ジャケット・デザインの世界 第4回：イネス＆ヴィノード

デビュー以来、常に音楽とヴィジュアル両方でアートシーンを牽引する存在であるビョークが6月29日(水)から7月18日(月・祝)まで東京・お台場の日本科学未来館で「Björk Digital – 音楽のVR・18日間の実験」という展示を行ないます。2000年以降、継続的にヴィジュアル面でビョークとコラボしているのが今回紹介するイネス＆ヴィノードです。 1963年生まれのイネス・ヴァン・ラムスウィールドと1961年生まれのヴィノード・マタディンは、共にオランダ・アムステルダム出身。1986年にザ・ファッション・アカデミー・ヴォーグで出会って以来コンビとしてファッション写真の世界で共同作業をスタートし、雑誌のヴォーグやGQ、また広告ではサンローラン、ヴィトン、グッチ、ディオール、モスキーノ、クロエなど一流のクライアントとキャリアを重ねてきました。初期はポートレイト中心でしたが、写真のデジタル化以降はソフトウェアを使用したアート性の高い写真とムービーに取り組み、広告写真のみならず動画も多数制作。不動の地位を築いています。ふたりは夫婦で、息子と現在ニューヨークを拠点に活動しています。1998年にリリースした初のビデオクリップ集『Volumen』のアートワークがビョークとイネス＆ヴィノードの初作品。写真に手書きのドローイングやCGを組み合わせていく手法はここから続きます。常にクリエイターのピックアップが早いマドンナはアルバム『Ray Of Light』からのシングル盤のジャケットに起用。さすがです。ただ、このシングルのみでその後が続かなかったのはビョークと組んだからなのか、ソリが合わなかったのか？さてどちらなのでしょうか。出典元：(vimeo：Inez & Vinoodh) イネス＆ヴィノード監督したMV。2001年というとビュークは35歳、肌のしわを隠すこともせず、ワンカットでノーメイクに近い顔をキャンバスに液体がグルグルと出入りする強く印象に残る作品です。上記で紹介した「Hidden Place」を含むアルバム。80年代までデザインの現場ではアートディレクター、デザイナー、写真家の役割分担が明確でしたが、90年代以降、コンピュータによるデスクトップデザインが可能になり写真家がデザイナーにもなりうることになります。写真の上に大胆に絵を描いてしまえるのも写真家本人だからなのでしょうか。このアルバムでは楽器よりもヒューマン・ビートボックスや多重コーラスなどの声の要素の比重が高くなり、エクスペリメンタル色が濃くなります。写真の表情もちょっと怖いですね。前々作『Vespertine』、前作『Medulla』とモノクロームな色調とはうって変わって赤バックのポップな印象の6枚目のオリジナルアルバム。アグレッシヴな曲も数曲あります。アルバム『Volta』からのシングルカット。民族衣装のようなビビッドな色味の衣装とメイクが歪んだ音で攻撃的なビートとマッチしています。レディー・ガガ2011年のシングル。「Judas」と「Born This Way」の間にリリースされた曲なので残念ながらあまり話題にならなかったが、ちょっとプリンスに似た男装のポートレイト写真。当時アプリのアルバムでリリースされたことにより話題となったビョーク7枚目のアルバム。見ようによっては日本の武将のようでもあり、またビョークのメイクや指の動きなどは久々に女性らしさを感じさせるものになっています。出典元：(YouTube：LadyGagaVEVO)アルバム『Artpop』のリードシングルとなった曲。MV、シングルのジャケ両方ともイネス＆ヴィノードがディレクションしています。MVの衣装は相変わらず過激です。出典元：(YouTube：RihannaVEVO) リアーナとラップはしないカニエ・ウエストが歌い、ポール・マッカートニーはギターのみの参加という異色の組み合せのシングル。カニエ・ファンから「このオジサン誰？」というツイート続出で話題となりました。アコースティックなサウンドを、16:9ではなく正方形の画角をモノクロで見せるこのMVもイネス＆ヴィノード。アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズのアントニー・ヘガティがアノーニ名義で2016年3月にリリースしたアルバム『Hopelessness』。ピアノと歌が主体だったアントニーの楽曲とは異なりエレクトロニックなサウンドで、ポップでありながらも歌詞は尖っていて、大絶賛されているので是非アルバムを通して聴いてみてください。出典元：(YouTube：Björk) 2015年8枚目のオリジナル・アルバム『Vulnicura』からのシングルカットのMVもイネス＆ヴィノードがディレクション。ムービーとジャケットの撮影は同時に行なったのでしょうか。本来よりも細くて長く見える太ももは何らかの処理を行なったのか、などど考えてみたりしてしまいます。執筆の2016年6月時点でKKBOXでは配信がスタートしていないアルバムのジャケットですがオマケに。最新のヴィジュアルとして露出されているので目にした方も多いと思います。