漫画×音楽がコラボする 音で読む物語『ヨムオト』〜漫画家&アーティストインタビュー〜

漫画×音楽がコラボする 音で読む物語『ヨムオト』〜漫画家&アーティストインタビュー〜
山本雅美
山本雅美

小説を音楽にするプロジェクトから誕生したYOASOBIが社会現象となる大ヒット、最近ではインパクトのあるフレーズとイラストで話題となったadoの「うっせぇわ」が1億3000万回の視聴数を記録するなど、音楽シーンはこれまでと違ったポテンシャルが確実に生まれています。そんな中、 SNSの人気漫画家とソニー・ミュージックの新人アーティストがコラボレーションする興味深いプロジェクト『ヨムオト』がスタートしました。今回は『ヨムオト』を立ち上げたソニー・ミュージックの灰野一平氏と土橋輝志氏、 SNSで活躍する漫画やイラストレーターのエージェント会社の株式会社wwwaap(ワープ)の中川元太氏にお話を聞きするとともに、後半では『ヨムオト』でコラボレーションした漫画家とアーティストからのリアルな声をお届けします。


ヨムオトが生まれた成り立ち

KKBOX:灰野さん、土橋さんはLittle GreeMonsterや森七菜などを手掛けていらっしゃいますが、『ヨムオト』を企画された背景を教えてくだい。

灰野:コロナ禍で音楽ビジネスが停滞する中でも社内的にはYOASOBIのような成功例が生まれ、世の中的にはネット上での音楽の拡散がメインストリームになってきました。また実写ではなく、イラストやアニメなどのクリエイティブと音楽が結びついたパターンで、ヒットソングが当たり前のように生まれることを実感しています。そんな時に、SNS上で人気の漫画家さんをたくさんサポートしているwwwaap(ワープ)さんから「一緒にやりませんか」 というお話を頂きました。


漫画家支援をおこなうwwwaapの企業コラボレーションの事例

ソニーには新人開発セクションであるSDグループがあり、原石のようなアーティストがたくさんいます。こういった新しい才能と漫画家の方がコラボレーションしたら、何か面白い覚醒があるかもしれないというのが出発点で、それが2020年の8月でした。

中川:漫画と音楽がコラボレーションすることで、それぞれの魅力を引き出すことができるんだろうなと思っていました。今回はそれぞれの漫画にアーティストが曲を書き下ろすということが、これまでになかった方法だったのが興味深く、ご一緒させて頂くこととなりました。


株式会社wwwaap(ワープ)代表取締役社長/CEO 中川元太氏

約200人ぐらいの漫画家さんをサポートしている中で、『ヨムオト』では笑える漫画というより、感動でまたはキュン出来る漫画の方が音楽と相性がいいのではという視点で選んでいます。


クオリティの高い楽曲ばかりが集まってきたことにショックでした(笑)

土橋:アーティストに対しては、どの作品に何点応募してもOKという公募スタイルをとりましたが、本当にクオリティの高い楽曲が集まりました。面白い点は、今回は楽曲の背骨となるストーリーがあって楽曲を作るという体験になったのではないかなと思います。そういう作り方ってなかなか経験できないと思うんです。普段の楽曲作りってゼロから考えていくから大変なんですけど、そのプロセスが無いから、より楽曲作りに集中できたのかもしれません。

灰野:正直に言いますけど、ここまでクオリティの高い楽曲が集まってきたことがショックでした(笑)。何を表現しようか、何を伝えようかと日々考えている若いアーティストたちにとって、最初にヒントになるものがあると、こんなにもわかりやすくて、伝わりやすい楽曲が作れるんだということを僕らも発見しました。これから楽曲を発注する時に参考にしないといけないと思うぐらい衝撃的だったんです。僕ら大人も若いアーティストたちも、新しい発見ができたんじゃないかと思います。


灰野一平氏(第1レーベルグループ チーフプロデューサー)/土橋輝志氏 (第1レーベルグループA&R)

土橋:普段はなかなか良い楽曲が集まらず、ある程度妥協してしまう選考会もあったりすることを考えると、今回は悩ましい選考会でした。

灰野:採用できなかった楽曲も本当に惜しい楽曲ばかりだったんです。これを落としてしまうの?となかなか決断できないというか。

中川:ひとりのリスナーとしても、いつも聴いている音楽と変わらないクオリティの高さを感じました。

KKBOX:コロナ禍のもと、思うように音楽活動ができないアーティストたちにとって希望のあるプロジェクトになっていると思います。またフィールドの違う才能の出会いを作るということも興味深いでし、可能性のあるプロジェクトだと思います。


若いクリエイターの熱量に圧倒された

土橋:ますだみくさんの「もしも好きと言ったら君は笑ってくれるのかな」とコラボレーションした水谷怜さんですが、以前からますださんのファンだったらしいんです。しかも今回の「愛」という曲は、何年か前に原作を読んで、それをテーマに作っていた曲だったというお話を聞きました。今回の公募ですごく気持ちが高まり、絶対にやりたいと思って応募してくれたそうです。



KKBOX:水谷さんの想いが強いのでしょうか。確かにドラマのエンディング曲のように引き込まれます。一方で、やまもとりえさんの「ねこでよければ」は作画もストーリーもほのぼのしてます。

土橋:候補は何曲かありましたが、その中でも特徴的なmibukiさんの声が、ほのぼのとしたストーリーに合うんじゃないかなと感じましたね。その一方で、歌詞の内容から芯の強さも感じました。



KKBOX: 最近公開された2つの作品はどんな曲でしょうか?

土橋: 佐木郁さんの「好きっていうのに、言葉はいらない」とコラボレーションした鈴木花歩さんの「つぼみ」は、ストレートでしっとりしたラブソングです。鈴木さんの声も個性的だったのと、デモの時点で楽曲がとても完成されていたので、ちゃんとレコーディングしたらすごく良くなるだろうなと思い選ばせて頂きました。



土橋:愛内あいるさんの「自分の顔が嫌すぎて整形に行った話」はとてもパンチがあるストーリーなので、同じようにパンチのある曲がいいだろうなと考えていました。ギターをガシガシと弾き語り、打楽器風に扱って歌う ayaka.さんがとても印象に残りました。そのパワー感や、歌詞も女の子の本性みたいなものを描いていて、漫画の世界観とぴったりだなと思います。



灰野:アレンジに関しては、僕と土橋の中では「インディーズっぽくて突っ込みどころがある感じがいいのかな」と最初は話していたんですが、でも、どの曲もデモ段階でのクオリティがとても高かったので「これはヤバい、自分たちのプロとしての仕事を見せなきゃ」みたいな感じになりました(笑)。普段の制作ではあまりやらないんですが、アレンジの感じが違うなと思ったらアレンジャーさんを変更しちゃったり。かなり、本気にさせられましたね。

KKBOX:すごいですね。「ヨムオト」のプロジェクトは、プロの大人たちを本気にさせたんですね。

土橋:最初は「とりあえずやってみましょうよ」というライトな感じでスタートしたんですが、制作過程の中でクリエイターの皆さんの熱量を感じることで、僕らもいろんな学びがありましたね。

KKBOX:「ヨムオト」プロジェクトはこの先も継続していくんですか?

灰野:実は既に第2弾の企画に入っていますので、楽しみにしていてください。


漫画家×アーティストのお二人へのインタビュー

ますだみく(漫画)✖︎ 水谷怜(音楽)

出典元:YouTube(ヨムオト official YouTube channel)

KKBOX: 「もしも好きと言ったら君は笑ってくれるのかな」はどんなお話ですか?

ますだ:主人公にはずっと忘れられない人がいる。ある日、その彼が突然目の前に現れた。もう好きにはなりたくないと思っているのに、再び彼に惹かれてしまうー・・・ 。不器用で愛おしい恋の物語です。

KKBOX:コラボレーション曲の「愛」の感想をお願いします。

ますだ:プロジェクトのお話をいただいた際、自分の漫画と音楽が組み合わさるというのが想像できず、少し不安に思っていました。でも、水谷さんの楽曲デモが送られてきていざ聴くと凄くマッチしていてこの作品にはこの人しかいない!となりました。絵では表現しきれなかった登場人物たちの感情を水谷さんが代弁してくれたかのようで感動したのを覚えてます。特に最後の「知らない振りをしてあなたの愛を愛してた。明日が灯ったらまた約束をしよう」という歌詞が主人公そのもので嬉しかったです。


水谷怜

KKBOX:水谷さんはどのような想いで音楽を作りましたか?

水谷:ますだみくさんの描く素直になれない主人公の描き方がとても魅力的で、その主人公が心の中ではこんな風に考えているんじゃないかなと想像して曲を書きました。心を揺さぶる言葉を使った短いお話がたくさん収録されているところも特徴的で、とても好きなところなので、今回「ヨムオト」ではアオとイツキの物語が公開されましたが、この2人のことというよりは、ますだみく さんの世界感を表現できたらいいなと思い、漠然とした恋の曲を作りました。また、バンドを聴いている登場人物がいたので、バンドサウンドの楽曲にしたいと思いました。

KKBOX:普段の音楽制作とはどんなころが違いましたか?

水谷:普段は楽曲制作にあたり、自分で1から物語や主人公を作るのですが、先にそれらとイメージが固まっている状態だったのでいつもよりも早く曲が完成しました。今回のお話をいただく以前からますだみく さんのファンで、いつもインスピレーションをいただいていたので、スムーズに楽曲制作ができましたし、とても楽しい時間でした。

KKBOX:これからの目標を教えてください。

水谷:これからもいろいろなジャンルの音楽に挑戦し、全力で音楽を楽しんでいきたいです。


やまもとりえ(漫画)×mibuki(音楽)

出典元:YouTube(ヨムオト official YouTube channel)

KKBOX:「ねこでよければ」はどんなお話ですか?

やまもと:ねこが開いた「話ききます屋さん」。偶然通りかかった道行く人々が、悩みやコンプレックス、秘密なんかをポロポロと話していく。そんなお話です。

KKBOX:コラボレーション曲の「ねこでよければ」の感想をお願いします。

やまもと:まず最初に聴いた時「漫画を音にするとこんな風になるんだ!」という純粋な感動がありました。前半では相談する人の視点、後半ではねこさん視点で描かれた歌詞、漫画の中で言いたかったことを全部入れてくれていて「もうこの曲聴いたら漫画読まなくてもいいよ」ってくらいです。それから、「ねこでよければ」で話をする人達は「最初は独り言のように頼りなげに喋りだし、最後は少しだけ希望をもって一歩踏み出す」ということを大切にして描いていたので、mibukiちゃんの優しいけれどそれだけではない芯のある歌声が私のなかではしっくりきました。


mibuki

KKBOX:mibukiさんはどのような想いで音楽を作りましたか?

mibuki:「ねこでよければ」の作品はねこさんにお話を聞いてもらうことにより気持ちが軽くなり前を向いて歩きだすというシーンが印象的だったので、俯いて歩いていた主人公がさまざまな感情を抱えながらもしっかり前を向いて自分の道を歩いて行く。そんな強くまっすぐな思いを音楽でも伝えられるように、やまもとりえさんの優しく暖かいイラストをそっと包み込むようなイメージで楽曲を書き下ろさせて頂きました。また、「ねこでよければ話聞きますよ」というセリフもとてもインパクトがあったので、そのフレーズも大切にしながら楽曲を制作しました。

KKBOX:普段の音楽制作とはどんなころが違いましたか?

mibuki:普段曲を書く時はテーマから決めているのでそこに時間がかかることが多いのですが、今回は書き下ろしということで「ねこでよければ」の作品を読んだ後すぐに楽曲の雰囲気や歌詞のイメージが浮かんできました。今までは自分と向き合いながら歌詞を書いていたのですが、今回は漫画を読みながら感じた自分の気持ちと、漫画の中ででてくる人の気持ちや漫画を読んでいる方の気持ちなども想像しながら楽曲を作っていたので、とても新鮮な感覚でした。実際にやまもとりえさんの漫画に私の音楽が重なったMusic Videoを初めてみた時、とても感動したことを今でも覚えています。

KKBOX:これからの目標を教えてください。

mibuki:私は普段、歌詞やテーマ、メッセージ性を大切にしながら楽曲を作っています。一度聴いたら忘れられないような、何十年も何百年も沢山の方の心に残るような楽曲を作り続けられる強いアーティストになることが目標です。


佐木郁(漫画)×鈴木花歩(楽曲)

出典元:YouTube(ヨムオト official YouTube channel)

KKBOX: 「好きって言うのに、言葉はいらない」はどんなお話ですか?

佐木:恋愛のドキドキや胸がキュンとしめつけられるいくつもの短いシーンを、あえてセリフなしで描いたものがこの本になります。登場人物の関係性やセリフは読者のかた自信があてはめて、自分だけの感じ方で読んでもらえるように描きました。

KKBOX:コラボレーション曲の「つぼみ」の感想をお願いします。

佐木:言葉のない本の世界観を、とても深めてくれていると感じました。恋の期待や不安、何気ない日常が色づき変わっていく不思議…言葉より素直な『好き』の気持ちが描かれていて、この本のイメージをもっと膨らませてもらえた気がします。恋愛をしたい人、恋が始まった人はもちろん、恋愛に傷ついてしまった人にさえ、次の恋への期待を抱かせてくれるような優しい曲だと感じます。素敵なコラボをありがとうございます!


鈴木花歩

KKBOX:鈴木さんはどのような想いで音楽を作りましたか?

鈴木:今回書き下ろしさせていただいた佐木郁さんの漫画「好きって言うのに、言葉はいらない」ではたくさんの恋愛が描かれていますが、その中に台詞は一切無く、登場人物の行動や表情から気持ちやセリフを想像して楽しむ事ができる作品です。それこそ、言葉はないのに「好き」が伝わる物語で溢れていました。だからこそ、この作品に添える歌の中にも「好き」と言う言葉は登場させずとも「好き」を表現できたら、という想いで歌詞を書きました。言葉にすれば簡単に伝わるかもしれないけれど、言葉にできないような、言葉にはせず胸に大切にしまっておきたい気持ちが、聴いてくださる方々に届けば嬉しいです。

KKBOX:普段の音楽制作とはどんなころが違いましたか?

鈴木:漫画を読みながら作詞をしていたのですが、最初は漫画を読むたびにきゅんきゅんして作詞どころではありませんでした(笑)作品を基に曲を作るという事は初めてだったので、どのように漫画と音楽をリンクさせようかと悩む事が多かったです。普段は自分の感情や、自分の頭の中で描いた物語を歌にする事が多いのですが、今回は登場人物の感情を想像して汲み取って歌詞にしていたので、いつもより新鮮な気持ちで制作ができたと思います。

KKBOX:これからの目標を教えてください。

鈴木:歌を書き続けたいです。たくさんの音楽が溢れる世の中で、自分の気持ちを代弁してくれる歌はあると思いますが、私の言葉で、私だけの歌を作り続けたいと思っています。


愛内あいる(漫画)×ayaka.(音楽)

出典元:YouTube(ヨムオト official YouTube channel)

KKBOX:「自分の顔が嫌すぎて整形に行った話」はどんなお話ですか?

愛内:「整形して人生変えたい。自分を好きになりたい」

幼少期から10年以上、ブサイクな顔に苦しんできた日々。そんな人生を変えるために選んだのが「整形」でした。生きづらい人生の葛藤と解放を描いたノンフィクションマンガです。描いた当初はまさかミュージックビデオコラボが実現する未来を想像していなかったので私自身もびっくりなんですが、音楽を通して新しくこの作品を知って下さるかたが増えたらいいなって願っています。

KKBOX:コラボレーション曲の「かわいい」の感想をお願いします。

愛内:初めてお話しいただいて候補の皆さんの仮歌をいただいた時、皆さんそれぞれ本当に素敵だったのですが直感で「あ、ayaka.さんだな」って思いました。1番の理由としては歌詞が傷ついたり悩んだりする人の目線に立って難しい言葉はなく等身大の叫びだったので、とてもわかりやすく心にビビビときたからです。

最初の感想は歌声がめちゃくちゃポップで可愛らしいので「自分の顔が嫌過ぎて、整形に行った話」とコラボとした時に作品自体がちょっと影もあるようなものなので「可愛すぎてしまって大丈夫だろうか!?」って正直思ったのですが、出来上がっていく過程の中でayaka.さんを中心に作品に寄り添ってくださりまたMV制作してくださる方、音を入れて下さる方と色んな方がチームになって作品の世界を彩っていくのをみて私のワガママにも親身にご対応くださったり…些細な不安は消え去りました。音楽を聴いて暗くはなりすぎずでも前を向いていきたいと葛藤する様をくんでくださって本当に感謝しています。


ayaka.

KKBOX:ayaka.さんはどのような想いで音楽を作りましたか?

ayaka.:物語の主人公と自分自身を重ねて作りました。作品の中で、他人に比べられたり自分が他人と比べてしまったり、"可愛くなきゃいけない""こうでなきゃいけない"というプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、"整形"という自分を変える新しい道を選び、葛藤しながら必死に生きていこうとする主人公の気持ちを一番大切にしました。

KKBOX:普段の音楽制作とはどんなころが違いましたか?

ayaka.:普段の音楽制作では、自分や友達が体験したことや自分の考えたストーリーで曲を作る事が多かったので、漫画を読んで曲を制作するという、初めての試みにとてもワクワクしました。例えば、"整形"を"着せ替え"と表現して、あれこれ言う人に交換する?なんて聞いてみたり。物語の伝えたい事を自分なりに汲み取って、自分の言葉でどう伝えたらいいかな…と考えたりするのが新鮮でとても面白かったです。

KKBOX:これからの目標を教えてください。

ayaka.:自分の曲をもっと沢山の人に聴いてもらってバズらせる事と、でっかいライブハウスで初ワンマンライブをする事が目標です。コロナ禍でライブ活動が自粛になってしまったのを逆手にとって、SNSを使って自分をもっと知ってもらう期間にしてきました。コロナ前と今を比較すると、リスナー層が変わり、同世代にも少しずつですが広がってきています。久しぶりのライブが初のワンマンライブだなんてカッケェって思わせたいです!



山本雅美
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