井上苑子にとっての「至福なオフ」

ミュージシャンの「オン」と「オフ」を覗く連載「至福なオフ」。「オン」のモードで作り上げた作品についてはもちろん、休みの日に聴いている音楽や私服のこだわりなど、「オフ」のことも伺います。今回のゲストは、小6より作詞作曲と路上ライブを始め、若い世代を中心に支持を集めるシンガーソングライターの井上苑子さんです。4月22日に「近づく恋」(資生堂SEA BREEZE CMソング)、「リボン」(明治 ザ・チョコレート「レシートソング」キャンペーンソング)など6曲を収録したミニアルバム『ハレゾラ』をリリース。家で過ごすことが多くなった井上苑子さんに Stayhomeライフについてもお聞きしました。
オフのファッション
—まずオフの日のファッションについてお聞きします。井上さんとはほぼ毎週ラジオ番組で会っていますが、スカート姿をほぼ見かけないような気がします。パーカーとパンツが多いですよね。
井上:そうですね、基本はゆるっとしたのが楽なんで(笑)。あと、私の顔立ちがはっきりしているので雰囲気だけでも柔らかくしたいなと。少し大きめのオーバーサイズの服が好きなんです。パーカーやトレーナーはいろんなタイプが20着ぐらいあります。
—今日のパンツもゆったりとしたシルエットですね。
井上:ちょうどパステルカラーのパンツが欲しくて。これは家の近くのセレクトショップで、一目惚れして買いました。ウエストのサイズ感も、私にとって「ありがとー」って感じなんです。服は大好きですが、ビビっと感じたものしか買えない性格なんです。
—このアウターのジャンパーもかなりゆったりしたサイズだし、デザインも面白いですね。
井上:これ2つの古着を繋げてリメイクしているんです。もともと「SHAKE」の撮影の時の衣装だったんですが、すごく気に入って私もマネージャーさんもいまでもこのお店によく通っています。
—あと井上さんが持っている和物柄のガマ口のバッグ、いつも気になっていました。
井上:浅草が好きでよく行くんですけど、これは仲見世通りでラックにたくさん入っているお店があって、そこで買いました。ひとつひとつの柄が違うなかから「これだー」って見つけたんです。いろんな服に合うしバカっと広げて出し入れも楽だし、本当に万能です。これは1,500円ぐらいだったかなー。
—コスパいいですね。
井上:高い服を買うときは母親同伴です(笑)。私も学生のみなさんと一緒で値段が安いオンラインサイトを見つけて買ったりしています。いまでも中学生の頃に買った1,000円のワンピースを着ている時もあります。
—中学生の頃の服!! 愛着持って大事にしているんですね。
井上:服の賞味期限ってないような気がするんですよね。
—井上さんはいま22歳ですけど、昔と比べて服の好みって変わったりしました?
井上:全然違いますよ。中学生の頃はミニスカートにピンヒール履いて、髪の毛も巻いてたし(笑)。きっと大人に見られたかったんでしょうね。いまは22歳になったので、背伸びしなくなったのかと思います。
至福なオフとStayhomeの過ごし方
—いまはお家にいる時間を大切にするじきですが、自由にオフを楽しめるとしたらどこに行ってみたいですか?
井上:一番行きたいのは金沢です。新鮮なお魚をたくさん食べたいです(笑)。あと金沢21世紀美術館。観るだけでなく、いろんな展示を体験できる美術館なので行ってみたいなと思います。私は絵画を見るのも好きだし、美術館という空間も好きなんです。最近では東京都美術館で開催されていた「モネ展」が素敵でした。モネの淡くて繊細な絵が好きなんです。日常を描いているのに幻想的な表現に癒されました。
—井上さんがアート好きだったとは知りませんでした。
井上:本当は昨年開催されていた瀬戸内トリエンナーレに行きたかったんですけど、スケジュールが合わずで残念でした。最近は絵を描いてみたい欲が高まっているんです。いまグッズとかのイラストは描いているんですが、水彩画とか油彩画とかに挑戦してみたいです。
—ところで、いま井上さんはどのようにしてStayhome生活をおくっていますか?
井上:時々、心が落ちていきそうになるので、たまに近所の川沿いを散歩しています。外の空気を感じるというのは大事だなと改めて実感しています。その時にすごく素敵な光景を見つけたんです。桜の花が散って川面にたくさん浮かんでいる光景が、モネの色合いのようだったんです。それが可愛くて見入っちゃいました。あとはいろんなコンビニエンススストアに行って、美味しいものを発見するのがささやかな喜びです(笑)。

—いま中学生や高校生たちが学校に行けず自宅で過ごしてますが、Stayhomeを楽しむコツとかありますか?
井上:テレビはいいですよ。私は本当にテレビが好きというか、誰かが喋ってくれていることが有難いと思うんです。私はテレビに向かって勝手に突っ込むし、めちゃ笑うし、めちゃ泣くし。番組の中で観客の人が「えー」とか声出すじゃないですか。あれを一緒に「えー」って言ってます(笑)。あとは地方のおばあちゃんが喋っている方言とかも可愛いなーと和みます。
—確かに!ぼーっとテレビを見ているだけじゃなくて、喜怒哀楽を出せばストレス解消になるかもしれないですね。
井上苑子が最近よく聴く音楽
最近はザ・おめでたズさんとか好きです。歌とラップのAメロとBメロの繰り返しなんですけど、すごくシンプルなわかりやすい曲だったのが自分にはツボでした。あとはFINLANDSの塩入冬湖さんの個性的な声が好きです。自分には無いものを持っている人に惹かれますね。
さとうもかさんは最近のベストかもしれないです。すごくシンプルな声と音なのに、クセになる音質やリズムなどハマります。最近はお風呂に入っている時はさとうもかさんの曲をよく聴いてます。
この前どうしても車に乗らなくてはいけない時があって、その時はずっと嵐とコブクロを聴いていました。小さい時から好きだったんですが、シャッフル再生で聴いていると「いま、これか!」みたいな感じの曲も聴けて楽しかったです。あと、いまさらながらKing Gnuも聴き始めました(笑)。
※プレイリストには井上苑子さんがお気にりのアーティストを選曲しています。
新作ミニアルバム『ハレゾラ』について
—『ハレゾラ』のビジュアルが春めいていて本当に良いですね。
井上:最初は青い衣装のパターン(通常盤)がメインビジュアルのイメージだったんです。でも出来上がった写真を見たら、緑色の衣装と空の色のコントラストが本当に素敵だったので、私もスタッフの皆さんも「こっちでいこう!」ということになりました。
—「ナツコイ」「線香花火」など夏のイメージが強かった井上さんですが、今回の『ハレゾラ』は、この季節にぴったりな内容になっていると思います。
井上:最初に作った「ぜんぶ。」と「ラブリー」は1年半前ぐらいの曲なんです。有難いことに色んなタイアップがその後も決まり、曲がどんどん出来て「もうこれはミニアルバムだね」ってことになって、それが『ハレゾラ』いうミニアルバムに集まったという感じです。制作期間もあったので、いつも以上に1曲1曲に集中して作れたと思います。
「近づく恋」は高校生の恋の始まり、「ぜんぶ。」は恋のその先を描きたいと思って作りました。主人公たちの差はあるんですけど、恋への憧れだったり、ワクワクする気持ちを共通して伝えていきたいなと思っていました。以前から「等身大」ってよく言われるんですが、本当にどれも自分と重ねあわせた曲になっていると思います。そして6曲すべてが前向きな曲になったので『ハレゾラ』というタイトルがぴったりなのかと思いました。
—「ぜんぶ。」は男の子視点、「ラブリー」はそれに対する女の子アンサーソングにもなっている気がします。
出典元:YouTube(井上苑子)
井上:そうですね。「ラブリー」は恋が上手くいかなくなった時に「私の気持ちをわかって欲しいな」という少し悩んでいる女の子が主人公で、「ぜんぶ。」は「そんなこと全然気がつかなかったよ」とう男の子が主人公になっています。
—もどかしい関係ですよね(笑)。なんか瑞々しくて心が洗われるようです。
井上:キュンキュンしてください(笑)。人の気持ちって完全に一致している時ってないと思うんです。両想いだったとしても、伝えたいけど伝えられないような部分があった方が、自分たちの恋をエモく思えるようになるんじゃないかなって気がします。そう言った部分を切り取っていきたいなと思います。
—資生堂SEA BREEZE CMソングにもなっている「近づく恋」は、夏の恋に向けて気持ちが高まりますね。そして閉塞感のあるいま「近づく恋」のような日常が、かけがえのないものに思えます。
出典元:YouTube(UNIVERSAL MUSIC JAPAN)
井上:いま思ったんですが、外出自粛とかで学校にこれだけ長く行けないと、久しぶりに会う友達にドキッとしたりしちゃうんでしょうか。冬服でバイバイしたのに、それが夏服になって再会するだけで印象違う気がします。短髪だった男の子がオシャレな髪型になっていたりするかもしれないし。いまは自分磨きをする時期なのかな。また恋が生まれるなー(笑)。
—そうやって前向きに考えることができるって、井上さんの才能です(笑)。ところで「近づく恋」はどんな気持ちで作られたんですか。
井上:私が高校生活真最中だったら思えなかったことが、卒業して「高校生って若いなー」と思えるようになったいまの自分だからこそ、振り返って書ける歌詞があるんだろうなって思います。あの頃、周りからは若いって言われても気にも留めていなかったけど、いま思うと、あの頃のキラキラさは何ものにも代え難いです。そんな想いが「近づく恋」にあります。
—それで言うと、先ほど言われた「等身大」という意味合いが変わってきているのではないですか?
井上:そうですね。私と同じ歳の人が聴いたら、いまの私の気持ちと同じになってもらえるかなという「等身大」でもありますね。私がつくる恋の歌は、こうだったら良かったなという部分が一番大きいので、そんな気持ちも含めて「等身大」自体が変わっているかもしれません。
—「リボン」は自分たちの恋の記憶にリボンをかけてあげるという、前向きな恋の終わり方を感じました。
井上:そういう女性になりたいと思っています。憧れです。
—最後にファンの方にメッセージがあればお願いします。
井上:『ハレゾラ』はどれも前向きになれる曲たちが出来たと思います。だからこそいまの時期に、皆さんに聴いてもらいたいなと思います。あとは1曲ずつ自分らしさを出せたと思うので、細かい部分まで聴いてもらえたら嬉しいです。