練習では新たに投入する4回転ループを着氷させるなど「安定した自分らしいジャンプが跳べるようになってきた」と話しています。

その鍵山選手のショートプログラムはカナダ出身のポップスシンガー・マイケル・ブーブレの「When You’re Smiling」、フリープログラムは古代ローマを舞台にした映画『グラディエーター』から「Gladiator Rhapsody」です。陰と陽、光と影といった全く違うテイストの曲による演技が楽しみです。またエキシビション(出演者は大会の上位入賞者らによる最終日に実施される演技会)曲には、MISIAの「明日へ」が決定、東京オリンピックでは「君が代」を斉唱し、中国でも高い人気を誇るMISIAとのコラボレーション、是非見てみたいですね。

〈SP〉When You’re Smiling / マイケル・ブーブレ

〈FS〉Gladiator Rhapsody / Lang Lang


◉坂本花織

「すごくメッセージ性が強くて、意味が分かっていないと、ただ振りをやっているだけ、ジャンプを跳んでいるだけになってしまう。『その曲で言っているメッセージをどう自分が伝えるか』というのが今までにないパターンだったので、そこが今すごく難しい」

フリープログラムの「No More Fight Left in Me」について、坂本香織が語っています。

出典元:YouTube(フジテレビ SPORTS)

〈もう私には闘う力がない〉を意味するこの曲、一見すると競技にミスマッチな感じもしますが、実はとても奥深いテーマを持った曲なのです。世界中の女性たちを主人公にして〈女性の芯の強さ〉を描いているドキュメンタリー映画『WOMAN』のテーマ曲で、歌詞には「女性の強さ」や「女性の解放」といった力強いメッセージをこめられた曲になっています。ミュージックビデオでその世界観を感じて演技を見れば感動は倍増です。

出典元:YouTube(Armand Amar)

平昌オリンピックでは6位に入賞した坂本香織。全日本選手権ではステップとスピンで最高評価のレベル4を獲得するなど高い評価で3年振りの優勝を飾り勢いに乗っています。北京では是非とも上位入賞を果たしエキシビションでの笑顔を見たいのはもちろん、強豪ロシア勢に挑みメダル獲得を目指します。

〈SP〉Now We Are Free (From ”Gladiator”) / レオナ・ルイス

〈FS〉 No More Fight Left In Me / イマニー


◉樋口新葉

平昌オリンピック選考会では4位となり代表を逃した樋口新葉。全日本選手権では総合2位となり悲願のオリンピック出場権を獲得、親友の競泳女子の池江璃花子、卓球女子の平野美宇からも「3人ともオリンピックに出場できたね」というお祝いのメッセージが届けられたそうです。樋口選手のフリープログラムはディズニー映画『ライオンキング』。様々な曲が使われシンバさながらの躍動感溢れる演技を披露、圧巻のエンディングは必見です。

〈SP〉Your Song / エリー・ゴールディング

〈FS〉『ライオンキング』より


◉河辺愛菜

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河辺愛菜は紀平梨花選手の欠場により急遽出場した11月のNHK杯で2位と躍進、全日本選手権では3位となりオリンピック出場を決めた17歳の新星です。見所はトリプルアクセル。全日本選手権のショートプログラムではビバルディ『冬』をイメージさせる白を基調にした衣装を纏い、静かなヴァイオリンの旋律の中で3回転アクセルの大技を披露。フリープログラムではエレガントな紫色の衣装に変え、YOSHIKI作曲の情熱的な「Miracle」で3回転アクセルを成功させました。2026年のミラノ・コルティナ大会に繋がる演技が楽しみです。

〈SP〉ヴィヴァルディ:≪冬≫ 第1楽章

〈FS〉 Miracle / サラ・ブライトマン


◉三浦璃来&木原龍一(ペアスケーティング) / 小松原美里・尊(アイスダンス)

男女ペアの行われる競技にペアスケーティングとアイスダンスの2種目があります。似ているようで異なるこの2種目。その違いはペアスケーティングは男性が女性を放り投げてジャンプするなど、シングルと同じようなアクロバティックな技が入ってきます。一方のアイスダンスは“氷上の社交ダンス”と呼ばれ、ジャンプなどはなく芸術性の高いダンスのような滑りを求められる点がペアとの違いです。

出典元:YouTube(フジテレビ SPORTS)

これまでこの2種目はオリンピックで入賞したことがなかったのですが、ぺアスケーティングの三浦璃来&木原龍一が、昨年ストックホルムで開催された世界選手権で日本代表として最高位の10位となったり、スケートアメリカで日本人ペア初の表彰台となる2位となるなどの躍進をみせています。またアイスダンスは小松原美里・尊の夫婦での出場となります。2016年の出会いですぐにカップルを組んだ二人は、わずか7ヶ月後の2017年1月に結婚。その翌年には全日本選手権を初制覇し、以降4連覇を果たすという奇跡のようなエピソードがあります。

出典元:YouTube(フジテレビ SPORTS)

どちらの種目も日本代表として過去最高順位が狙える環境が整っています。また個人種目に先がけて男子シングル、女子シングル、ペアスケーティング、アイスダンスの4種目による団体戦が2月4日からスタート。この種目で初のメダルを獲得できるかのポイントはこの2組のペアなのかもしれません。

三浦璃来&木原龍一

〈SP〉ハレルヤ / ロナード・コーエン

〈FS〉WOMAN / ショーン・フィリプス
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小松原美里・尊

〈リズムダンス〉映画「ドリームガールズ」より

〈フリーダンス〉ある愛の詩 byミレイユ・マチュー

北京オリンピック観戦前に、プログラム音楽を予習してフィギュアスケートを見れば楽しみ方は倍増!ぜひ日本代表選手を応援してみてはいかがですか。

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山本雅美
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