一青窈 × クラウド・ルー、日台仲良し対談

一青窈 × クラウド・ルー、日台仲良し対談
KKBOX編集室
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クラウド・ルー(盧廣仲)は、台湾で国民的な人気を誇るシンガー・ソングライター。2008年にデビュー・アルバム『100種生活』を発表し、台湾のグラミー賞とも称される「第20回金曲奨」では、最優秀新人賞および最優秀作曲賞を受賞しました。心に沁み入るメロディーと歌、独特な着眼点から生まれる歌詞が特徴的で、日本でもファンが急増しています。この度、5枚目のオリジナル・アルバム『What a Folk!!!!!!』の日本盤が発売されたクラウド・ルーさんと、以前から交流があり、日本と台湾をルーツに持つ一青窈さんとの対談が実現しました。再会した瞬間からお喋りが止まらなかったお二人に、お互いのこと、日本/台湾の音楽シーンなどについて語っていただきました。 まずはお二人の出会いから教えていただけますか? 一青窈(以下、一青):NHKの番組(2014年放送)で共演させてもらいました。私がクラウドにラブコールを送っていたんだよね? その時は私の事を知っていましたか? クラウド・ルー(以下、クラウド):勿論、知っていました! ハッピーな気持ちになるコラボレーションでした。 一青:私の曲は明るくて楽しいのが少ないから、そういう楽曲を一緒に演りたくて、「歐拉拉呼呼(ウララフフー)」をお願いしました。 オファーがあった時はどのようなお気持ちでしたか? クラウド:とても嬉しかったです。一青窈先生と呼んでも良いくらいの存在の方だし、最初に共演させていただくのがテレビだったということで、とても緊張しました。 一青さんは、以前から彼の音楽を知っていたということですよね? 一青:好きで聴いていたんです。台湾に帰るたびにCDショップで「ジャケット買い」をしていて、その中でも特にお気に入りだったのが彼のファースト・アルバムでした。 その後、一青さんの「勝負」(『私重奏』収録)という楽曲で、クラウドさんが曲提供されていますが、共作に至った経緯を教えていただけますか? 一青:(番組で共演した後)私が「ピザ屋に行くけど来ない?」と誘いました。台湾で(笑)。主にLINEでやりとりをしているのですが、すごく気さくな方で、曲のイメージそのままです。そのノリで「曲作って!」とか言えちゃいそうだなと思って(笑)。さすがにちゃんと事務所を通しましたが、お願いしたら受けてくれて。確か作りかけの時か書き終わった時に、大阪か奈良か、どこかから連絡くれたよね? クラウド:しました。奈良ですね。一人で日本に遊びに来ていました。 出来上がった曲を初めて聴いた時はどう感じましたか? 一青:クラウド節だなと思いました。 クラウド:(笑)。ハッピーな曲があまり多くないので、オーディエンスと一体になれるような曲を……とリクエストされたのを覚えています。 一青:そうそう! 皆が盛り上がって踊れるような曲がいいなと思って。 完成版を聴いた感想はいかがでしたか? クラウド:試合で、チアリーダーがチームを応援するような、元気な曲だと思いました。実際にステージで演奏してみてどうでしたか?  一青:確かツアーの1曲目にしていて、「みんな盛り上がっていくよー!」みたいな、それこそ勝負の曲にしていたんです。それまではどちらかというとバラードで静かに始まって行くことが多かったので、最初からアゲアゲというのをクラウドの力を借りて出来ました。 先程、一青窈「先生」と仰ってましたが、アーティストとして、どのようなところを尊敬していますか? クラウド:歌手になる前、高校の頃から先生の曲を聴いていました。 一青:私、「先生」って言われたの初めてなんだけど!(笑)。恥ずかしい……。 クラウド:(台湾にルーツがあるということもあり)日本語の曲を歌っていても、他の人が歌うのとはまた違う存在感があると思います。 一青:クラウドは、曲だけを人に提供することは少ない? クラウド:結構あります。歌詞があまり上手くないと思われているから、曲だけ提供して下さいとよく言われます(笑)。 一青:いや、独特な歌詞ですよね! 虫眼鏡で世界を見ている感じ。「こんなところに蟻がいた!」みたいな。 クラウド:ちょっと変ですよね……(笑)。 一青:そういう、広い世界で丁寧に見つめている姿勢、それでいて明るいところが好きなので、一緒に仕事をしたいと思ったんです。 奈良に一人旅していたとのお話が先程出ましたが、曲を作る際、日本から影響を受けることはありますか? クラウド:実はよく一人で日本に来ているんです。影響は……、日本の方は皆さんとても礼儀正しいところが素晴らしいと思います。日本は、心を鎮めることができる場所です。 一青:台北にいるとすぐ、「クラウド・ルーだ! クラウド・ルーだ!」ってなっちゃいますもんね。 クラウド:それも少しあります。あとは、日本へ旅行に来ると周りが話していることがわからないのと、(日本の)木が多い場所が好きなので、そういう所からインスピレーションを得ることができますね。 一青:私も全く同じですね。日本にいると常にオンの状態だけど、台北に行くと、中国語がそんなに邪魔にならないから、リラックスできるし、歌詞も書きやすい。 一青窈さんは、作品の中で台湾の民謡を歌ったり、中国語の歌詞で歌ったり、台南でジャケットを撮影されたりしていますよね。やはり台湾はご自身にとって特別な場所ですか? 一青:台湾が自分にとって何か……というと、なんだろう……でもやはり血の中にあるという感じで、そのルーツをもっと知りたい、探りたいという気持ちが一番大きいんだと思います。 台湾での音楽シーンは現在どのような感じですか? クラウド:台湾語の曲を聴く人が増えていると思います。若い人で聴く人が増えてきました。 台湾でライヴを行う日本のアーティストが最近はすごく増えていますが、日本の音楽を聴く人も増えていると思いますか? クラウド:例えばflumpoolのように、台湾に来るたびにファンが増え、毎回コンサートを行う会場が大きくなっている日本のバンドがいますね。今の台湾のオーディエンスも、チケットを買ってライヴを観に行くというのが習慣になってきたと思います。 日本における台湾の音楽については、「ブーム的にではなく、日常的に聴かれるようになってほしい。たくさん良い歌手が台湾にはいるけどまだそんなには知られていない中、クラウドは日本人のファンが多いのが素晴らしいと思う。言葉の壁はあるかもしれないけど、台湾の言葉の良さがあるし、台湾語と日本語は近いと思う。」と、一青窈さんが語ってくれました。 クラウド・ルーさんの音楽は、たとえ歌詞の内容がわからなかったとしても、言葉の壁を越えてすごくナチュラルに聴き手の心に届いてきますよね。先日、『What a Folk!!!!!!』の日本盤がリリースされましたが、これはどのようなアルバムですか? クラウド:兵役を終えたあと、これまでの人生の中で最も長いスランプに陥ってしまい、それを克服した後に出来ました。自分が感動したことを綴りました。エレクトリックな楽器は一切使わず、全てアコースティックなものを使用した、純粋なフォーク・アルバムです。 一青窈さんは、今年デビュー15周年を迎えられます。ベスト・アルバム『歌祭文』は、これまでのキャリアの集大成といえる作品ですか? 一青:レコード会社の垣根を越えて全部入るというのが今回初めてなので、一青窈という人がどんな歌を歌っているのか……という時に聴くにはとても良いと思うのですが、私としては、ベスト・アルバムというよりかは、新しい一青窈を見せたいという気持ちが強かったので、まあ、子供を二人産んだというのもあって、明るい、前向きな自分を表現できたらと思い、そういう楽曲を「新盤(歌祭文)」には入れました。 ありがとうございます。最後に、何かお互いに訊いてみたいことはありますか? 一青:確か前に台湾に戻った時に、「良いギター屋さん知らない?」と連絡した気がするんだけど……。街中を歩いていても、例えば御茶ノ水のような、ギター屋さんがたくさんある場所がなくて、皆どこで買っているんだろうなと思っていて……。 クラウド:日本で買っています! 二人:爆笑  一青:そうだ! 日本で買っていると聞いて、なんだ、台湾で探さなくていいんだと思ったんだった! 湿度が高いからですか? クラウド:そうですね、多分。今持っている楽器は半分以上、日本で買いました(笑)。 一青:もう一つ訊いても良いですか? その前髪がハネている感じはクラウドしか見たことがないんだけど、自分で編み出したの?  クラウド:くせ毛なんです(笑)。 一青:自然になっているのね! 意識してそうしているのかと思った! そうかぁ! すごいトレードマーク! クラウド:坊主にしていたことがあるのですが(兵役時)、それも結構好きでした。自分で頭を触って癒されていました(笑)。 クラウド・ルーさんは、兵役に就いたことによって、それまで学校の授業以外では一切読まなかった本を読むようになり、「人生の意義」について考えるようになったとも話してくれました。 一青:歌詞の中にあまり負のイメージの言葉、悲しみを引きずるような言葉って出てこないじゃないですか。それは、そういう部分を歌うと聴いた人たちが暗くなるから敢えて書かないでいるのですか? クラウド:実は、内面に暗い部分をたくさん持っているので、明るい曲を書くことでそれを補えるのではと思っています。僕は、「先生」のツアーが…… 一青:だからその「先生」って! 一同:爆笑 クラウド:ツアーが成功しますように。デビュー15周年で常に第一線で活躍されていることは尊敬に値します。僕も見習います! まるで姉弟のように仲が良いお二人の対談は、終始和やかな雰囲気で進んでいきました。もしかしたら、いつか、ステージ上での共演が観られるかもしれませんね! 取材・文:岡村有里子

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