無人島に持っていきたい演歌ソング〜演歌歌手とアーティストのすごいコラボ曲

無人島に持っていきたい演歌ソング〜演歌歌手とアーティストのすごいコラボ曲
山本雅美
山本雅美

NiziUにYOASOBI、瑛人、LiSAなどなど今年もいろんな音楽がヒットしました。そんな2020年が暮れようとしている中、師走ならではのこの時期に聴いてもらいたいのが演歌です。昔はお茶の間ソングとして老若男女が口ずさめたのが演歌でした。今回はそんな演歌に新しい息吹を取り入れようとしてきた意外なコラボレーション曲を紹介していきます。これがきっかけで、演歌に触れる機会が増えますように。


ブッダのように私は死んだ (坂本冬美 × 桑田佳祐)

2020年のポップシーンで非常に重要な作品として挙げたいのが、サザンオールスターズの桑田佳祐が作詞・作曲をし、演歌歌手である坂本冬美が歌った「ブッダのように私は死んだ」です。


出典元:YouTube(坂本冬美)


この作品は坂本冬美がデビュー35周年を迎えるにあたり、中学生の頃からのファンだった桑田佳祐に楽曲制作をお願いしたいという熱い想いを手紙に書いたことがきっかけとなり実現しました。桑田佳祐が他のアーティストに作品提供したのは,1997年の「みんないい子(香取慎吾&原由子)」以来、実に23年振りのことです。そんな素敵なストーリーを持つ「ブッダのように私は死んだ」ですが、とにかく楽曲の密度がすごいのです。キャッチコピーに「一度きりの不埒な大人の歌が誕生」とあるように、想像を遥かに超えた男女の色恋沙汰が描かれています。この歌の世界観はミュージックビデオを見れば一目瞭然ですが、主人公である女性(坂本冬美)は愛した男に殺められこの世には存在しません。つまり死者からの目線で男性に想いを綴る作品なのです。


出典元:YouTube(桑田佳祐)


降り続く雨の中で人生のどん底に突き落とされるかのような「東京」、人身売買という重いテーマの映画「闇の子供達」の主題歌となった「現代東京奇譚」、崩壊していく貧しい家庭で過ごす子供の視点で歌われた「僕のお父さん」など、ファンの間でも高い評価を持つ「ダークな桑田作品」の中でも最高峰とも言える作品です。その一方で、“ただ箸の持ち方だけは 無理でした”と主人公の女性がお茶目に言ってみたり、ミュージックビデオのエンディングでは三途の川で魔物たちと艶かしく踊るシーンなどは「シュラバ★ラ★バンバ 」的な壮大なエンタテインメント要素も持ち合わせています。桑田佳祐の才能の振り幅が思う存分発揮され、それを妖艶に歌い上げる坂本冬美。二人の魅力がぶつかり合った「ブッダのように私は死んだ」は演歌シーンのみならず、日本のポップスシーンで語り継がれるべき作品だと言えるでしょう。


出典元:YouTube(坂本冬美)


またこれまで坂本冬美自身も演歌フィールドを超えた様々なアーティストとコラボレーションしてきました。1991年には忌野清志郎、細野晴臣と音楽ユニットHIS(ヒズ)を結成、アルバム『日本の人』をリリース、坂本冬美名義でもシングル「Oh, My Love~ラジオから愛のうた~」という演歌調のシングルを発表しています。また2013年には、坂本冬美 with M2 名義で、さくらももこ作詞、宮沢和史作曲の「花はただ咲く」を発表しています。


ラストダンス (五木ひろし×坂本冬美×水野良樹)

出典元:YouTube(UNIVERSAL MUSIC JAPAN)


2017年に発表された坂本冬美の演歌カバーアルバム『ENKA II~哀歌~』では、五木ひろしとの豪華コラボレーションで「居酒屋」を披露、大きな話題となりました。そして翌年には、いきものがかりの水野良樹が初めて手掛けた本格的な演歌ナンバー「ラストダンス」で競演を果たします。


冬のリヴィエラ(森進一×松本隆×大滝詠一)

その他にも演歌歌手の意外なコラボレーションはたくさんあります。その走りとなったのは、森進一の「襟裳岬」ではないでしょうか。フォークソング全盛期の黄金コンビである岡本おさみ作詞/吉田拓郎作曲による作品で、演歌に新しい風を吹き込んだ最初の作品と言っても過言ではありません。



これに続き1982年に発表したのが、演歌歌手における伝説的なコラボレーションとして音楽史に残る名曲「冬のリヴィエラ」です。作詞は松本隆、作曲は大滝詠一という日本のロック・ポップスの礎をつくった元はっぴいえんどの名コンビによるもので、60年代アメリカンポップス・テイスト満載の作品になっています。



この前年に大滝詠一は、松本隆と強力タッグを組んだアルバム『A LONG VACATION』を発表、当時としては異例のミリオンセールスを記録し、大きな話題となっていました。その余韻が覚めぬ間に発表された「冬のリヴィエラ」は演歌フィールドを超え、多くの世代に愛される歌になっていきました。


碧(あお)し (氷川きよし× GReeeeN)

出典元:YouTube(ColumbiaMusicJp)


氷川きよしは2017年にアニメ「ドラゴンボール超」の主題歌となったロック調の楽曲「限界突破×サバイバー」や、2020年6月には自身初となるポップスアルバム『Papillon -ボヘミアン・ラプソディ-』を発表するなど幅広いジャンルの楽曲を発表していますが、そのきっかけとなったのは2017年に配信限定リリースされた GReeeeNの作詞・作曲による「碧(あお)し」です。歌詞に登場する“2月2日”は氷川きよしのデビュー日で、「碧(あお)し」にはデビュー20周年を迎えた感謝のメッセージが込められており、GReeeeNの世界観を見事に歌い上げています。今年の「NHK紅白歌合戦」での共演も注目されます。


大阪恋時雨(天童よしみ×半﨑美子)

出典元:YouTube(TEICHIKU RECORDS)


圧倒的な歌唱力と表現力、そして独特なキャラクターが幅広い世代に愛される天童よしみにも意外なコラボレーションがあります。デビューして40年。ほぼストレートな演歌作家陣の作品を歌い続けてきた浪花演歌の第一人者の天童よしみですが、「お弁当ばこのうた 〜あなたへのお手紙〜」がヒットで知られるシンガーソングライターで半﨑美子の「大阪恋時雨」を2019年に発表、昨年の「NHK紅白歌合戦」で披露し、話題になりました。


出典元:YouTube(OFFICIAL半﨑美子)

実はこの楽曲は、2016年に発表された半﨑美子のインディーズ時代のシングルCD「降り積もる刻」に収録されていたもので、北海道出身の半﨑美子が初めて大阪弁で作った曲でした。そしてこの歌を笑福亭鶴瓶が気に入り、天童よしみに勧めたのだとか。偶然のご縁で繋がった「大阪恋時雨」。そんなエピソードにも想いを馳せると、より滲みてきます。


暗夜の心中立て(石川さゆり×椎名林檎)

出典元:YouTube(Sayuri-X-Cross)


そして常にアグレッシブに演歌界に新しい風を送り続けているのが、石川さゆりです。2012年から定期的に発表されているアルバム『X-Cross』シリーズでは、個性溢れる様々なアーティストとコラボレーションしている興味深い取り組みをしています。これまでに、森山直太朗、奥田民生、 TAKURO(GLAY)、岸田繁(くるり)、山崎ハコ、斎藤ネコ、谷山浩子、 宮沢和史(THE BOOM)、矢野顕子、細野晴臣、レキシ、小渕健太郎(コブクロ)など錚々たる作家陣の作品を歌ってきました。


出典元:YouTube(Sayuri-X-Cross)


その中でも特に紹介したいのが 椎名林檎とコラボレーションした「暗夜の心中立て」です。『X-Cross II-」では、「名うての泥棒猫」「最果てが見たい」を含めて3曲を歌っていますが、どの曲も椎名林檎の圧倒的な世界観を石川さゆりが見事に歌い、演じきっています。石川さゆりは椎名林檎に対して「どこか自分と同じ“匂い”を感じていました。そこで紅白でお会いした時、『いつか一緒に何か作ることが出来たら』というお話しをさせていただいたのです」と語っています。また椎名林檎も「一人の歌謡ファンとして『こういう曲を歌うさゆりさんが見たい』。そんな気持ちでまず書いたのが「暗夜の心中立て」。」と話しています。ジャンルは違えど、表現者としての女性トップスターが作り上げた歌世界は、後世に残る作品となっているのではないでしょうか。


出典元:YouTube(TEICHIKU RECORDS)


また2020年2月には小唄・端唄・俗曲をモチーフとしたアルバム『粋~Iki~』をリリース。石川さゆりが日本を綴った三部作最終章となるこのアルバムに収録された「オープニング「火事と喧嘩は江戸の華」 feat. KREVA, MIYAVI」は、亀田誠治、KREVA、MIYAVIとの共作となる必聴の一曲となっています。なおこのプロジェクトは、1988年に日本の童謡をテーマに制作したアルバム『童~Warashi~』、2019年には、民謡をテーマに制作した『民~Tami~』に続く第3弾の作品がリリースされているので、こちらも是非チェックしてみてください。


山本雅美
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